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第一章 魔眼転生

12. サバイバル幼女

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 俺は、クロメにレクチャーを受けて、自分が思ってる事を、クロメに筒抜けにならない技術を身に付ける事に成功した。

 まあ、別に、クロメに俺の考えを全て知られても良いんだけど……しかし、俺も男なのだ。たまにはエロい事も考えちゃうかもしれないし、そうすると、クロメに悪影響を及ぼしちゃうかもしれないからね。

 これでこの件は、完璧と思ってたんだけど、俺の心が完全に読まれない訳ではないらしい。
 興奮し過ぎたり、動揺したりして心が乱れてしまうと、完全にはシャットアウト出来ずに、俺の心の声が、クロメに漏れてしまうとの事。

 興奮し過ぎた時って、エロい事考えてる時じゃん!て、思ったけど、まあ、それはどうしようもないので諦める事にした。

 なら、クロメはどうかと言うと、子供の頃から、暗殺技術として、敵に心を読まれない練習をしてたとかなんとか話していて、自分の思ってる事を隠すのが上手いらしい。

 まあ、子供の頃から、自分の心を押し殺して生きてきたようだから、心を人に見せない技術は、お手の物なのかもしれない。

 俺も、過去のクロメの記憶を見た限りでは、とても大人しい子に見えたしね。

 とか、妄想しながら歩いてると、

「前方、300メートル先に、ホーンラビットが1匹居ます」

 クロメが、俺の千里眼機能を使って、敵を発見する。というか、流石はシンクロ率100%。俺を完全に使いこなしている。

『もうすぐ昼だから、お腹が減ってきたな』

 俺が腹が減るのも、クロメとシンクロ率100%だから。
 クロメが感じる食欲や匂いなども、クロメと同じように感じる事が出来るのである。

「ジュルル……そしたら、あのホーンラビットを殺して、卍様の供物に致します」

 供物って、俺、どういう立ち位置?

 まあ、それは置いといて、クロメは走りだす。
 どういう訳か、足音がしない。
 これが、黒耳族に伝わる暗殺技術なのだろう。唯一の武器の果物ナイフも逆手に持ってるし、どう考えても忍者の持ち方である。

 というか、クロメ滅茶苦茶速いんだけど。
 俺も、なんか光ってるようだし。多分、クロメは、俺の魔力を使って、自分に肉体強化の魔法を施したように思われる。

 クロメは、そのまま全く気付かれずに、ホーンラビットの背後に回り込み、スパン!と、果物ナイフで、ホーンラビットの喉を斬り裂いた。

 そして、慣れた手つきで、そのまま血抜き。
 ホーンラビットを、逆さまに木に吊るし、時短魔法。

 時短魔法って、何ぞや?と思うかもしれないが、物体の時間を早送りする魔法。クロメが、卍眼の異世界検索機能で調べて編み出した、新魔法らしい。主に、異世界アニメを見てね。

 そして、流れるように、ホーンラビットを木に吊るしたまま、綺麗に皮を剥いでいく。
 ついでに、皮を鞣すのも忘れない。
 肉も、時短魔法で熟成させて、一番美味しくなったところで、肉を切り分けて、棒に突き刺し、焼いていく。

 棒を何処から出したのかって?そんなの木の枝を折って、ナイフで成形してた。
 火は、火打ち石で。クロメの火炎系の魔法は、威力が強過ぎて肉が消し炭になってしまうとか。

 クロメは、イカレジジイの家から何も持って来て無かったと思ってたのだが、自分が必要な最低限の物。果物ナイフと火打ち石だけは持って来ていたのである。

 逆に言えば、それだけ持っていればやって行けるという自信があったのだ。
 伊達に、子供の頃から森で、一人っきりで自給自足してなかったのである。

「卍様、肉が焼きあがりました。どうかお納め下さいませ!」

『おお。ありがとうな!』

「ささ。どうぞ!」

『いやいやいや。クロメが食べないと、俺も食べれないだろ!お前と俺は、一心同体なんだから!』

「アッ! 確かに!」

 この子、アホなのか天才なのかよく分からない。今迄も普通にご飯食べてたのに、俺が初めて、お腹減ったと言ったから、俺にお供えしようとしたのは分かったけど、俺はクロメの体を通してしか物の味を感じられないのにな。

「アフ。アフ」

 クロメは、美味しそうに串肉を食べている。

「卍様、クロメが焼いたお肉は美味しいですか?」

 クロメは、よっぽど肉が美味しいのか、幸せそうな顔をして聞いてくる。

『ああ。美味いぞ。だけど塩が欲しいな』

「塩とは、噂の調味料の事ですか?」

『お前、もしかして塩を舐めた事ないのか?』

「物心ついた頃から、ずっと、森で自給自足だったので……」

『それじゃあ、これから美味しい物、たくさん食べなきゃな!』

「ハイ! 食べてみたいです!!」

 食いしん坊のクロメは、ジュルリと、ヨダレを垂らした。

 ーーー

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