69 / 97
69. ヨネン·ドラクエル
しおりを挟む「アンタ達、ちょっと待ってておくれ。
私が今から、モフウフの叔父さんの所に行って話を付けてくるからね」
エーバル城塞都市は、漆黒の森から北に歩いて1時間程の距離にある城塞都市だ。
しかし漆黒の森は、南の大陸の5分の1を占める大国家ある。
なので、いくら漆黒の森から1時間の距離だといっても、中央にある王都のモフウフからエーバル城塞都市まで最低でも5日は掛かかってしまうのだ。
そんな5日もかかる王都モフウフに行くのに、チョットというのは、いくらセンコーさんでも無理な話だ。
と、考えている合間に、センコーさんは地面の影に吸い込まれるように消えてしまった。
「き……消えた!」
「何言ってるのよ! エー君も悪魔たがら【影渡り】スキルぐらい持ってるでしょ!」と、アナ先生が指摘する。
そういえば、【影渡り】スキルを持っていた。
俺は、いつもビー子と一緒に行動していたので、全く使う事がなかったが、確か悪魔同士の移動に使えるスキルだった筈だ。
「そうでした。でもなんで、悪魔でもないセンコーさんが【影渡り】スキルを使えるんですか?」
俺は、疑問に思い質問する。
「それはセンコーさんが、ゴトウ族だからよ!
前に説明したと思うけど、センコーさんの本名は、センコー·G·サンアリよ!
ミドルネームにGが付いているのは、昔いた大魔王ゴトウ·サイトの眷族なのよ!」
「アッ! 思い出しました。
ゴトウ族は みんなチートだって、バルトさんが言ってましたね!」
俺は、前にバルトさんに聞いた事を思い出す。
「そうよ。ゴトウ族は、生まれ落ちた時から色々なスキルを持って生まれてくるわ!
そして【影渡り】スキルは、ゴトウ族なら誰でも持ってる基本スキルの中の一つね!」
生まれた時からスキルを沢山持ってるなんて、なんて羨ましい種族なのだ。
俺もたくさんスキルが欲しい。
兎に角この世界には、ゴトウ族のような俺よりチートな奴らが沢山いる事は分かった。
ゴトウ族のセンコーさんは、俺から見てもかなりチートに見える。
そんな会話をしながら、俺達はセンコーさんが帰ってくるのを待っていると、センコーさんが突然、俺の影の中から現れた。
「すまないね。勝手にエーサク君の影を使わしてもらって!」
「何で、僕の影から【影渡り】できるんですか!」
俺はセンコーさんに詰め寄って、問い詰める。
「実は、エーサク君に最初に会った時に、軽く【調教】を仕掛けておいたのさね!
【影渡り】スキルは、【影渡り】スキルを持ってる者同士に絆が生まれると、お互いの影を行き来きできるようになるスキルだからね!」
「そ……そうですか……」
やはり、センコーさんは侮れない。
多分【調教】を仕掛けられたのは、初めて会った時に、センコーさんに杖で殴らた時だろう。
確かにあの時、センコーさんには敵わないと思ってしまった。
俺は、それを利用されたのだ。
【調教】スキルは、屈服すると掛かってしまうスキルである。
まあ、孫のように可愛がっているアナ先生が、俺のような得体の知れない悪魔と一緒にいるのだ。
何か有った時の為、保険をかけていたのであろう。
というか、俺の今の状況は、センコーさんに生殺与奪権を握られている状況に等しい……
こんな事を簡単にしてしまうなんて……
ヤバイ、ヤバすぎるぞゴトウ族。
「ちょっと、スペースを空けてくれるかい!」
俺がセンコーさんの恐ろしさに、勝手にビビっていると、センコーさんは俺を手で押し退けて、床に魔方陣が描かれたスクロールを置いた。
そして、何やらスマホのような物を取り出して、「準備できたよ!」と、言うと、魔方陣が青白く光り輝いたと思ったら、その中から20歳ぐらいに見える、童顔の青年が現れた。
「初めまして、私はドワーフ王国の南の大陸の代表を努めますヨネン·ドラクエルです!」
童顔の青年は、アナ先生に頭を下げ、手を差し伸べる。
アナ先生も頭を下げ、「私はアナ·アナシアと申します。
この度は私共の申し出を受けいれてもらい誠にありがとうございます!」と、言って、ガッチリとヨネン·ドラクエルと握手した。
アナ先生は まだ、鋼鉄の腕の力加減が分かっていないのに、あんなに固く握手してしまって大丈夫なのかと、俺はヨネンの心配をするが、ヨネンは涼しい顔をしている。
どうやら、このヨネン·ドラクエルという童顔の青年も只者ではない。
というか、ドラクエル?
