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128. 支配者
しおりを挟む「フム、3秒遅刻じゃな。
『鷹の爪』団長、ハラ·サキよ。何か弁明があれば、聞こうじゃないか」
ブリジアが冷たい目をしながら、腹割きとかいう、ちょっと怖い名前の女剣士に、問いかける。
「ダンジョン探索に夢中になり過ぎて、遅れちゃいました。
すみません!」
ハラダ家の分家、ハラ家の女剣士は、潔く頭を下げた。
「それでは、解っているとは思うが、妾の前に並べ!」
ギルドランキング第3位、『鷹の爪』の面々は、ブルブル震えながら、ブリジアの前に並ぶ。
「歯を食いしばれ!」
「「「ハイ!」」」
パチン! パチン! パチン! パチン!
ズドドドドドドドドドォォ……ン!
『鷹の爪』の面々は、壁まで吹っ飛ばされて、全員白目を向いて、気絶してしまった。
俺は急いで、『鷹の爪』の皆さんの所に向かう。
『鷹の爪』は、『犬の肉球』のお得意様なのだ。
シャンティさんにも、冒険者ギルド会議が終わった後、エリスのポーションの納品をお願いされている。
俺は、『鷹の爪』に納品予定のエリスポーションを、『鷹の爪』の皆様方に、しっかり、一人一本づつ使って復活させた。
「「「ありがとうございます!」」」
俺は、復活した『鷹の爪』の皆さんに、お礼をされる。
「いえいえ、元々、『鷹の爪』の皆様に納品する予定のポーションなので、お構いなく!」と、俺は、丁重に お得意様である『鷹の爪』の皆さんに、頭を下げた。
「成程。どこの優しい人かと思ったら、エリスさんの息子さんでありましたか!
私は、『鷹の爪』団長、ハラ·サキです!
以後、よろしくお願いします!」
流石は、未攻略ダンジョン攻略ジャンキー集団の『鷹の爪』である。
あれ程、無慈悲なブリジアのデコピンを食らったというのに、もう何事でも無かったように、元気に復活している。
何せ、全員、頭蓋骨陥没の大怪我を負っていたのだ。
トラウマになっても、おかしくないレベルだというのに……
「それでは、改めて、冒険者ギルド会議の開催を宣言する!」
ブリジアが、仕切り直して、冒険者ギルド会議が始まった。
冒険者ギルド会議では、予算や冒険者ギルドの運営についてなど、様々な議題が上がり、それについて話し合いや多数決で、次々にその場で決めて行くスタイルである。
そして、今回の会議での一番の課題は、『鉄血の乙女』が、管理しているという世界樹のダンジョンの処遇についてだ。
この議題は、『鉄血の乙女』が議題に出した訳では無く、なんとサンアリが出した議題である。
サンアリが言うには、世界樹は、世界の宝なので、冒険者ギルドとしては、保護していかないといけないと言う事らしい。
そして、『鉄血の乙女』は、世界樹の妖精と、信頼関係を結んでいるので、管理は今まで通り『鉄血の乙女』がしていくべきだ。という提案である。
色々、話し合った結果、従来通り、世界樹のダンジョンは、『鉄血の乙女』が管理する事になり、世界樹のダンジョンは冒険者ギルドの保護区になると決定した。
勿論、世界樹の森で採れるフルーツなどは、世界樹のダンジョンを攻略した『鉄血の乙女』の所有物になる。
一応、多数決となったが、議題を出したのが『犬の尻尾』という事になるので、配下ギルドの『カワウソの牙』、『シルバーウルフ』、『プッシーキャット』が賛成し、勿論『鉄血の乙女』も賛成する。
そして、俺達『犬の肉球』も、この議題に賛成したので、『三日月旅団』、『鷹の爪』、『フレシア』も、賛成に回った。
何故、この3ギルドが、『犬の肉球』に賛同するかと言うと、3ギルド全てが、エリスポーションを、『犬の肉球』から仕入れているに他ならない。
結局の所、死んだ人が30分以内に生き返るポーションを、どこから仕入れるかによって、『犬の肉球』か『犬の尻尾』のどちらに付くか決まるシステムである。
どうしても、ギルドランキング10位入りする為には、S5以上の未攻略ダンジョンを攻略するしか無い。
S5以上の未攻略ダンジョンには、必ず、死の魔法を使う宝箱の魔物が現れる。
そうすると、必然的に、エリスのポーションか、姫ポーションが必要になると言う事だ。
400年前は、まだS5以上の未攻略ダンジョンを攻略した事があったのは、実質『鷹の爪』と『犬の肉球』だけだった。
エリスの登場によって、S5以上の未攻略ダンジョンが攻略出来るようになったという訳だ。
そして、現在、実力さえあれば、誰でも未攻略ダンジョンを攻略できる時代になっている。
どうにかして、エリスポーションか、姫ポーションを手に入れさえすれば良いのだ。
その為、冒険者ギルド会議では、奇跡のポーションを生産できる『犬の肉球』と、『犬の尻尾』の存在感が、益々増していったという訳だ。
しかしながら、現在、『犬の肉球』の団長は、元『犬の尻尾』の団長だった大魔王ゴトウ·サイトが転生したサトウ·アレン。
即ち、俺である。
という事は、現在、冒険者ギルド会議は、完全に俺の支配下に入っているという事だ。
『フフフフフ。400年振りに復活したら、何もせずに、冒険者ギルドを支配下に収めてしまっていたぞ!』
俺は、この世界樹の多数決をした時、思わず笑いがこぼれてしまった。
「マスターなら、当然なのです!」
案の定、姫が、俺の心を勝手に読んだのは、今更言うまでも無いだろう。
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