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224. ベルフェゴール
しおりを挟むエリスさん達に、必ずまたダンジョンの探索に戻る事を約束し、【影渡し】スキルを使ってモフウフのアジトに戻ってきた。
「お帰りなさいませ。サイト様」
「ああ、メリルただいま!
で、今、どんな感じだ!」
「ハイ、漆黒の森の北側は、現在全ての城塞都市が、北の大魔王の手に落ちてしまいました。
東の戦線は、ハロハロを前線基地にして、元剣神の大吉様とハラ·キリ様が中心になって戦っております。
西の戦線では、ニャンゴンが前線基地となり、元漆黒の森の騎士団を最編成し直した部隊を、剣姫カレン·ロマンチックが指揮をとり戦っております!」
「わかりやすく言うと、漆黒の森は、北と南に別れて戦っていると言う事か?」
「左様でございます。ただいま、アジトの会議室で、戦略会議を行っておりますので、至急お越しくださいませ!」
「よし、すぐ行く!」
会議室に扉の前に来ると、中から大きな怒声が聞こえてきた。
どうやら、牛魔王とサンアリが熱く議論しているようだ。
「すぐに、元王都に攻め込むべきだ!
大将の首をとってしまえば、それで終わりだろ!」
牛魔王が、サンアリに今にも襲い掛かりそうな勢いで、意見しているのが聞こえてくる。
「姫様方が戻ってくるまでは、戦線を維持するべきです!
戦力が整うまで、今は動くべきでは有りません!」
どうやら、牛魔王はすぐにでも撃って出たく、サンアリは様子を観るべきだと言っているようだな。
ガチャン。
会議室の扉を開けると、一斉に視線がこちらに集まり、俺達に気付き、会議の参加者一同が席を立つ。
「グランドマスター、お待ちしておりました」
扉の前で待ち構えていたゴキ男爵が、俺達を上座に案内する。
「みんな、座っていいぞ!」
俺の号令で、サンアリ、ガリム·ロマンチック、牛魔王ら、いつものメンバーは席に座ったが、1人だけ見慣れない、黒いローブを羽織った爺さんが、席に座らずに立っていた。
「お初にお目にかかります。ゴトウ様。
私は、元漆黒の森の魔道所長を務めておりました、ハッハ·ハバロネと申す者で御座います。
この度、北の大魔王との戦いの為に馳せ参じました」
「ハバロネ? 辛そうな名前だな」
「辛そう?」
ハバロネが辛そうな名前と言われて、ポカンとしている。
この世界にも唐辛子のような食べ物はあるのだが、ハバロネは無かったのだ……
「いや、何でも無い。気にするな。
味方は多ければ多い方が良いからな、これから宜しく頼むぞ!」
「ハハ、精進致します!」
「ゴトウ殿、ハバロネ殿は、姫様がモフウフでお立ちに成られたと発表されてから直ぐに、漆黒の森元王都に潜伏し、北の大魔王の動向を探っておられたのです。
今回、ハバロネ殿は、いち早く北の大魔王が動くという情報を察知し、モフウフに知らせて下さったのです。
そのお陰で、余裕を持ってモフウフの防御網を構築する事ができ、取り敢えずは、北の大魔王の第一陣を追い返す事に成功した次第でございます!」
サンアリが、ハバロネの今回の功績を説明してくれた。
「そうか、それは助かった。感謝する。
それでハバロネよ。北の大魔王の戦力はいかほどのものなのだ?」
ハバロネに質問する。
「北の大魔王ベルフェゴールが総大将として、元漆黒の森王都に鎮座し、東部戦線を次将のアスモデウスが指揮をとり、中央はガープ、西部戦線をセーレが指揮をとっております」
おいおい、待てよ。
ガープとセーレは知らないが、ベルフェゴールとアスモデウスって、七つの大罪に出てくる怠惰と色欲じゃないのか?
何でこの世界に、前の世界で有名な悪魔が出てくるのだ?
「オイ、一応確認するが、もしかして北の大魔王とはデーモンなのか?」
疑問を確かめる為に、再びハバロネに質問する。
「ハイ、左様でございます。
北の大魔王と部下達は、初代漆黒の森の王に仕えたとされるデーモン達でございますので。
言い伝えによりますと、初代王は、ベルフェゴールやアスモデウスの他にも、強力なデーモンを使役してたと伝えられております」
「と、言う事は、今回の戦争は、元々は身内同士の戦いって事なの?」
「まあ、そういう事になりますかな。
言い伝えによりますと、初代王は自分が死んだ後も、漆黒の森を頼むとデーモン達にお願いしていたようなのですが、2代目の王が余りの能無しだったようで、デーモン達は初代王との約束を反故にして、勝手に王との契約を解除してしまったと、伝承されております」
まあ、全てはハバロネの言う通りなのだろうな。
漆黒の森の王は、代々能力が落ちていったらしいし、始まりの魔女も、それに見かねて俺を召喚したようなものだしな。
しかし、北の大魔王が七つの大罪、怠惰のベルフェゴールとは……
昔、七つの大罪についてネットで調べた時、確かベルフェゴールは、女性を観察し過ぎ、挙句の果てに女性不信になったと書いてあった気がする。
それならば、超絶美少女である姫やブリトニーに全く興味を示さず、姫の兄だけに執着し、慰みものにするのも納得できるな……
ところで姫の兄貴は、まだ生きているのか?
「ハバロネ、もう1つ質問するが、姫の兄が、今どうしてるのか分かるか?
まさか、殺されてはいないよな?」
「勿論、生きております。
姫様の兄上であらせられるヨハネ·ツェペシュ様は、ベルフェゴールに相変らず寵愛を受けており、今回の戦争でもベルフェゴールに祭り上げられ、
『王位は、王位継承権第1位であるヨハネ·ツェペシュが継承すべきだ! 女であるガブリエル·ツェペシュが漆黒の森の王になるなど、絶対に認めない!』
と、申しておるようです」
まあ、ベルフェゴールが、前の世界の伝承通りの男ならば、そうなるよな……
と、言うか、姫の兄貴が生きているのなら、無理に姫が漆黒の森を治めなくても、姫の兄貴が漆黒の森を統治すれば、それで良いのでないのか?
そうすれば、俺はアジトに篭もって、姫やブリトニー、アンちゃん達と、SEXしまくり理想のスローライフがおくれるじゃないか!
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