先程、アナ先生の話に出ていたドワーフ王国の王の名前と同じではないのか?
もしかして、息子が何かか?
「貴方は、もしや神聖フレシア王国のアナシア家と御関係がある方なのではないですか?」
俺の心の中の疑問をスルーして、先に ヨネン·ドラクエルがアナ先生に質問する。
「エッ! 何故それを」
アナ先生が、とても驚いた顔をしている。
「貴方の持ってる剣は、何百年も前に、私達ドワーフ王国のお店に、神聖フレシア王国がオーダーして作った剣でございます。
10年程前に、私共のお店に前フレシア王国の騎士団長アナル·アナシア様がお越しになった時に、その剣をお持ちになっていたのを、お見かけしておりましたので、まさかと思って尋ねてみました。」
アナルって……
俺は笑いを噛み締める。
「オイオイ! アナの父ちゃんって、雷剣アナル·アナシアかよ!
俺達世代では、超有名人だぞ!」
バルトが、ビックリ驚いている。
俺は前に聞いた事があったので、驚かなかったが、そんな事より、名前が『アナル』って言う方に衝撃を受けた。
「ア……アナルさんって、そんなに有名人だったんですか?」
自分の口から、『アナル』と言ってみたが、やはり口に出してみると恥ずかしい。
俺がアナルさんの立場なら、名付けた親を恨んでいただろう。
「お前、アナル·アナシアをバカにしてるだろ!
名前は確かにアレだが、剣の実力は本物だ。
何せ、剣王にまでなっているんだからな!」
バルトさんは俺に注意しながらも、質問に答えてくれた。
「剣王ってなんですか?」
「剣王は剣王だよ! 冒険者の中での称号だな!
剣神、剣聖、剣帝、剣王ってのがあって、剣神が1人、剣聖が2人、剣帝が3人、剣王が4人いて、アナの父ちゃんは最低でも冒険者の中で10指の剣の腕だったて事だ!」
「アナ先生のお父さんって凄い方だったんですね!」
「ああ、凄い。間違いなく凄い男だった……」
バルトさんは、何故か遠くをみながら答える。
知り合いだったのか?
しかし、名前がアナルってしまらないな。
というか、ケツの穴なので締まるのか?
ケツのアナ?
もしかして、アナ先生のアナという名前は、ケツの穴から取ったのか?
「バルトさん、エー君! お父さんの話は置いといて下さい!
私達の話が進みません!」
俺が変な妄想をしながらバルトさんと話をしていると、アナ先生が話を遮ってきた。
「す……すまない」
バルトさんは、少し反省しているのか頭を下げる。
「あの、それよりヨネンさんって、あのヨネンさんですよね?」
気を取り直して、アナ先生がヨネンさんに質問する。
「僕は僕ですけど?」
アナ先生の当たり前の質問に、ヨネンさんは普通に答える。
「センコーさん! なんて大物連れてくるんですか!
ドワーフ王国一の芸術家にして建築家、それから魔道具職人のヨネン·ドラクエルさんに頼んだら、予算がいくらあっても足りませんよ!」
どうやら、このヨネン·ドラクエルという童顔のドワーフ族の青年は、かなりの大物のようであった。
2
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる