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62. 天使or悪魔(牛魔王視点)
しおりを挟む殺ったか!
『咆哮act2』をかわされたら次はない。なにせ俺の全魔素を放出したのだ。
目を凝らして、煙が引くのを待つ。
「ゲホゲホッ!! 死ぬかと思った!!」
大盾の後から話声が聞こえる。
『咆哮act2』は、ドワーフの大盾に完璧に防御されたのか……
「今のは少しビックリしたね!
でも、サイト君が言うような月を破壊するような威力は無かったと思うけど?
んちゃ砲って何?」
「んちゃ砲はだな! 月をも破壊する波動砲の一種なのだ!」
「フーン……少し炎も混じってたみたいだし、どちらかと言うと、ペロちゃんの口から発する火炎魔法に似てる気がするけどな。
威力はペロちゃんの火炎魔法と五分といった所だけど、ペロちゃんの場合は3連発だからなぁ……
尚且つ、姫ちゃんの魔力を使ってるから無限に発動する事ができるしね!」
あいつら何を言ってるんだ。
月を破壊する波動砲が撃てるだと。
俺の全魔素を注ぎ込んだ『咆哮act2』を3連発で発動できるだと。
さらに、無限に撃つ事ができるなんて本気に言っているのか?!
「ご主人様! めんごなのね!
でも悪いのは、ご主人様なのニャ!
ご主人様が月をも破壊する威力だと言うものだから、思わず避けてしまったのニャ!
これくらいの威力だったら、軽く弾き返せたのね!」
化物どもめ。 俺の渾身の一撃を弾き返すだと……
ハッハッハッ、俺は絶対に敵に回してはいけない者達に、刃向かってしまったという訳か……
「マスター! 牛さんをどうしますか?
目はしっかりと見開いていますが、魔素切れで話す事もできないくらい、消耗してるようなのです」
「う…ん…困ったな……
今後について、話したかったのに……
姫! 回復魔法をかけてやれ!」
「ハイなのです!」
元漆黒の森の姫ガブリエル·ツェペシュが近づいてきて、俺の体に向けて手をかざす。
手が白く輝き、俺の体全体も白く暖かいオーラに包まれる。
なっ何だ!
普通の回復魔法は、体の怪我と体力が回復するだけなのに、ガブリエルの回復魔法は、魔素切れで起こる体の倦怠感までも無くなっていく。
「なっ…何をした!?」
「回復魔法をかけただけですが?」
ガブリエルは不思議そうに俺の顔を見てくる。
美しい……まるで天使だ……
「あ…ああそうか……
ありがとう」
あまりの美しさに顔を背けてしまった。
「牛魔王! 回復したなら話はできるな!
単直に言おう!
お前、俺の配下になれ!」
こいつは何を言ってるんだ。偉そうに。
俺はお前に負けた訳ではないんだぞ。
こいつ以外の3人と1匹は、正直勝てる気がしない。
正真正銘の化物クラスだ。
下手をすれば最強の一角に入れるだけの才能とセンスを持っている。
しかし、こいつは何なんだ。
闘気は使えないし、戦闘のセンスもない。
下手をすれば、今の闘いでもドワーフの娘に守られなければ死んでいたのではないのか?
猫耳やドワーフの下に付くのは問題ないが、自分より下の者の配下になるなんて死んでもゴメンだ。
「フン! 悪いが、断る!
俺は自分より弱い者の下に付くつもりはないのだ!」
ピキっ!!
何かが切れる音がした。
その瞬間、ガブリエルの回復魔法で軽くなった筈の体が、突然重くなった。
く…苦しい……
何かに押し潰される。
四つん這いになって耐えるが、すぐに耐えきれなくなり、地面に顔が押し付けられる。
「マスターの優しさがわからないのですか?」
メイド服をきたガブリエルが近づいてきて、俺を見下しながら質問してくる。
これはガブリエルがやっているのか?
ガブリエルの回りに、赤黒い禍々しいオーラが揺れて見える。
「マスターは、貴方達を殺す事も簡単にできるのですよ」
ガブリエルの闘気の圧が強すぎて、問いかけに返す言葉を発する事もきない。
「もう一度だけ言います。マスターの配下になりなさい。
そうすれば、貴方も、貴方の部下も全員助けると誓いましょう」
「……」
やばい。返事しないと殺される。
しかしガブリエルから発せられる闘気の圧で、全く喋る事ができない。
返事ができないでいると、ますます圧が強くなっていく。
体が石造りの床に、ミシミシとめり込んでいく。
先程は天使に見えたが、今は悪魔にしか見えない。
ガブリエルの目は、返事が返ってこない苛立ちと怒りで血走ってきている。
「マスターの配下になりなさい!」
許してくれ……解放してくれるんだったら、誰の配下にでもなってやる……
「マスターの配下になりなさい!」
ミシミシミシミシ
そいつの配下になるから止めてくれぇ……
圧が強すぎて声がだせないんだぁぁぁ……
「マスターの配下になりなさい!」
ジョボジョボジョボ!!
体中の体液という体液が、体から絞りでてくる。クソォォォ……気付いてくれぇ……
話したくてもはなせないんだよぉ!
「マスターの配下になりなさい!」
ブリブリブリブリ
ウンコが漏れた。
た…助けて……下さい……
気付いて下さい。貴方のマスターの配下になりたいのですが、喋れないのですぅ………………
「マスターの配下になりなさい!」
たぁ………たすぅ………けぇ……てぇぇぇぇ………………………………
べちょ!!
真っ暗になった……
「起きなさい!」
ガブリエルの声が聞こえた。
俺はガブリエルの闘気に押し潰されて、死んだのではなかったのか……
しかし、どこも痛くない。
ツゥーン
クサッ!!
うんこの匂いがする。ズボンがオシッコと、うんこでビシャビシャだ。
やはり、先程ガブリエルの闘気で押し潰されたのは現実だったようだ。
半殺しにされて、再び回復魔法をかけられたのか……
思い出したら体が震えてきた。
ガクガクガクガクガクガク………
「もう一度言います!
マスターの配下になりなさい!」
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク……
震えて喋る事ができない。
グッ!!
また、ガブリエルが圧をかけてきた。
「マスターの配下になりなさい!」
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク………
メリメリメリメリ体がまた床にめり込んでいく。
「マスターの配下になりなさい!」
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク……………
メリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリ……………
ビシャ!!
「起きなさい!」
またガブリエルの声が聞こえる。
悪魔だ……
誰でもいい、誰かこの悪魔から俺を解放してくれ。
解放してくれるのなら、俺はなんだってする。
「姫、そのくらいで止めとけ!」
「ですがマスター!
マスターの配下にならないなんて許せないのです!
配下にならないなら殺してしまいましょうか?」
「そこまでしなくていい。
こいつも姫の怖さが分かっただろ!
その気になれば、【魅了】を使えば簡単に配下にする事だってできるんだ」
助かった……
あの悪魔を止める事ができるとはゴトウ·サイトとは一体何者なのだ……
「オイ! 牛野郎!
俺達の恐ろしさが分かっただろ!
お前らのミノタウロスの利権は返さない!
今度ちょっかいかけてきたら、また姫にお仕置きしてもらうからな!」
「マスターのご慈悲に感謝しなさい!」
ガブリエルが冷たい目をして、俺に言い放つ。
「姫! 帰るぞ!」
「ハイなのです!」
「待ってくれ!! 俺をお前の配下にしてくれ!!」
ドンッ!!
「ウグッ!!」
何かにぶっ飛ばされた。
お腹がスウスウする。
下を向くとお腹に風穴が空いていた。
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