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227. 東部戦線(2)
しおりを挟む「オイ、嘘だろ……
こんなにもいるのか……
空が、悪魔達の黒い翼で、真昼だというのに、殆ど真っ暗じゃないか……」
ハロハロ城塞都市の城壁から見渡せる辺り一帯には、数えきれない程のデーモン軍団が、飛び回っている。
それを、大吉爺さん、ハラ·キリ、メリルとメイドさん、ブリトニー付きのメイドと、アンちゃん付きのメイドの6人だけで相手をしていた。
「こんなにいるの……」
流石に、アンちゃんまでも固まっている。
そんな事より、デーモン達の殆どは、上空から攻撃して来ているようなのだが、大吉爺さんとハラ·キリも同じ様に空中を飛んでいるというか闊歩している様に見えるのだ。
「オイ、大吉爺さんやハラ·キリさんって空を飛べるのか?」
「飛んでる訳ではこざいません。
空気を蹴っているのでございます。
ジゲン流を極めると、空中闊歩ができるようになると言われております。
ジゲン流の正統継承者であらせられる大吉様が、空中闊歩を会得されているのは当然ですが、ハラ·キリ様もハロハロの宰相を務めながらも、ジゲン流道場の塾頭を務める唯一の免許皆伝者であらせられますので、当然、空中闊歩を会得してらっしゃるのです!」
案内役の兵士が、詳しく教えてくれた。
大吉さんとハラ·キリは、ズバッ! ズバっ!と、デーモン達を斬り裂き続けている。
2人とも、化け物じみて強い。
ハラ·キリは、剣聖とか剣帝とかでもないのに、滅茶苦茶強いのだ。
多分、冒険者ならば、間違いなく称号持ちだ。
もしかしたら、剣聖のシンタローさんよりも強い気がするのだが……
ハラ·キリさんが、ジゲン流、唯一の免許皆伝者というのならば、やはり実力はシンタローさんよりも、ハラ·キリさんの方が上なのだろう。
メリルやメイドさん達シスターズも、やはり滅茶苦茶強い、頭のおかしな爆裂魔法を連発して放ち続けている。
しかし、これだけ圧倒的な戦闘力を見せつけても、敵の数はそれ程、減っているようには見えない。
それより、これだけの数のデーモン軍団に攻められていたのに、シスターズか到着するまで、逆によく耐えれたなと感心する位だ。
「オイ、ハロハロの兵士の人数は、一体何人いたのだ?」
俺は少し気になり聞いてみた。
「1000人程です!」
「嘘だろ……
たった1000人?
化け物の大吉爺さんやハラ·キリさんがいたとしても、1000人の兵士では、ざっと見ても何十万人もいるデーモン軍団を抑えるのには無理があるだろ?」
「ハロハロ城塞都市の全ての兵士達は、ジゲン流の道場で鍛えられていますので、普通の城塞都市の兵士と比べ相当強いと思いますが、私の見立てでは、デーモン軍団はまだ、本気を出していないように見受けられます」
そりゃそうだろ。
今攻めてきているデーモン達は、完全に下っ端だ。
わざとやっているのか、見えない程の奥の方にいるデーモン達が、恐ろしい程の魔素を漂わせているのだ。
「完全に舐められているな……
ちょっと頭にきたので、姫、やってしまいなさい!」
「ハイなのです!」
ウッ!!
姫のいつもの重苦しい重量魔法が、デーモン軍団だけに使っている筈なのに、味方の俺にまで、少し影響が出ている。
デーモン軍団が広範囲に展開しているので、いつもより強めなのだろう。
突然、ハロハロ城塞都市の回りを、縦横無尽にカラスの様に飛んでいたデーモン達が、バタバタと地面に、墜落していく。
一瞬にして、デーモンのせいで真昼なのに、薄暗くなっていたハロハロ城塞都市の空が明るく開けた。
俺の隣を見ると、案内役の兵士が片膝をついている。
直接では無いが、あれ程の姫の禍々しい闘気をくらって膝をつくぐらいで済んでいるとは、さすが大吉爺さんやハラ·キリに日々鍛えられているだけはあるな。
「見晴らしがよくなったのニャ!」
ブリトニーが、空に駆け上がってはしゃいでいる。
見ただけで、ジゲン流の空中闊歩術を体得してしまったようだ……
「姫様! 来ておられたのですか! 爺は、闘いに夢中で気付かなかったですわい!
もう、現役じゃないので、耄碌しているようですじゃ!」
大吉爺さんは、姫の元にやってきて、片膝を付いて臣下の礼をとる。
続けてハラ·キリや、メリル達もやってきて、同じ様に片膝を付き臣下の礼をとった。
姫は、大吉爺さん達が傷ついているのを見て、回復魔法をかける。
「おおおー! 姫様、また腕を上げたようですな!
傷だけではなく、また10歳くらい若返ったようですじゃ!」
姫が大吉爺さんに褒められて、何やら嬉しそうに、モジモジしながらハニカンでいる。
大吉爺さんが、ジジイで助かった。
絶対に大吉爺さんが若かったら、姫は変態ロリコン大魔王の俺なんかより、強くて優しい大吉爺さんに惚れていたであろう。
大吉爺さんが、姫の回復魔法で若返るというなら、姫が大吉爺さんにかける回復魔法を制限しないとならないな。
「みんな、危ない!!」
アンちゃんが突然叫ぶ。
チュドン!!
アンちゃんの目線の先の音が鳴った方を見ると、遠くの方に待機していたデーモン軍団の一団の中から、一閃の光が見えた。
アンちゃんは俺達目掛けて飛んでくる、高密度な魔素で練られた、光のレイルガンの様な攻撃を受け止めようと大盾を構える。
ドッカーーン!!
アンちゃんは何とか大盾で攻撃を受け止めたが、完全には受け止められず、大盾をずらし、光のレールガンを上空に逃がす。
ハロハロの城塞都市に、天空まで届きそうな、1本の光の柱が立った。
「成程、あれが初代様に仕えたと言われる色欲のアスモデウスじゃな。
伝説としてしか聞いた事は無かったのじゃが、流石は初代様じゃわい!
トンデモない化け物を使役しておったようじゃな!」
大吉爺さんが、光のレールガンが飛んで来た方向を見ながら、呟いたのだった。
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