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79. 8つの目
しおりを挟む早速、クモがラーメン屋に並んでいる。
人見知りのクモが、珍しく自ら並んで、みんなのラーメンを選ぶと言ってきたのだ。
俺達は、フードコートの空いている席を見つけて、クモの帰りを待っている状況だ。
このフードコートの常連客のヨネンが、水を汲んで持ってきてくれた。
完全に、前の世界のフードコートのシステムと同じだ。
兎に角、最初に席を確保しておかねば、立ち食いしなければならなくなってしまうのだ。
たこ焼き屋には、アナ先生が並んでいる。
クモにどの種類のたこ焼きを頼むのか指示されていたようだ。
久しぶりのラーメンだったので自分で選びたかったのだが、クモの真剣な顔に屈した形だ。
何せ 真っ赤な8つの目で、ジッと見つめくるのだ。
クモの真剣な目はハッキリ言って怖い。
暫くすると、クモとアナ先生が戻ってきた。
手にはお知らせ用のブザーを持っている。
ウルフデパートは、全く異世界のような気がしない。
ヨネンさん曰く、この魔道式ブザーは、ドワーフ王国の製品らしい。
プルプルプルプルプル
クモとアナ先生が持っていたブザーが、同時になった。
俺とクモとヨネンさんがラーメンを、アナ先生とビー子がたこ焼きを受け取りに行く。
俺がラーメンの方に行ったのは、コショウや紅しょうがなどをラーメンにトッピングする為だ。
俺はしっかりと、席から観察していたのだ。
ラーメンを頼んだ者達は、ラーメンを受け取ったその場で、調味料をかけていたのだ。
これも前の世界と同じだ。
俺は失敗しない男なのだ。
しっかりと観察して準備する。
受け取り口に行くと、どうやらクモは豚骨ラーメン、醤油ラーメン、塩ラーメン、味噌ラーメン、チャーシューメンを頼んでいたようだ。
他にも、ねぎラーメンや、スタミナラーメン、担々麺、台湾ラーメン、酸辣湯麺などもあったが、最初なのでスタンダードなラーメンを頼んだらしい。
俺はラーメンにコショウを入れる派なので、何気にラーメンにコショウを入れようとしたら、クモから恐ろしい程の殺気を感じて手を止めた。
もう少し気付くのが遅れていたら危なかったかもしれない。
食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
クモとしては、最初は何も入れずにラーメンを味わいたいのだろう。
俺は取り分け用の茶碗をGETし、紅しょうがと高菜、それからニンニクを取り分けて持って行く事にした。
ヨネンさんを見たら、普通にコショウを手に持ち、テーブルに持っていってしまっていた。
凄いぞ。凄すぎるヨネンさん。
俺には絶対に出来ない。
コショウは、みんなで共同で使う物で、コショウが置いてある場所にも、この場で使って下さいと書いてあるのだ。
小心者の俺には絶対に出来ない事だ。
やはり、ウルフデパートで一番家賃を払っているという自信があるのか、それともドワーフ王国の王族ともなると、小さい事を全く気にしないのか。
兎に角、俺には絶対に出来ない事である。
席に戻ると、アナ先生とビー子が3種類のたこ焼きを持ってきていた。
どうやらこちらも、スタンダードのソース味、醤油味、それからネギ塩のようだ。
通なクモは、奇を衒ったような物は、最初から食べない。
基本を知らなければ、味などわからないのだ。
都会っ子のアナ先生やヨネンさん、それから俺は、ラーメンもたこ焼きも食べた事があるので、チーズたこ焼きとかも有りだと思うが、クモとビー子はラーメンもたこ焼きも食べた事がないのだ。
ビー子に至っては、その存在も知らなかったであろう。
最初に酸辣湯麺など食べてしまっては、ラーメンとは酸っぱい物だと勘違いしてしまう。
それも含めてクモは、よく分かっているのだ。
クモは、予め取ってきていた取り皿に人数分のラーメンを取り分けていく。
どうやら、1人一種類づつ食べる訳ではなさそうだ。
料理大好きクモは、全ての種類の味を知りたいみたいだ。
「たくさん種類があるんだねぇ~」
ビー子は、取り皿に入れられた5種類のラーメンを見て嬉しそうだ。
お子様なので、種類が多いだけでテンションが上がるようである。
たこ焼きは、みんなでつつくスタイルでいくようである。
俺は先程、ラーメンにコショウを入れようとした時に突き刺さった鋭い8つ目が忘れられないので、クモのやりたいようにやらしてやる。
俺はまだ、クモに殺されたくないのだ。
優しいクモは、実際には俺を殺さないと思うが、クモに嫌われるのは耐えられない。
クモに胃袋も握られているし、毎朝チンコも握られているのだ。
クモのフェラチオは、この世のものとは思えない程、気持ち良いのである。
クモに嫌われてしまったら、その、この世のものとは思えないフェラチオが、味わえなくなってしまうのだ。
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