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70. 凄いでしょ!
しおりを挟む「すみません! 僕が無理矢理連れて来てもらったんです!」
ヨネン·ドラクエルが、センコーさんを庇う。
「どういう事ですか?」
アナ先生が質問する。
「ええと、漆黒の森の宰相、ナンコー·サンアリ様に連絡をもらって、センコーさんに会ったのですが、その依頼内容が、世界樹のダンジョンの城の建設と聞いて、居ても立っても居られなく、私自ら参上した事態でございます」
「あの……建築じゃなくて、正門と王の間の扉と、渡り廊下の装飾の依頼だけですよ……」
アナ先生が、申し訳無さげに答える。
「勿論、承知しております!
ですが、一度、世界樹が生み出したダンジョンの空間を見てみたいのです!」
ヨネンは、目をキラキラさせながら答える。
これは断るのは無理だな……
この手の人間は、興味のある事に猛突する。
いくらダメと言っても、勝手についてきてしまうだろう。
「すまないね、アナ……
ヨネンさんが、どうしても自ら見てみたいと聞かなくて……」
センコーさんも、申し訳無さげにアナ先生に謝る。
「当たり前です! 世界樹なんてここ何百年の間、発見されてもいなかったんですよ!
それがダンジョンの中に。しかも、森まで形成していたなんて!
そんな空間に城を建築しているなんて聞いたら、どんな職人でも建設に関わりたいと思うに決まってるじゃないですか!」
ヨネンさんは話に熱を帯びて、声が大きくなっている。
あまり、世界樹を見つけたと世間にバレたくなかったのだが、もはや無駄のようだ。
少なくとも、エーバルの冒険者達には知れ渡ってしまている。
まあ元々バレてはいたが、ここまで大ピラになってしまっては、隠す気もなくなってしまう。
「分かりました。取り敢えず施行場所に案内致します。しかし、予算は決まってますのでそれに収まる職人さんを手配して下さいね」
アナ先生が、一応、ダンジョンに連れていく事にOKをだした。
まあ、見てもらわなければ先に進めないので仕方が無いのだが。
「ありがとうございます!」
ヨネンさんは、嬉しかったのか泣きながらアナ先生の手を両手で握りしめた。
「分かりましたから離して下さい!」
アナ先生が振り払おうとするが、ヨネンさんはガッチリ、アナ先生の鋼鉄の手を握り締めて離さない。
というか、やはりヨネンさんは只者ではない。
アナ先生の鋼鉄の手は、人の頭を軽く握り潰してしまう程の握力なのだ。
それを平然と握っているなんて。
「ヨネンさん、それくらいで離してやって下さいな。アナが困ってしまっていますので」
センコーさんが、中を割って二人を引き離した。
「すみません……つい嬉しくて我を忘れていました」
ヨネンさんは、しまった! という顔をしながら、パッと、手を離した。
「バルトさん、ヨネンさんて一体何者なんですか?
ただの芸術家や建築家とは思えない握力を持ってそうですけど……」
俺は小声でバルトさんに質問する。
「そりゃ、元勇者パーティーで、元『犬の肉球』副団長、しかも最強の一角のドワーフ王国の王ドラクエルの息子で、尚且つ、姉貴は、現最強ギルド『犬の尻尾』の副団長アン·ゴトウ·ドラクエルだからな。
弱い訳がないぞ!
まあ、ヨネン本人は、戦いには全く興味を持ってないみたいだけどな!」
「あのセンコーさんでもBチームにしか入れなかった『犬の尻尾』の副団長ですか。
それにしても、この世界のギルドは犬が付かないといけない決まりでもあるんですか?
ちょっと、分かりにくいです!」
「まあ、確かにな……
兎に角、冒険者的にはどちらも危ないギルドだから、犬がつくギルドには近づいてはダメだと言われている」
そんなやりとりの後、俺達とヨネンさん、それとセンコーさんとバルトさんが、俺達のダンジョンと城と世界樹を見てみたいと着いてきた。
まあ、センコーさんとバルトさんは、アナ先生が心配なのだろう。
そんなこんなで、エーバル城塞都市から暫く歩くと、ダンジョン入口が見えてきた。
まあ、しっかり枯葉で隠してあるので、俺達以外には分からないと思うが。
「おやまあ、こんな近くにダンジョンが会ったのかい!」
センコーさんは、俺達のダンジョンとエーバル城塞都市の近さに驚いている。
俺達は入口を隠していた、葉っぱを取り払い、センコーさん達をダンジョンに導き入れる。
「エー君、お願い!」
アナ先生が、俺に指示をする。
俺はアナ先生の言葉を、瞬時に汲み取る。
「皆様、冒険者ブレスレットをお渡し下さい!」
俺は、ヨネンさんとセンコーさんとバルトさんの冒険者ブレスレットを受け取り、階段フロアーを使って最下層に行き、ログをブレスレットに記憶させ戻ってきた。
「お返しします」
ヨネンさん達は、冒険者ブレスレットを受け取り装着し直す。
ヨネンさん達が冒険者ブレスレットを装着し直したのを確認したアナ先生が、「それでは行きましょうか!」と、先頭に立ち、階段フロアーの階段を下りるように促す。
俺達は、1階層階段フロアーから転移して、一気に、最下層階段フロアーに到着した。
「この扉の向こうに、世界樹の森が広がっているんですか!」
ヨネンさんは、早く階段フロアーの扉を開けたくて、ウズウスしているようだ。
「それでは、ご期待に答え開けましょうか?
さあ、開けますよ!」
俺は勿体ぶりながも、勢いよく扉を開ける。
扉を開けると、目の前に広大な森が広がり、中央に世界樹とその隣に俺達の建築中の城が見えた。
「……こ……これは、思った以上に凄いですね!」
ヨネンさんは、とても驚愕しているようだ。
何故か、ヨダレを垂らしていて、気持ちが悪い。
「本当に、ダンジョンの中に森があるんだな……」
バルトさんは、ダンジョン内の森を見た事がなかったらしく、普通に驚いている。
「これは、第666ダンジョンより凄いわね……
やはり、世界樹の森ってことだけはあるわね!」
センコーさんは、確か、50年前に起こった異界の悪魔ベルゼブブ討伐レイドに、『漆黒の森』出身者で構成された『犬の尻尾Bチーム』で、森があるダンジョンを経験済だ。
その森があった、異界の悪魔ベルゼブブが支配していた第666ダンジョンより、このアドが作りだした世界樹の森は凄いみたいだ。
『フフフフフフフ』
俺は配下のアドが褒められて、心の中で鼻高々である。
横を見るとアナ先生も、世界樹の森を褒められて嬉しかったのか、エッヘンと、胸を張っていた。
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