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80. 心の叫び

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「な……なんだ! これは!」

 俺は、豚骨ラーメンのスープを一口飲んで、立ち上がる。

 これは俺の知っている豚骨ラーメンでは無い。

 豚骨ラーメンじゃ無いと言うのは語弊であるが、このガリクソンさんがプロデュースしたという豚骨ラーメンは、俺が今まで食べた豚骨ラーメンの中で、断トツNo.1の美味しさなのだ。

「異世界の豚骨ラーメンが、本場の豚骨ラーメンを越えるのか……」

 俺が思わず漏らした独り言に、ヨネンさんが反応する。

「そう言えば、ゴトウさんがよく言ってましたね。
 ガリクソンさんの日本食は、本場の日本食を越えるとね。
 ゴトウさんは、ガリクソンさんの料理を気に入り過ぎて、モフウフ地下王宮の料理長にスカウトした程ですからね!」

 俺はまさか、これ程までの豚骨ラーメンを、この異世界で食べれるとは微塵も思ってなかった。
 よく外国で食べる、なんちゃって日本食が出てくると思っていたのだ。

 料理上手のクモが、師匠と崇めるのも納得すると言うものだ。

 クモの方を見ると、8つの目から涙を流しながら、黙々とラーメンをすすっている。

「クモちゃん、このラーメンは確かに美味しいけど泣く程かな?」

 アナ先生が、アホな事を言っている。

「アナ先生、その発言を本気で言ってますか?」

「エッ……だって、ラーメンって普通、こんな味だよね?」

「確かにラーメンは、こんな味ですけど、僕はこれ程美味しいラーメンを食べた事がありません!」

「そうなんだ。だけど私は、ウルフデパートのフレシア店でしかラーメンを食べた事がなかったから、この味しか知らないんだよな」

「クッ! 日本人でもないのに、なんて生意気な。
 始めて食べたラーメンが、世界一のラーメンだと!
 こんな極上のラーメンを最初に食べてしまったら、他のお店でラーメンなど食べれないじゃないか」

 俺はアナ先生に向かって、思わず罵声を浴びせてしまった。
 俺は、ラーメン大好きエーサクさんなのだ。
「私、美味いラーメンしか食べたこと無いの」などと、自慢されたら、どんな紳士な悪魔でも暴言を吐いてしまうというものだ。

「エー君、生意気って……」

 アナ先生は涙目だ。
 俺はちょっと言い過ぎたと、少しだけ反省するが、「ゴメン」とは、絶対に言わない。

「エーサクさん、この世界では、ウルフデパートでしかラーメンは食べれないんですよ。
 真似しようとしても、誰も ガリクソンさんの味が再現出来ずに挫折してしまうんです」

 ヨネンさんが、アナ先生を擁護する。

「そりゃあそうでしょう。
 このガリクソンさんのラーメンは、僕が前の世界で食べた どんな有名ラーメン店よりも美味しいんですから。
 このガリクソンさんのラーメンを食べた後で、自分でラーメンを作ろうなんて思う自信家なんていませんよ!」

 バン!

「ここに居るクモ!」

 クモがテーブルに両手を叩きつけ、立ち上がる。

「私は、絶対にガリクソン師匠を越える美味しいラーメンをご主人様に食べさせてみせるクモ!」

 クモはヤル気の満ちた目で、俺を凝視する。
 クモの8つある目が燃えている。
 元々真っ赤だから燃えているように見えるのか。
 クモの美しい真っ白な肌が、紅潮して真っ赤になっている。
 興奮しているのか ハァハァ言っている。

 そんなクモを見て、俺は思わず勃起してしまう。
 悪魔の体が怨めしい。
 人間の数倍もナニが敏感なのだ。
 ラーメン食べながら勃起なんて、恥ずかしすぎる。

 ここは、お家のダンジョンではないのだ。
 南の大陸の中心とも言われている『漆黒の森』の王都モフウフなのだ。
 そんなモフウフの最先端の有名店が集まるオシャレなウルフデパートで、勃起しながら歩けるものか。

 当たり前だが、あちらの世界のデパートでも、勃起しながら歩く紳士などいない。
 俺は紳士な悪魔なのだ。
 こんな時だけ、俺の悪夢的で太くてゴツゴツな逸物が怨めしい。

 普段は、アナ先生達をアヘアヘさせるのに便利な逸品なのだが、今は、ただの変態スティックだ。

 俺のナニは、生まれつき真珠が入っているようにゴツゴツして歪な形をしている。
 しかもメスを気持ちよくする為に、計算された位置に真珠が入っているので、ゴツゴツが原因で、女が痛がる事などない。

 何故今、俺のチンコの形状を詳しく説明しているかと言うと、俺が着ている全身タイツに原因がある。

 俺の全身タイツは、普通の全身タイツとは少し違う。

 普通、全身タイツで勃起するとテントが張ったような状態になるのだが、俺が『錬金』で作った全身タイツはとっても伸縮性を備えていて、チンコ形状がそのまま形にでてしまうのだ。

 そう、俺の悪夢的なゴツゴツなチンコの形状がしっかりと分かってしまうのである。

 俺は本来、この、悪魔的で極悪なゴツゴツの逸物を皆に見せびらかしたい。

 しかし、このハイソで意識高い系の人々が集まるウルフデパートで、俺のナニを見せびらかす事などノミの心臓を持つ俺には不可能な事だ。

 俺は見た目、悪魔だが、心は人間なのだ。

 それも真面目で恥ずかしがり屋の多い、元日本人なんだよ!
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