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72. 成約

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「『鉄血の乙女』さんの実力なら、1兆3000万マーブルぐらい何とかなりますよ!」

「絶対に無理です!」

 ヨネンはグイグイ押してくる。

「さっき、打ち合わせ中に出された世界樹から生み出されたっていうフルーツなんて、『漆黒の森』の王都で売り出せば高く売れると思いますよ!
 良かったら、僕が販路を紹介しても良いですよ!」

「最初の打ち合わせ通り、正門と王の間の扉と、渡り廊下の装飾だけで十分です!
 それだけの見積もりを出してください!」

「いやいやいや、世界樹の森のお城の建築なんて、なかなかやれるものじゃないので、責任を持ってドワーフ王国が城のエクステリアも併せて建築致しますよ!
 というか、ドワーフ王国が絶対に建築しますので!」

「だから、お願いしたいのは山々なんですけど、お金がありませんって!」

 ヨネンさんと話が噛み合わない。
 どうやら、城の全ての建築がやりたいようだ。

「仕方が無いです。端数を切って1兆マーブルでお受けします」

 ヨネンさんが、値下げを申しでる。
 しかし値下げと言っても、そもそも1兆マーブルなんて金額、現実味が無さすぎて、俺には何が何だかわからない。

「1兆マーブルでも、払えません!」

「エーサクさんのセラミックスタイルを毎月、ドワーフ大国で買取させてもらいますので、その代金を足しにして下さい!」

「だから、無理ですって!
 アナ先生からも、言ってやって下さい!」

 俺はアナ先生に、助けを求める。
 俺だけでは、百戦錬磨のヨネンさんにお断りできない。
 このままでは、地獄の1000年ローンを組まされてしまう。

「私は、有名なドワーフの職人に正門と王の間の扉と渡り廊下の装飾だけでもやってもらおうと思っていたのだけど、さすがに一兆マーブルは払えないから、諦めるしかないわね」

 あまりに現実味がない金額に、流石のアナ先生も熱が冷めてしまっているようだ。
 完全にお断りモードである。

「そうですよ! 僕の『錬金』で、時間をかけて良いもの作っていきますから!」

「そうね! エー君の『錬金』は凄いものね!」

 あれ程、ドワーフの職人にこだわっていたアナ先生は、俺の『錬金』での建築に方向転換したみたいだ。
 俺は最初から、自分に任せてもらいたかったのだ。腕がなるぜ!
 俺のナニもビンビンにそり返る。

「待ってください! そしたら5000億マーブルに値下げしますから!」

 ヨネンさんは、よっぽど城の建設がやりたいのか、簡単に半額に値下げした。

 というか、普通なら半額になって得したと思う所かもしれないが、5000億マーブルも俺達にとって、途方もない金額なので得したとも思わない。

 人間、自分が理解できる金額以外は頭に入らないみたいだ。

「私達は、3000万マーブル以外は払いませんので!
 それ以外なら、もう帰って下さい!」

 アナ先生は、もう話し合いにならないと思ったのか、ヨネンさんを追い出しにかかる。

「アアア! わかりました!
 30億マーブルで手を打ちます!
 これ以上は、一切まけられません!
 普通は、こんな金額でやりませんよ!
 世にも珍しい、ダンジョン内の世界樹のお城だからです!」

 ヨネンさんから、初めて俺でも分かる金額が提示された。
 総額5億円の宝くじの6倍の金額だ。

 隣を見ると、先程まで終了モードだったアナ先生が考えこんでいる。
 どうやら、また心が揺らぎ始めたようだ。

「もう一度だけ言いますが、これ以上は絶対まけません!
 それから安くしたからといって、一切 手は抜きません!
 ドワーフ大国の威信をかけて、最高のお城に仕上げてみせます!」

 アナ先生の口角がニヤリと上がる。

「その言葉は、二言は有りませんか?」

 アナ先生は、ヨネンさんに念を押す。

「当たり前です!
 世界樹の森の城の建設ですよ!
 ドワーフ王国が、やりたく無い筈がありません!
 必ずや、世界に誇る最高のお城を建設してみせます!」

 ヨネンは、拳を握り締めて熱く語る。

「分かりました! ヨネンさん!30億マーブルで私達の城の建築を宜しくお願い致します!」

「承知しました!」

 センコー先生とヨネンさんは、ガッチリと握手を交した。

 俺は、いつものようにヨネンさんの手が心配になるが、やはり全く問題なさそうだ。

「ご主人様ぁ~仕事終わったよぉ~」
「終わったクモ!」

 どうやらビー子とクモが、素材採取を終えて戻ってきたみたいだ。

「それじゃあ、成約祝いのパーティーを始めましょう!
 クモちゃん。食事の準備お願いね!」

 アナ先生が、クモに指示を出す。

「了解クモ! 最高のパーティー料理を作ってみせるクモ!」

 何故か、クモは顔を真っ赤にしてビクビクしている。

 どうやら、初めての大役を任されて、イッテしまったようだ。

 クモは人にお願いされる事が大好きな、ドMなのだった。
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