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226. 東部戦線(1)

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「話が脱線しているようですが、時間が無いので元に戻します。
 東部戦線ですが、援軍としてシスターズを送り込みたいと思っております」

 サンアリが、再び作戦の説明を始めたが、いきなり耳慣れない言葉が出てきた。

「サンアリ、いきなり話の腰を折って悪いが、シスターズとは何者だ?」

 俺は、とても気になりサンアリに質問する。

「シスターズは、ゴトウ殿や姫様付きのメイド達、4人を指す総称ですが」

 メリル達はシスターズと言うのか。
 全く知らなかった……
 メリルとメイドさん以外の、他の2人のメイドの名前も知らないが、それは一先ず置いておこう。

「そうか。サンアリ、話を続けてくれ!」

「シスターズの力は、4人揃えば絶大です。
 大吉様と力を合わせれば、アスモデウスと五分五分になると見ております」

 大吉爺さんと、メリル達もかなり強いと思うのだが、それでも五分か。

「次に西部戦線に移ります。
 西部戦線には、『カワウソの牙』に向かって貰おうかと思っております!
 西のデーモン軍団の指揮をしているセーレの強さは、アスモデウスより一段落ちると思われますので、援軍は『カワウソの牙』で、十分でしょう。
 一応、西部戦線には、元漆黒の森騎士団の精鋭を配備しておりますので、こちらは、何も問題ないかと思われます。
 剣姫カレン·ロマンチック様も、前回敗れた雪辱を誓っておりますので、士気は高いと思われます。」

 まあ、カレンの職業『剣姫』のジョブは、勇者パーティーの予備軍だと言うし、大丈夫だろう。

「そして中央は、総大将のガリム·ロマンチック殿に指揮をとってもらいます。
 副将に牛魔王殿を付け、牛田さん、牛神·パウロの『犬の肉球Bチーム』凸凹コンビと、牛魔王軍が主力メンバーとなります」

 ん? 待てよ。それだと俺達は何をするのだ?

「サンアリ、俺達には役割は無いのか?」

「勿論、御座います。
 ゴトウ殿達、最大戦力は、遊軍として各地を転戦してもらう事を考えております。
 姫様の回復魔法は絶大ですので、各戦線での負傷者の治療も、率先して行って貰うと有難いです」

「ハイなのです! 家族を助けるのは、長女の務めなのです!」

 あれ程ダンジョンでは、早くモフウフに戻ると言っていたのだが、いざモフウフに戻ってきたら、ずっと喋らずに大人しくしていた姫が、突然張り切り出した。

 相変わらず、姫はゴトウ族には優しい。

「それでは、大まかな作戦内容の説明は終わりましたので、それぞれの持ち場に移動して下さいませ!」

「「「おおおー!!」」」

 皆、気勢を上げて移動し始める。

「ご主人様、私達はどこに行くのニャ?」

 ブリトニーが質問してきた。

「そうだな、シンタローさんに元気にやってると、大吉爺さんに伝えてくれと言われていたので、取り敢えずハロハロに向かってみるか!」

「賛成なのです!」

 姫が珍しく食いついた。
 姫は、何故だか、大吉爺さんやシンタローさんとか、原田家の人間が大好きなのだ。

 多分、異世界人の血を引く者に惹かれる性質なのだろう。

 漆黒の森の初代王も、原田家の先祖を寵愛していたようなので、遺伝なのかもしれないな。

「そうと決まれば、直ぐに出発だ!」

 俺達は、会議室に設置されている聖級移転装置でハロハロに転移した。

 ズダダダダダダーーーーン!!

 ズドン!!

 ドゴゴゴゴゴゴゴ!!

 ハロハロ王宮の聖級移転装置から出ると、凄まじい轟音が鳴り轟いていた。

「これは凄いな……」

 モフウフでは、ダンジョンの最下層部という事もあったからか、戦闘の物音1つしなかったのだが、東部戦線はサンアリも言っていた通り、かなり厳しい状況のようだ。

 王宮は野戦病院と化しており、怪我人が何百人も運び込まれている状態である。

「姫様のポーションは、重症者のみに使って下さい!
 軽い怪我は、私達の回復魔法で治しますから!」

 回復魔法が使える巫女や僧侶が、王宮中を走り回り、怪我人の治療でてんやわんやの状態だ。

 まだ、戦争が始まってから半日程度しか経っていないのに、この有様か……

「姫!」

「ハイなのです!!」

 姫が当たり前のように、王宮全体に回復魔法をかけた。

 怪我人は、全員回復し、殆ど死にかけていた者も全快したようだ。

「うおおぉぉぉーー!!
 ちぎれていた腕が、くっついたぞ!!」

「俺なんて、無くなった足が生えてきたぞ!!」

「今さっき死んだ者が、急に生き返ったぞ!」

「魔法を使い過ぎて、魔素枯渇の状態で気持ち悪かったのが回復したわ!」

「姫様だ! 姫様が来てくれたぞ!!」

「姫様、万歳! 万歳!」

「姫様が来てくれたら100人力だ!」

 相変わらず、姫のハロハロでの人気は凄まじい。

「オイ! 現在の戦況はどうなってるんだ?」

 姫が皆に回復魔法をかけるまで、王宮中を右往左往走り回っていた、回復役の僧侶を捕まえて聞いてみた。

「先程、シスターズの方々が援軍に現れまして、『大吉様とハラ·キリ様以外の兵士は、一旦引いて、英気を養うように!』との、命令を受けましたので、現在、全軍撤退して城に戻り回復に務めていた所です」

 成程な、だからこれ程の怪我人が王宮に溢れかえっていたのか……

「姫様、ゴトウ様! ハロハロ常駐の全部隊、姫様のお陰で全回復致しましたので、大吉様達を援護する為に、再び出陣しようと思うのですが!」

 前回、ハロハロに来た時に、王宮にいた見覚えのある軍人が話しかけてきた。

「取り敢えず、まだ待機しておいてくれ。
 俺達は、これから戦場を見に行こうと思うのだが、現在の戦況を詳しく説明してもらいたいので、一緒についてきてくれないか!」

「ハッ! かしこまりました!」

 軍人の男に、連れられて城の外に出ると、そこには、ハロハロ城塞都市の回り一体を取り囲むように飛び回る、数十万人は軽くいるであろう悪魔軍団が、ハロハロ城塞都市目掛けて、激しい攻撃を仕掛けていたのだった。
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