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第三章 王都へgo!

48. ニナナカ冒険者ギルド

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「クワッハッハッハッハッ! 矮小な人間共よ! 私は、至高なる我が主、卍様の下僕クロメ! 今は亡き黒耳族の最後の生き残り!
 地獄の帝王であり、異世界の大魔王であらせられる卍様の第一の使徒!
 さあ、偉大なる卍様の御前である! 矮小な人間共よ、地べたにひれ伏すがよい!グワッハッハッハッハッ!」

 クロメは、バーカウンターの机の上に飛び乗ると、眼帯を取り、左手でピースサインをして左瞼を押し広げる、俺をアピールしまくる決めポーズで盛大に挨拶した。

 というか、みんな引いてるからね。
 俺はクロメに挨拶しろと言ったんだけど、なんか俺の方が、めちゃくちゃ目立っちゃってるんだけど。
 クロメよ……俺、物凄く恥ずかしいよ。
 俺自身も恥ずかしいけど。クロメをこんな痛い子に育ててしまった事に懺悔の気持ちも溢れてくる。

 どこで教育方針を間違えたのであろう。
 全ては、俺とクロメのシンクロ率100パーセントなのが悪いのだ。
 俺にアクセスしなくても、クロメは直接、地球のインターネットを無制限に見れちゃうんだもん。
 ギガ無制限って、日本の学生とか発狂してしまうレベルで羨ましがると思うし。フリーWiFi探すのって、とても大変だもんね。

 でもって、クロメはギガ無制限により、ネットで異世界アニメを見まくって、中二の造詣を極めまくってしまっているのだ。

 こんなの、手足の無い俺にはどうする事も出来ないよ。
 スマホを取り上げる事も出来ないんだぜ。俺がクロメのスマホみたいなもんだから、クロメに捨てられちゃうと、俺も宿主が居なくなって困っちゃうのだけど。

 まあだが、クロメの挨拶は、思いのほか成功したようである。

「黒耳族の生き残りかよ……1人で、本当に辛かったんだな……」

 どうやら、数ヶ月前に、黒耳族の村が魔族に襲われ全滅したというニュースは、この街にも伝わってたようである。
 因みに、グラードバッハ冒険者ギルド長の九尾が、最初ギルドに居なかったのは、王都の冒険者ギルドで黒耳族の村が魔族に襲われた事の対策会議があったかららしい。

 まあ、魔族の活動が活発になれば、冒険者ギルドでも対策しないといけなくなるもんね。
 実際、新たな魔王軍が復活してるみたいだから、対策するのは間違いない事だったと言えるし。
 間違いなく、クロメの村を襲った魔族は、魔王軍と関係ありそうだと感じるし。

 それから、関係ない事だけど、冒険者達が俺の事を、黒耳族が持つ未来視眼だと勘違いしてるのはご愛嬌。

 基本、黒耳族って伝説の暗殺家業の一族で、表の世界には出て来ないから誰も未来視眼の事、よく知らないんだよね。

 兎に角、クロメの中二挨拶は受け入れられ、ニナナカの冒険者達ともお喋りできるようになったのだった。

『オイ。クロメよ。冒険者の務めとして、冒険者ギルドに新たな魔王が生まれて、魔王軍が組織されたという事を伝えた方が良いな。まあ、その時、大魔法使いマジルカの事は伏せおけ。マリアも一緒に行動してると思うからな』

 俺は、魔王軍の事を思い出し、クロメに指示を出す。冒険者は、日本のサラリーマンと同じく報連相が大事なのだ。俺は、クロメの親役として、しっかりとクロメに社会の常識を教えないとダメなのである。

「マリアちゃん……」

 やはり、クロメはマリアの事が心配であるようだ。だがしかし、クロメは魔王軍と一緒に行動する事は出来ない。もしかしたら、魔王軍は、クロメの村の襲撃に関わってるかもしれないから。
 例え、クロメが黒耳族の村で要らない子と扱われたとしても、故郷は故郷で家族は家族なのである。
 同じく、この王国と、ビッチシリカと、アレクサンダー王をぶち殺すという志があったとしても、魔王軍は絶対に相容れない団体なのである。

 しかも、大魔法使いマジルカは、新魔王軍を立ち上げた張本人。まだ、確定は出来ないが、クロメにとって仇である可能性が99パーセント確定なのだ。

「頼もう!」

 クロメは、俺に指示されて冒険者カウンターに行く。
 それにしても、また、空手家の道場破りみたいに、「頼もう?」今度は、なんのアニメに影響されちゃったんだ?
 もう、設定がめちゃくちゃだよ。

 まあ、魔法使いとくノ一が混ざってる時点で、めちゃくちゃなんだけど。

「はい。何でしょう?クロメさん」

 先程、大々的に自己紹介したので、受け付けのお姉さんは、クロメの名前を覚えてくれていたようである。
 なんか、クロメも名前を覚えられて嬉しそうだし。クロメは、ずっと黒耳族の村で居ない子として育ってきたので、承認欲求が物凄いのである。闇に潜む黒耳族の筈なのに……

「矮小な人間共に、報告がある。新たな魔王が誕生し、魔王軍が組織されたのを確認した。貴様らは羽虫のように脆弱なので、我が主、偉大なる卍様が気をつけるようにと言っておられる」

 クロメが、中二全開で、受け付けのお姉さんに上から目線で言い放つ。

「それは本当ですか……黒耳族最後の生き残りのクロメさんが言うなら、信憑性がありますね。黒耳族の村を襲ったのは、ただの魔族の集団じゃなくて、魔王軍だったのをクロメ様自身が目撃したのですね!」

 なんか、受け付けのお姉さんが勝手に勘違いしてしまったようだ。
 確かに、クロメが魔王軍を確認したと言えば、黒耳族の村が襲われた時、クロメが魔王軍を直接見たと勘違いしてもしょうがない。所謂、生き証人だしね。

 まあ、実際は、村が魔族に襲われた時、クロメは、森に薬草探しというか、食べれる葉っぱを探しに行ってて、魔族を直接目撃してないんだけどね。

「フフフ……」

 だけれども、クロメは笑って誤魔化した。
 食べれる葉っぱを探してて、魔族襲撃に遭遇しなかったというのが、中二設定的に物凄く格好悪いと思ったのだろう。

 黒耳族最後の生き残りが、村が襲われてる時、食べれる葉っぱ探ししてたって、とてもじゃないけど言えないもんね。
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