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78. ウルフデパート

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「さあさあ、こちらの建物が有名なウルフデパートですよ!」

 俺達はヨネンさんに連れられてウルフデパートの前に立っている。

「こ……これはイ〇ンショッピングモールなんじゃないのか……」

 俺には、モフウフ王宮の隣という最高の立地にある建造物が、どうしてもイ〇ンショッピングモールにしか見えない。

「ハッハッハッハ! そう言えば、昔、ゴトウさんもそんな事言ってましたよ!
 ウルフデパートの経営者の主様も、元異世界人だったらしいですからね!」

 ヨネンは、笑いながら答える。

 この『漆黒の森』の王都モフモフには、俺が元いた世界、それも日本の影響を過分に受けているようだ。
 モフウフ王宮だって、完全にカジノ完備のスーパー銭湯だし、何故か従業員の悪魔の女の子は全員日本式のメイド服を着ていたのだ。

 日本のメイド服は、他の国のメイド服とは全く違うのである。
 日本のメイド服は、無駄にフリフリなのだ。
 外国の由緒正しきメイドは、あのように男を惑わしてしまうような破廉恥なメイド服など絶対に着ない。

 それからカジノのメイドなどは、自分のご主人様でもない ただのお客に向かって、「ご主人様、お帰りなさいませ!」とか、言っていた。
 普通は「お客様、いらっしゃいませ!」だろ!
 完全にメイド喫茶の接客だ。
 強いて言うなら、メイド喫茶カジノというのべきか……
 よく分からないが、兎に角『漆黒の森』の王都モフウフは、変な日本文化が浸透している。

「ふ~ん、そうなんだ……
 私はてっきりウルフデパートは、南の大陸の文化を多分に受けてる総合デパートだと思ってたんだけど」

 アナ先生が俺やヨネンさんの話に割ってはいる。

「確かにウルフデパートは、南の大陸発祥のデパートですからね!
 アナさんが、そう思うのも分かる話です!
 実際には、西の大陸より南の大陸の方が、異世界人の文化が昔からたくさん入ってきているだけなんですけどね!
『漆黒の森』のハラダ家とか、1000年以上前に この世界に来た有名な一族とかもいますからね!」

 まあヨネンの話だと、この世界で異世界人はメジャーであるという事だろう。

「まあ、兎に角入りましょうよ!
 先ずは、ウルフデパートに入店しているドワーフ王国直営店を案内しますから!」

「ごはん! ごはん! ごはん! もうお話いいよぉ~!」

 遂に、ビー子の我慢は限界を迎えたようだ。
 地団駄を踏んで、頬っぺを膨らましている。

「早く、ガリクソン師匠のお店に行くクモ!」

 クモも我慢の限界のようである。
 何故か指先から糸を出して、戦闘体制だ。
 多分このままほかって置いたら、ヨネンさんを簀巻きにしてしまうだろう。

 ヨネンの予定では、このままドワーフ王国直営店に入って、お店の説明をしたかったのだろうが、クモの指先でとぐろを巻くようにグルグル回っている蜘蛛糸を見て、冷や汗を流している。

「そうね。お腹が空いたわよね!
 ウルフデパートだったら、西の大陸のフレシア店と南の大陸のムササビ本店に行った事があるから、私でも店の感じは分かっているわよ!
 ヨネンさんのお話に付き合うのは面倒だから、サッサっとお食事所に行きましょう!」

 ヤバい空気を感じ取ったアナ先生が、ビー子とクモの手を取って、トコトコと先頭を歩きだす。

「ちょっと、待って下さいよ~
 お食事処なら、僕が案内しますから!」

 その後を、ヨネンさんが叫びながら追い掛けていく。

 俺は一番うしろを歩きながら、ウルフデパートを見渡す。
 やはり、まんまイ〇ンショッピングモールだ。
 中央は吹き抜けになっており、魔道式のエスカレーターやエレベーターが配置されている。
 どうやら1階は高級店のテナントが入っているらしく、身なりの良い人達が買い物にいそしんでいるようだ。

 成程、これだけ見たら確かにデパートだな。
 イ〇ンショッピングモールの場合は、1階はスーパーとか有るもんな。

 アナ先生達がエスカレーターに乗ったので、俺もその後に続く。

 ウルフデパートの2階は、高級路線の1階と違って凄く活気があるようだ。

「2階は、1階と違ってリーズナブルな人気店が入ってるんですよ!
 勿論、ドワーフ王国のお店もありますよ!
 ドワーフ王国は1階に高級店、2階にはお手頃な価格設定のお店を出しているんです!」

 聞いてもいないのに、ヨネンが俺に近ずいてきて教えてくれた。

 2階に上がると、それこそイ〇ンショッピングモールのまんまである。
 それもSALE中の。
 客引きが、お店の前で声を張り上げていたりする。

「ウルフデパートは、毎年、テンナントの入れ替えがあるんですよ!
 売り上げが下から3番目までは、自動的にウルフデパートから追い出されてしまうんです!
 だから何処のお店も必死なんですよ!」

「そうなんですか」

 俺は聞き流しながら返事をする。

「そうです! どこのお店もウルフデパートにテナントを出すのに必死なんです!
 何せウルフデパートにお店を出す事が、一流店の証なんですから!
 因みに、ウルフデパートの家賃は、テナントの売り上げの10パーセントとなっています!」

「家賃が少ないテナントは、出て行け!
 という事ですか?」

 少しヨネンさんの話に興味を持ったので、質問してみた。

「そう言う事です。分かりやすいシステムでしょ!
 因みに、ドワーフ王国の高級店の方は、毎年支払うウルフデパートへの家賃が一番高いんですよ!」

 ヨネンが、鼻高々に胸を張る。
 そんなヨネンの自慢話を聞きながら歩いていると、どうやらフードコートのような場所に到着した。

『これは、完全に前の世界のフードコートと一緒だ……
 普通に、ハンバーガーショップやラーメン家が入っているし……』

「エーサクさん。フードコートの半分がウルフデパートがプロデュースするフードコートで、奥の方のもう半分が、この世界の有名店が入っているお食事処ですよ!
 ガリクソンさんがプロデュースしてるのは、普通のフードコートの方です!
 何せ、ガリクソンさんはウルフデパートの副社長でもありますから!」

 ヨネンさんが、逐一、俺に情報を入れてくれる。

「私は、ガリクソン師匠プロデュースのラーメンとたこ焼きが食べたいクモ!」

 クモが突然、ラーメンとタコ焼きという、お好み焼きやタコ焼きはゴハンのおかずという、関西人でもやらなそうな組み合わせを頼むと宣言したのであった。
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