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第三章 王都へgo!

59. アヤメ

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 その時は、突然、起こってしまったのだ。

 俺とクロメは、王都へと続く街道を歩いていた。

 すると、クロメの心臓の鼓動が、有り得ない程、速くドクドクと脈打ち始める。

 クロメとのシンクロ率100パーセントの俺は、すぐにクロメの異変に気付き声を掛ける。

『クロメよ。どうした?』

「……」

 クロメは、ワナワナして答えられない。

 なんか、前の方から、少しだけクロメと同じような魔力が感じる気がする。俺の魔力が混じった魔力じゃなくて、純粋なクロメだけの魔力ね。

 そして、その魔力の主が、ドンドン、俺達に向かって歩いてくるのだ。

 目を凝らしで見ると、なんだかクロメと同じようなシルエット。

 俺は、千里眼に切り替える。

 すると、

『えっ……クロメか?』

 俺は驚愕する。魔法使いの三角帽子は被ってないが、服装はクロメと同じくノ一の衣装。
 そして、目が、イカレジジイの家で見た事がある未来視眼。しかも、両目とも。

「違う……アレは、私の双子の妹のアヤメ……どうやら、死んでなかったみたいです。そして、隣にいるのは兄のハヤトです……」

 俺は、クロメに、どうやって話し掛ければ良いか分からなくなる。
 死んだと思ってた筈の兄と妹が生きてたというのに、感動してるようには見えないし。

『家族が死んでなくて良かったな』とか、言葉をかけて良いものなのか……クロメは家族に阻害されて生きてきたのである。
 特に、アヤメとはトラウマレベルの確執があるのだ。

 いつも、夜に、妹のアヤメの夢を見てうなされてるし。「私の物を奪わないでーー!」て、

 クロメが、強く握りしめた拳に、手汗が大量に溢れだしてるし。
 クロメは、初めて出会った時以来の極限の緊張状態に陥ってしまっているのだ。

 多分、今のクロメなら、中二極大魔法で簡単にアヤメに勝てると思うのだが、それでも長年染み付いてしまってる苦手意識は、簡単には消しされないのだ。

 そして、立ち止まる俺達の元に、アヤメと、それからクロメの兄だというハヤトが近付いてくる。

 そして、アヤメとハヤトは、俺達の前まで来る。

「なんか、少しだけ見覚えがある魔力を感じたと思ったら、クロメお姉ちゃん。死んだと思ってたのだけど生きてたのね!」

 クロメの双子の妹だというアヤメは、二ヘラ笑いしながらクロメに話し掛ける。

「まさか、あの魔族の襲撃を半人前のクロメが生き残るとはな」

 クロメの兄だというハヤトも、他人事のように言う。
 普通なら、死んだと思ってた筈の家族の再会なので、喜ぶ所だと思うのだが、このクロメの兄と妹は、クロメが生き残ってた事について、何も感情がないようである。

「お兄様とアヤメが生きてて良かった……」

 クロメは、顔を強ばらせながらも、兄と妹の無事を喜ぶ。
 やはり、嫌いな兄と妹であったとしても、血の繋がりがある二人が生きていて嬉しかったのだろう。

 だけれども、

「私は、魔族の襲撃を未来視眼によってすぐに気付いたからね。それでハヤト兄様に声を掛けて、すぐに魔族に寝返ったのよ」

「えっ?」

 なんか、アヤメがおかしな事を言っている。

「本当に面白かったわ。まさかお父さんもお母さんも、実の娘に殺されるとは思わなかったのかもね!
 本当に、あの二人、私より弱い癖して偉そうだったのよ」

 何を言ってるんだ……この女……
 まさか、クロメの父親と母親を殺したのは、魔族じゃなくて、クロメの妹のアヤメだったって事なのか?

「本当にあの村の人達って、弱っちいのに、私の事を子供だからって、偉そうに指図してくるのよね。だから、私が、村のみんなに気付かれないように、魔族を秘密裏に村に手引きして、村を焼いて貰ったのよ。
 マジルカ様は、そこまでしなくていいと言ったのだけど、黒耳族は、この国の暗部を担う闇の一族。皆殺しにしとかないと後々、後悔する事になると進言してね!」

 まさか、全ての元凶は、クロメの双子の妹のアヤメだったって事なのか?どんだけ、邪悪な子なのだ……
 そして、やはり、黒耳族の村を襲ったのは、マジルカが率いてた魔族軍で間違いなかったようである。

 こんな話を聞かされて、クロメはどうする?俺は、クロメの様子を見る。俺は、クロメの気持ちに沿って動くと決めているのだ。

 なんか、クロメは、驚愕過ぎる新事実を聞かされて、頭の中がまだ整理されないのか、ずっとワナワナしてる状態だし。

「だけど、まさか、クロメお姉ちゃんが生き残ってるとはね!
 まあ、クロメお姉ちゃんって、黒耳族として数えられない半人前だから、殺す必要さえなかったのどけど。フフフフフフ」

 なんか、クロメは少し頭の整理が付いてきたのか、プルプルと打ち震え始めてる。
 やはり、実の妹が、実の父親と母親を殺した事に憤りを感じてるのか?

「訂正しろ! 私は黒耳族最強の最高傑作!決して、半人前じゃない!」

 どうやら、クロメは、アヤメが父親と母親を殺した事より、黒耳族として数えられない半人前と言われた事に、憤っているようである。

「魔力が高い族長の娘なのに、未来視眼を得られなかったクロメお姉ちゃんが、黒耳族最強の最高傑作……ぷっ……もしかして、その眼帯って、未来視眼を隠してるつもりの眼帯?
 ハヤト兄様、ついにクロメお姉ちゃんが、拗らせ過ぎて、頭がおかしくなっちゃったよ」

「前々から少しおかしな奴だと思ってたけど、ついに妄想と現実が分からなくなってしまったのだな」

 アヤメとハヤトが、クロメをバカにする。
 まあ、普通なら、そう思っちゃうよね。

「ククククク……劣等眼である未来視眼?
 笑わせる。私が得たのは、史上最強最悪の卍眼。人族では到底到達する事などできない、大魔王や神の領域まで私を高めてくれる、偉大なる卍様の力を得られたのだ!クックックックッ、カッカッカッカッカッカッ!!」

 クロメは、高笑いしながら言い放った。
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