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161. 戦争
しおりを挟むアンちゃんの弟だというヨネン·ドラクエルが、丁寧に挨拶してきた。
「サイト君、行くよ!」
アンちゃんが、早くここから逃げ出したいのか、俺の手を引き、店から出ようとする。
「まっ……待って下さい! ゴトウ様! 姉上!」
俺の空いている側の腕をヨネンが掴み、アンちゃんとヨネンの引っ張り合いが始まる。
何気に、子供にしか見えないヨネンの力が強い……
というか、怪力だ。
掴まれた腕が、ミシミシと骨が軋んでいる。
流石はドワーフ族だな。
違う!!
感心している場合ではないぞ!
アンちゃんとヨネンに引っ張られて、体が半分に裂けそうなのだ!
股から半分に裂けた場合、チンコはどちら側にいくのか?
まさか、チンコまで真ん中に裂けるという事はないよな?
違う! 違う!
何、しょうもない事考えているのだ!
現在のこの状態は、絶対絶命のピンチなのだ。
この世界に来てから、最大のピンチかもしれない。
まさか仲間に、体を半分に引き裂かれて殺されるとか、あって良い筈がない。
何故か、姫も静観している。
助ける気など、さらさら無さそうだ。
傍目には、子供同士の引っ張り合いにしか見えないかもしれないが、あのアンちゃんなんだぞ!
あの滅茶苦茶重い大盾を、軽々と片手で持ち上げる怪力女子。
そのアンちゃんと力が拮抗している時点で、このヨネンとかいう、どう見ても12、3歳にしか見えないアンちゃんの弟が、凄い怪力の持ち主だという事くらい解るだろ!
「お前等! いい加減引っ張るのは止めてくれ!
このままだと、体が股から裂けてしまう!」
アンちゃんと弟のヨネンは、ハッと我に返り、手を離した。
「ゴトウ様! 申し訳ありませんでした!」
ヨネンが深々と頭を下げ、申し訳なさそうに謝ってきた。
「サイト君……ゴメンね。
痛かった?」
「痛かったと聞かれれば、痛かったが、それより俺はこの店に興味があるので、少し見ていきたいのだが」
「うぅ……サイト君が、そう言うなら僕も従うよ……」
アンちゃんは、さっきの引っ張り合いに負い目を感じているのか、渋々ながらお店を見る事を許可してくれた。
店内を見ると、いかにも高そうな武器や防具が飾られている。
どれも厳重にガラスケースで保管されている為、直接は触れられない。
元の世界のデパートのブランド店と同じシステムみたいだ。
気になる物があれば、店員に話し掛けて見せてもらうシステムだ。
「こちらのフロアーにある武器や防具、魔道具は、上級の中でも、とりわけ出来の良い最高級の物と、聖級レベルまでを置いております。」
ヨネンが俺の後を付いて来て、説明をしてくれる。
「聖級の武器が売っているのか?」
「ハイ! 聖級以外にも、神級の武器や防具、魔道具なども売っておりますが、それはVIP専用の別の部屋に御用意しております!」
なんと……このお店は、神級の武器まで売っているのか、モフウフの武器屋や防具屋では、上級の上までしか売ってなかったのに。
しかし、この値段は何なんだ?
聖級の武器の値段は全て、10000000マーブルオーバーだ。
神級になると億越えかもな……
「あちらのカウンターでは、オーダーメイドをお受けしております。
本来なら父上の他にも、ドン、ガン、ゾイのドワーフ王国が誇る伝説の職人のオーダーも受けつけていましたが、現在、ゴトウ様の元に厄介になっておりますようなので、オーダーを受け付けておりません。
なので、現在、父上1人にオーダーが集中してしまい、父上は疲労困憊なのです。
どうか、ゴトウ様。
ドン、ガン、ゾイをお返ししてくれませんか?」
そんな事になっていたのか……
なんか俺のせいで、アンちゃんのお父さんに苦労をかけているようだ。
こんな事で、アンちゃんのお父さんに嫌われるのはゴメンだ。
しかし、ドワーフの爺さん達は、勝手にアジトに住み着いているのだ。
俺のせいではない。
デーモンメイドで美人局のような事はしているが……
しかし、ウィンウィンの関係だ。
俺達が、爺さん達に女をあてがう代わりに、爺さん達が、武器や防具、魔道具を作ってくれたり、都市の設計をしてくれたりしているのだ。
でも、アンちゃんのお父さんに恨まれるのは困る……
相手は勇者パーティーで、最強の一角に君臨する正真正銘な化物なのだ。
娘を性奴隷にしてるだけで、既に、殺されてもおかしくないのに、更に、直接迷惑をかけているみたいなのだ。
この状態は、絶対にどうにかしなければならない。
しかし、ドン爺さん達はアジトから出ていかないだろう。
完全に、デーモンメイド達に色ボケしているのだ。
「俺は帰しても良いのだが、爺さん達が何と言うか……」
「ならば、せめて、1年に1人8個のオーダーを受け付けてくれませんか?
ドン、ガン、ゾイは、ドワーフ王国の貴重な財源なのです。」
「それくらいなら、問題ないかと思うぞ!」
「良かったです!
これで戦争は回避できました!」
「何っ! せ……戦争だと?!」
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