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117. 忠誠
しおりを挟むブリトニー·ロマンチックは12歳の時に、家出した。
8歳の時に味わった快感を、味わう為だ。
あの時の快感は、その時以来1度も味わえずにいたのだ。
血と精子とオシッコの匂い。
ブリトニーの心を掻き乱す刺激的な匂い。
ブリトニーは、家出したその足で隣町に向かった。
冒険者になる為だ。
何故、隣町かというとニャンゴンでは面が割れているからだ。
既に、1度城を抜け出しニャンゴンの冒険者ギルドに冒険者登録しに行ったのだが、すぐに城に通報されてしまい、連れ戻されてしまったのだ。
隣町ゴリゴリは、幸い、漆黒の森の直轄領ではない、魔王が治めている普通の城塞都市だ。
なので、ニャンゴンに通報される事も絶対にない。
そしてブリトニーは今、ニャンゴンの隣町、ゴリゴリに向っている所なのだ。
「以外に遠いな……
歩いて1時間位だと聞いていたのに……
子供の足だからかな?」
ブリトニーは、ブツブツ独り言を言いながら、ひたすらゴリゴリに向けて歩く。
ブリトニーが何故、隣町に遠出してまで冒険者になろうとしているかというと、冒険者というブリトニーにとって理想的な職業があると、1ヶ月ほど前に、兄から聞いたからだ。
冒険者の仕事は、主に魔物を倒す事が仕事だ。
何故、魔物を倒す事が仕事になるかというと、この世界には魔道具という物が存在する。
その魔道具を使う為には、魔素をたくさん含んだコアというものが必要なのだ。
そして、そのコアは魔物の体の中にだけ存在する。
ブリトニーは血に興奮する、サイコ幼女だ。
8歳だった、あの日、ブリトニーは魔王の手下の腸を握りしめ、体中返り血を浴びた状態で見つかった。
その光景を見た。母や兄や姉にとってはとてもショッキングな光景だったようだ。
ただ、魔王の手下を返り討ちにしただけなら、さすがはロマンチック家の娘だと褒められたであろうが、どう見ても母達にはブリトニーが殺人を楽しんでいるようにしか見えなかったのだ。
そんな事は、部屋の有様を見れば分かってしまう。
魔王の手下は、腕と足の健を斬られ、動く事ができない状態で、腹を切り裂かれていたのだ。
それだけではない、ブリトニーはお腹から腸を取り出し、駆けつけてきた母親に「これで、ソーセージを作って!」と、言ったのだ……
誰だって、ブリトニーの将来が心配になるだろう。
そんな中、冒険者は、コアという物を魔物の体の中から取り出すのが仕事だと兄から聞いたのだ。
ブリトニーはその話を聞いた時、冒険者は自分の天職だと思った。
冒険者になれば、魔物のお腹を引き裂き放題、尚且つ、コアという物を取り出して、冒険者ギルドに持っていけば、お金まで貰えるのだ。
ブリトニーは、その話を聞いたその日の内に、ニャンゴンの冒険者ギルドに冒険者になる為に向かった。
しかし案の定、ブリトニーはすぐに冒険者ギルドから城に連絡が入り、あっという間に城に連れ戻されてしまったのだが、今回はそんなドジはしない。
何故なら、今回は、一番厄介な障害になるであろう15歳になって元服した兄が、父に連れられて、漆黒の森の王都で、王に謁見をする為に出かけているのだ。
一番、ブリトニーの事を気にかけている兄がいないのだ。
このチャンスを逃しては、冒険者になる事など一生叶わない。
そんなこんなで、いつの間にかゴリゴリの城塞都市に到着した。
城塞都市ゴリゴリの入場門では検問があったのだが、小さいブリトニーは、人の間をすり抜け、難なく検問を突破し、ゴリゴリの冒険者ギルドに到着する事に成功した。
冒険者ギルド試験は、年齢制限はない。
誰でも受ける事ができる。
実際にブリトニーと同じ12歳のD級冒険者だっている。
ブリトニーの容姿を見た受付嬢に、絶対に冒険者になるのは無理だと止められたが、構わず冒険者試験を受けた。
結果としては、A級冒険者になった。
この時まで12歳でA級冒険者になった者は存在しなかったようで、ブリトニーが史上初の快挙だったらしい。
数年後、3歳でS級冒険者になった幼女が現れるまでは、ブリトニーが最年少記録を保持していたのだ。
ブリトニーがA級冒険者になれたのは、偶然ではない。
実はブリトニーは、既にS級レベルの者を殺した事があったのだ。
4年前に殺した魔王の手下は、S級レベルだったのだ。
相手がブリトニーの事を子供だと思って油断していた事もあったのだが、まぐれでS級を倒せない。
普通、S級クラスを倒すには、闘気を使わないと倒せない。
