【R18 】必ずイカせる！ 異世界性活

７２. トライアンドエラー

　
　アンちゃんの大盾に守られながら、タイミングを見計らって、炎魔法をフローズンリザードに向かって発動させる。

「これで、どうだ!!」

　ボヲォォォォォォォォ!!

　スルッ。

　今回もフローズンリザードに、軽く躱される。

　何度も、繰り返し繰り返しフローズンリザードに向かって魔法を放っているで、躱されるという結果は分かっている。

　しかし、闘気を使えない俺は、蜥蜴野郎の懐に飛び込む事はできない。

「サイト君！ 
　サイト君の魔法攻撃は、蜥蜴さんに読まれてるよ！
　剣での接近戦じゃないと、蜥蜴さんに攻撃当たらないよ！」

「ご主人様！  闘気を使うのニャ！」

「その闘気が使えないから、困ってるんだろ！」

「エッ本当に？」

「本当だよ！  バカ猫！」

「マスター！ 魔素を体全体から溢れさせる感覚です！」

　姫が闘気のコツを教えてくれるが、今現在の俺では無理なのだ。

「フローズンリザードに魔法をたくさん使ったから、体から溢れさせる程の魔素なんて、もう無いんだけど……」

「そ……そうでしたか……
　私は魔素切れを起こした事が無かったので、失念していました！
　今、回復魔法をかけるのです！」

　姫の回復魔法は、何故かHPだけじゃなくMPをも回復させる。

　余りに魔素濃度が高い為だと思われるが、今の俺にはありがたい！

　俺は全力で魔素を体の外に溢れだすイメージをしてみた。

　ボアッ!!

　スーパーサ〇ヤ人のように、体全体が光輝いた。

「できた！」

「ご主人様！ できてないニャ！
　その状態だと、すぐに魔素切れを起こしてしまうニャ！
　魔素を体の周りに留める感じニャ！」

「そんな難しい事できるか！」

　取り敢えず、アンちゃんの大盾から出て、フローズンリザードに、斬りかかってみる。

　フローズンリザードは俺の渾身の一撃を軽くかわし、鋭い爪で俺の左腕を引っ掻いた。

　スパッ!!

　フローズンリザードの爪が軽く左腕に触れただけのように思えたが、俺の左手はポトリと、地面に落ちた。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「サイト君下がって！」

　無理だ。 体が震えていう事きかない。

「マスター！  任せて下さい！」

　姫が、腕に向かって回復魔法をかけると、フローズンリザードによって、切れてしまった左腕が、ニョキッと生えてきた。

　き……気持ち悪い……

「早く！ サイト君！」

　アンちゃんの声で我に返り、急いでアンちゃんの大盾の後ろに転がりこんだ。

　ガルァァァァァァァァァァ!!

　フローズンリザードが、凍てつく息を吐く。

　アンちゃんが再び大盾で防御するが、近くにあった、俺のフローズンリザードの爪によって切断された左腕が凍りつき、そしてすぐに粉々に割れた。

「オゥェェェ……」

　ありえない事の連続で、気持ち悪くなり嘔吐してしまった。
　流石に、自分の腕が粉々になる所を見るのは、思うところがある。
　この世界では何でもアリだと分かってはいるのだが、実際に自分の身に関わる事だと、精神が追いつかない。
　腕を簡単に失う事もありえないが、無くなった筈の腕が、すぐに生えてくるのだ。
　両生類だって、こんなに早く生えてこないだろ……

「サイト君、もう一度闘気を練ってみて！」

　アンちゃんが俺に支持するが、またもや、俺は魔素切れを起こしている。
　元々のMPの総量が少ない俺が、闘気を扱うのは無理なんじゃないのか……

　姫が、俺が魔素切れを起こしている事に気付いて回復魔法をかけてくれる。

「マスター！ 魔素を身体の表面に薄く覆う形で留めて下さい！」

「魔素総量が少ない俺には、闘気は無理なんじゃないのか？」

「闘気は、魔素総量なんて関係ないのニャ！
　マスター位の魔素があれば余裕なのね！
　闘気は元々、魔素総量が少ない剣士や、武道家か編み出した技なのね！
　少ない魔素を、体全体に薄く張り続け留める事で、体から出ていくMPの消費を抑え、尚且つ、魔法の威力を体全体から発し続ける事ができる究極の技なのニャ！」

「そうだったのか……
　魔素総量は、関係無かったのか……
　だけど、難しいんだろ！
　ブリトニー、究極の技だって言っちゃってるじゃないか！」

「確かに、闘気は究極の技ニャ！
　しかし、いいのかニャ？
　私達のパーティーで闘気が使えないのは、ご主人だけニャ！
　ご主人様は恥ずかしくないのね！」

　ウグゥゥゥ……
　言われてみると、確かに恥ずかしい。
　3才児の姫だって、ペットのペロだって、闘気が使えるのだ……

「サイト君、もう止めとく？
　僕がサイト君を一生守ってあげるから、サイト君は別に強くならなくても大丈夫だよ！」

「マスターは、私が守るのです！」

「グゥゥゥ……
　大丈夫だ！  俺はここで闘気を必ずマスターしてみせる!!」

「サイト君！」
「マスター！」
「ワン！」
「当たり前なのね！ 私のご主人様には強くなって貰わないと、私の野望が叶わないのニャ！」

　いい感じで盛り上がったのに、最後の人の言葉だけ、俺の成長の為ではなく、己の欲望の為のように聞こえたのだが、気にしない。

　そして、もう一度、闘気を練り直す。

　ボアッ!!

　先程より体の周りに漂う闘気が、少し小さくなった気がする。

「これで、どうだ？」

「全然ダメニャ！  闘気が霧散しているのニャ！」

「クッ!!  試してみないとわからないだろ！」

　俺は再び、フローズンリザードに向かって、斬り掛かる。

　スルッ

　フローズンリザードが回転しながら、軽く躱す。

　ズシッ!!
　メシメシメシ

「オゥェェェェェ……」

　フローズンリザードが回転しながら躱すついでに、遠心力で勢いをつけた尻尾を、俺の胴にヒットさせる。

　肋骨が、何本か折れた音がした。
　吐きながらお腹に目を向けると、内蔵が飛び出ている。

　見た瞬間、激痛が走る。

「グアァァァァァァァァァ……!!」

　ん……痛くない……

　姫がヒーリングをかけたようだ。

「サイト君、早く戻って！」

　また、一目散にアンちゃんの大盾の後ろに隠れる。

「ご主人様！ 最初から闘気を練り直すのニャ！
　上手くできるまで、何度でもやるのニャ！
　トライアンドエラーなのニャ！」

「今のを何度もやるのか？
　トライアンドエラー？
　俺、今、肋骨がたくさん折れて、内蔵も飛び出して、死にかけたんだけど……」

「大丈夫ニャ！
　ご主人様の骨は、ブリちゃんが拾ってやるのニャ！」

「俺が死ぬの前提かよ!!」