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134. チンコスライス

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 冒険者ギルド会議の前日、アナ達は、冒険者ギルド会議が行われるムササビ自治国家に前入りした。

 サンアリさんの情報によると、朝の冒険者ギルド本部は、信じられない程、渋滞するそうなのだ。

 アナ達は新参者なので、冒険者ギルド会議に遅れる訳にはいかない。
 サンアリさんに紹介してもらった宿屋に泊まり、早朝の5時から冒険者ギルド本部の正門玄関が開くのを待つのだった。

 そして、アナ達と考える事が同じ者達もいる。
 今回、アナ達と同様にギルド会議入りした『ドックファイト』の皆さんだ。

 一応、今回、新たに冒険者ギルド会議入りした『ドックファイト』の情報は仕入れている。
 西の大陸『静寂の森』に住む犬耳族で構成されたギルドであるという事だ。

 犬耳族の青年が、4人。

 絶対に『ドックファイト』で、間違い無い。

 しかし、『ドックファイト』の皆さんは、アナ達の事を気にしている様子なのだが、アナ達に喋りかける素振りをみせない。

 チラチラと見てくるのだが、絶対に近づいてこないのだ。

 絶妙な距離を保って、様子を伺われている。

 時間も経過し、他の冒険者達も、冒険者ギルド本部の開門に合わせて、続々と集まってきているのだが、誰もアナ達『鉄血の乙女』に近づいて来る者がいない。

 アナ達は、正門の目の前にいるのだが、アナ達の周り5メートルには、ポッカリと空間が拡がっている。

『もしや、私達恐れられている?』
 アナが、冒険者の方に目線を向けると、皆、サッと、目線を外すのだ。

「アナ先生。どうやら僕達、恐れられているようですね……」

 土着の悪魔のエーサクが、話し掛けてきた。

「エー君も、そう思う?」

「多分、僕とビー子とクモが怖がれてるんだと思います」

「確かに、土着の悪魔やバリバリのSS級の女郎蜘蛛が所属しているギルドなんて、他にないからね……」

 アナは、正論を口にする。

「僕もここまで、怖がられるなんて思っても見ませんでした……
 多分、エーバルで皆が優しく接してくれたのは、人気者のアナ先生のお陰だったんですね」

「そんな事は無い。エー君の人柄だよ。
 君は、エーバルの人達から好かれているじゃないか」

「やはり、アナ先生のお陰だと思います。
 なにせ僕は、この世界で心底嫌われている土着の悪魔ですから、アナ先生が居なかったら多分、エーバル城塞都市にも入れなかったでしょう。
 普通に悪い魔物として、討伐されていた筈です……」

「そんな事、無い!
 エー君は、私が生涯を捧げて仕えるに足る人物だよ!
 そんな、訳の分からない事を言う者など、この私が、エー君の騎士の名に掛けて、叩き切ってやる!」
 アナは、何故か頭に血が登り、愛刀の『白虎』を抜刀する。

「うわっ! 土着の悪魔と一緒に居る女騎士が抜刀したぞ!」

 冒険者ギルド本部の正門付近で、少し騒ぎが起こる。

「アナ先生! 刀を鞘にしまって下さい!」

 エーサクが、慌ててアナを諌める。

「すまぬ。エー君。
 今日は、剣神ビクトル·クロムウェルとの決戦の日なので、少し興奮しやすくなっているようだ」

「そうですよ! こんな所で騒ぎを起こしたら、決戦どころでは有りませんよ!」

 エーサクは、少し怒っているようだ。

「アナぁ~大丈夫?」

「大丈夫クモ?」

 ビー子とクモも、心配してくれている。

 そうこうしていると、冒険者ギルド本部の正門が開いた。
 アナ先生が、抜刀して少し騒ぎになっていたが、開門すると、何事も無かったように、みんな我先にと冒険者ギルド本部の建物に走って行く。

 冒険者ギルド本部の朝は戦場だ。
 どの冒険者も、少しでも割の良いクエストをゲットしようと、必死なのだ。

 アナ達も、よく分からないが必死に走り、冒険者ギルドの受付に到着した。

「すみません! 冒険者ギルド会議に来た『鉄血の乙女』と申しますが?」と、アナが受付嬢に言うと、エレベーターを使って3階に行くようにと指示された。

 言われた通り、エレベーターで3階に降りると、30畳ほどのエントランスが拡がっていた。

 中には既に、『ドックファイト』の皆さんが、豪華なロココ調のソファーに座って、寛いでいた。

 アナ達が乗ったエレベーターが開いた瞬間、こちらをチラッと見たが、直ぐに視線を外された。
 新たに、冒険者ギルド会議入りした新人同士、仲良くした方が良いと思うのだが、如何せん、アナ達は見た目が怖すぎるので、避けられてしまっているようである。