たまたま、相手が興奮してチンコを立たせて無防備な状態だった為、闘気を使われる前に倒してしまったが、ブリトニーには天性の闘いのセンスがあったのだ。
冒険者になってからは、ブリトニーが有名になるまで時間はかからなかった。
毎回1人でダンジョンに潜り、全身血だらけの状態で、コアをたくさん持って、冒険者ギルドに帰ってくるのだ。
それを見た者は、恐怖でしかない。
普通、魔物を素手で倒すには、経験を積んだ格闘家や武道家じゃないと無理なのだ。
12歳の女の子に、魔物を倒す腕力があるとは、とてもじゃないが思えない。
最初は、ブリトニーも苦労したようだが、天性のセンスで魔物の急所を確実に最短距離、最高のインパクト、最速のスピードで、何匹も何匹も倒していく内に、いつの間にか全ての攻撃が会心の一撃になるようになったのだ。
そして、ブリトニーが漆黒の森全土で最も有名になった出来事はというと、やはり、ソロでS級未攻略ダンジョンを、若干13歳、尚且つ、闘気も使えない状態で攻略してしまったのだ。
S級ダンジョンのダンジョンマスターは、SS級の魔物だ。
闘気を使わないでS級の魔物を倒すのも無理な話なのだが、SS級のダンジョンマスターをソロで倒してしまったのだ。
ブリトニーの攻撃は全て会心の一撃だ。
会心の一撃のみが、唯一闘気を纏わないで、闘気を破壊する攻撃なのだ。
普通、会心の一撃は100回攻撃して、一回出るかどうかの確率だ。
ブリトニーは、それをセンスと、常軌を逸した殺人衝動で100パーセントまで持っていったのである。
この話は、漆黒の森は疎か、南の大陸全土に広がった。
漆黒の森に、将来大魔王になりうる逸材がいると。
その日から、漆黒の森の魔王、大魔王の間で、ブリトニーの争奪合戦が始まった。
ブリトニーを配下に加えれば、相当な戦力になる。
しかも、発展途上なのだ。
ほかっていても、大魔王になる逸材なのだ。
まだ、自分の手でどうにか出来るうちに、配下にしようと誰でも考える。
何故ブリトニーを、魔王達は配下にしようかと考えたかというと、どう考えてもブリトニーは、冒険者の中だけでは収まりきれないと考えられたからだ。
ブリトニーがダンジョンから戻って来た時は、いつでも全身血だらけだ。
薄ら笑いまでも浮かべている。
とても狂気の沙汰とは、思えない。
どう考えても冒険者というより、魔王に近い。
しかし、魔王や大魔王によるブリトニー争奪戦を、良しと思わない者もいた。
漆黒の森の騎士団長を務める、ガルム·ロマンチック。
そう、ブリトニーの父だ。
漆黒の森の騎士団長を務めるガルムにとって、実の娘が、自分達の敵である魔王や大魔王の配下になるなど、到底認める事などできない。
それに、ロマンチック家は代々、漆黒の森のダークエルフに仕える一族なのだ。
漆黒の森のダークエルフ以外に、ロマンチック家の人間が仕える事など、あってはならない事なのだ。
ガリムの動きは早かった。
すぐに、漆黒の森の王に進言し、ブリトニーを近衛騎士に迎えるよう進言した。
漆黒の森の王は それを受け、ブリトニーを漆黒の森の近衛騎士に迎える事に決めたのだ。
ブリトニーは、近衛騎士になりたくないと逃げ回っていたのだが、父ガリムが、漆黒の森の軍隊1000人を連れて、ブリトニー1人を包囲し、なんとか漆黒の森の王都に連行する事に成功した。
ブリトニーは、ずっとイヤイヤ言っていたが、王との謁見で、コロッと態度を一変させる。
漆黒の森の王の隣で、王妃に抱かれているガブリエル·ツェペシュを見たからだ。
赤子のガブリエルからは、禍々しく巨大な魔素が溢れ出し、王の間全体を、多い尽くしていた。
その禍々しい魔素が、ガブリエルにも絡みつく。
普通の人間だったら、魔素の力だけで押しつぶされてしまうだろう。
あまりの巨大な魔素を小さな体に秘めている為、自分の力では押さえつける事ができないのだ。
ブリトニーは産まれて初めて恐怖を覚えた。
ブリトニーが、あまりに天才故に、ガブリエルの秘めた力に必要以上に反応してしまったのだ。
ブリトニーはその場で、失禁してしまい、エクスタシーを覚え、ビクビクビクとイキ失神してしまった。
ガリムは狼狽した。自分の娘なら、姫の闘気にも耐えれると思っていたからだ。
確かに、ブリトニーならば耐えれるだけの力があるのだが、ブリトニーはガブリエルにそれ以上の恐れを感じたのだ。
自分が仕えるのは、この赤子しかいないと、ブリトニーはこの時 直感した。
ロマンチック家の血がそうさせるのか。
そしてブリトニーもまた、父や兄と同じ様に、漆黒の森のダークエルフに忠誠を誓うのだった。
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