 そうこうしていると、エレベーターが開く。

「フフフフフ、ちゃんと、来ているようだニャ」
 エレベーターの中から、メイド服を着た超絶美少女の猫耳族の少女を先頭に、如何にも輩の猫耳娘の集団が登場した。

「オイ! お前ら!
 ブリトニーの姉御の登場なのニャ!
 直ぐに、整列しろ!」

 猫耳軍団のNo.2と思われる、眼帯猫耳娘が、怒声を上げる。

 アナ達『鉄血の乙女』と、『ドックファイト』は、急いでメイド服を着た猫耳族の少女の前に整列する。

 従わないという選択肢など、無いのだ。

 冒険者なら誰もが知っている、メイド服を着た猫耳族の少女。ブリトニー·ゴトウ·ロマンチック。

 そして、そのブリトニーの数々の都市伝説。

 8歳の時に、家に押し入った野党を返り討ちにして、腹を切り裂き、中から内蔵を取り出して、母親にこれでソーセージを作ってくれと言ったとか。

 12歳で、闘気も使えないのに、未攻略のSSダンジョンをソロで攻略したとか。

 尚且つ、ダンジョンから出てくると、いつもで全身血だらけだったとか。

 チンコスライスという鬼畜技を生み出して、300人以上の巨根をスライスしてきたとか。

 全ての噂が、全部鳥肌モノなのだ。
 そんなヤバイ人物に、逆らう者など居ない。

「ん!? そこの悪魔! お前、中々のイチモツを持ってるのニャ!
 前にでるのニャ!」

 エーサクが、ブリトニーに指名されて、真っ青な顔をしながらも、一歩前に出る。

「ナニを立たせるのニャ!」

「む……無理です!」

「無理と言ってるのも、今の内ニャ。
 私にかかれば、誰でもイチコロなのね!」

 ブリトニーは、ニヤリとしてから、タイツ越しに、エーサクのイチモツを掴み、優しいタッチでシゴキ始める。

「アッ……」

 エーサクは突然の事に、思わず声を上げてしまう。

「どうニャ?
 こんな可愛い美少女に、ナニを触られて嬉しいだろ?」

「う……嬉しいです…アッ……」

 エーサクのイチモツは、みるみる大きくなっていく。
 このままでは、エーサクが危ない!
 完全に勃起してしまうと、ブリトニーの鬼畜技、チンコスライスの餌食になってしまう。
 アナは、急ぎ、サンアリさんに教えてもらった、取っておきの お土産を取り出す。

「待って下さい! ブリトニー様!
 私達は、サンアリ殿の知り合いです!
 後、コレをお納め下さいませ!」

 アナは慌てて、ブリトニーに、お土産を手渡す。

 アナ達は、事前にサンアリさんに、ブリトニーの事を聞かされていた。

 ブリトニーは、必ず朝早くに、冒険者ギルド本部に到着すると。

 そして、ブリトニー達より遅く来たルーキー達は、普通にシメられると。

 それから間違い無く、エーサクの巨根に気付き、チンコスライスの餌食にしようとする筈だと。

 それを回避する為には、サンアリの知り合いであると、出来るだけ早くブリトニーに伝え、尚且つ、世界樹の森で育てた、マタタビ入りのスゥイーツをお土産に持っていくと良いと助言を貰っていたのだ。

「フン! サンアリの知り合いか!
 それで、こいつは何ニャ?」

 ブリトニーは、お土産が入った箱を、怪訝な目をしながら観察する。

「マタタビのジェルが入った、チョコレートでございます!」
 アナが、平伏しながら答える。

「マタタビチョコレート?」
 ブリトニーの目が、キラリと、不気味に光る。

「左様で御座います」
 アナは、平伏を崩さず答える。

 ブリトニーは、よっぽどマタタビ好きなのか、可愛らしい尻尾をフリフリしながら、箱を開けた。

「ほ……本当ニャ! チョコが出て来たのニャ!
 早速、食べてみるのニャ!
 ニャにぃ……
 これは、ニャんという美味しさなのニャ!
 甘めのチョコレートの中に、少しクセのあるマタタビジェルがとても合って、最高のマリアージュを演出しているのニャ!」

 ブリトニーは、目をキラキラさせながら、絶叫する。

 ブリトニーは、そのままアナが渡した、大量のマタタビチョコレート無言でむしゃぶりつく。

 手下の猫耳娘達も、ブリトニーが美味しそうに食べるマタタビチョコレートに、クギ付けである。

 そして、アナ達は、ブリトニーがマタタビチョコを食べ終わるのを直立不動で待ち続けた。

「とっても美味しかったのニャ!
 お前達、確か、サンアリの知り合いとか言ってたのね。
 今回は、サンアリの顔を立てて見逃してやるのニャ!」

 どうやらエーサクの巨根は、ブリトニーの鬼畜技、チンコスライスから、なんとか守られたようであった。


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