上 下
95 / 177

95. 大森林探索

しおりを挟む
 
 ヨナンは元トップバリュー領で、グラスホッパー商会本店予定地の建設が終わったら、再び、グラスホッパー男爵領の温泉スパに戻ってきた。

「やっぱり、労働の後の温泉は、気持ちいいよな!」

『ご主人様。建設中も、普通にここに戻って来てたじゃないですか!
 というか、いつまで温泉入ってるんですか!』

 鑑定スキルが、朝湯を通り越して、昼になっても温泉スパを楽しんでるヨナンに、小言を言う。

「まあ、元トップバリュー領とグラスホッパー領は近いし、元日本人としては、温泉で長湯をするのは当然の事なんだよ!」

 そう、移動だけを考えた、超高速荷馬車なら、元トップバリュー領まで片道30分で到着しちゃうのだ。
 それもこれも、グラスホッパー領から、元トップバリュー領まで、石畳で舗装したお陰なんだけど。

 そもそも、アスカはグラスホッパー領を併合して、1つの領にしたぐらいだから。そもそもが近いのである。

『ご主人様、またダラケ病が発祥してしまいましたね』

「今は、夏休みなんだぞ。 ダラケるのは当たり前だろうがよ!
 それに、俺は1週間もぶっ続けで働いてたんだ。この世界に俺以上に働いてる奴が居るのかよ!
 たった1週間で、城塞都市1つを作り変えれる奴が居たら、見せてみろってんだ!」

 俺は、クダを巻き開き直る。
 何で、休暇中に働かなくちゃならないのだ。
 本当に、やってられないぜ。

『じゃあ、外で健康的に遊んでみては?
 ここで、食っちゃ寝ばかりしてたら不健康ですよ?』

「何しろってんだよ!」

『大森林の探索とか、 楽しいかもしれませんよ?
 なんか、リサリサさんが言ってたじゃないですか!
 奥まで探索したら変な結界があって、それ以上奥に進めなかったって!
 なんか、冒険心くすぐられません?』

「お前が、行ってみたいだけだろ!
 どうせ、ろくでもないもんだよ!
 お前も知ってるだろ? ここの大森林は、本来、帰らずの森とか言われてたんだぜ?
 イーグル辺境伯側の大森林には、魔物がウジャウジャ居るのに、こっちだけ全く何も出て来ないって、どう考えてもおかしいだろうが!」

『だからこそですよ! それだからこそ、冒険心がくすぐられるんじゃないですか!』

「そんなに行きたいなら、お前1人で行けばいいだろ!」

『ご主人様のイケズ! 僕は、スキルなんです! ご主人様が行ってくれなかったら、僕も行けないんですよ!』

 なんか、鑑定スキルがへそを曲げてしまった。
 そんなに、大森林を探索したいのか?
 まあ、鑑定スキルなので、知らない事を知りたいという欲求が、他の奴より大きいのかもしれない。

 もう、これは行くしかないだろ。
 スキルの機嫌を取るのも、ご主人様の仕事なのだ。多分……。

「嗚呼! 分かったよ! 行けばいいんだろ!」

『僕は、優しいご主人様なら、願いを叶えてくれると思ってましたよ!』

 鑑定スキルは一瞬にして機嫌がなおり、バンザイしてウキウキである。
 多分……言葉の雰囲気的に……スキルで実体ないから分かんないけど。

 てな訳で、護衛としてエリスと、暇そうにしてた、元『熊の鉄槌』のリサリサとゴンザレスを誘って行く事にした。

「ガッハッハッハッ! 久しぶりの冒険じゃわい!」

「アンタ、酒臭いのよ!」

 道すがら、ゴンザレスとリサリサが、わちゃわちゃやっている。
 まあ、2人とも元S級冒険者なので、護衛として問題無いだろう。
 まあ、エリスも居るし、元『熊の鉄槌』のメンバーが3人も居たら、何か起こった時、どんな風にも対処出来ると思うしね。

『ご主人様、エドソンさんを誘わなくて良かったんですか?
 エドソンさんも、一応、元熊の鉄槌のメンバーだったと思うんですけど?』

 鑑定スキルが聞いてくる。

「やっちまった……すっかり、エドソンが、元『熊の鉄槌』のメンバーだという事忘れてた……」

 そう。ヨナン的に、エドソンはどこまで行っても父親なのである。
 エリザベスに関しては、元『熊の鉄槌』のリーダーなので忘れないけど、エドソンに関しては、何故か忘れてしまうのだ。
 元『熊の鉄槌』と言うより、大戦の英雄としてのエドソンの方が有名だし。

「私も忘れてた」

 どうやら、クールビューティーのエリスも忘れてたようである。

「アイツは、裏切りもんだからいいのよ!
 アイツが、戦争に参加するとか言い出すから、『熊の鉄槌』は、解散する羽目になったんだし!」

 どうやら、『熊の鉄槌』の解散は、エドソンが原因だったらしい。

「しょうがないじゃろ?お前さんだって、自分の故郷が侵略されそうになったら、駆け付けるじゃろうて?」

 ゴンザレスが、リサリサを窘める。

「さあ? どうしから?というか、まだ、故郷は有るのかしら」

 リサリサって、一体何歳なのだ?
 自分の故郷の有無も、分からないなんて……。
 まあ、スマートな男と自負してる俺は、絶対に女性の年齢なんか聞かないけどね。

「久しぶりの里帰り。ウキウキ」

 なんか、クールビューティのエリスが、真顔でなんか言っている。
 ていうか?里帰り?

「アンタ?里帰りって?何言ってるのよ?」

 すかさず、ロリババアのリサリサが反応する。

「ん? 言ってなかった?大森林が生まれ故郷だって?」

「「えぇぇぇぇーー!!」」

 無口過ぎるクールビューティーエリスの発言に、俺も含めて、長年一緒に活動してきた筈の元『熊の鉄槌』のメンバー達も、全員、口をアングリ開けて驚いた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

そろそろ浮気夫に見切りをつけさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:74,856pt お気に入り:3,587

異世界転生~チート魔法でスローライフ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:1,840

異世界に子供の姿で転生し初期設定でチートを手に入れて

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:1,119

世界神様、サービスしすぎじゃないですか?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,337pt お気に入り:2,215

変態転生令嬢が強面不細工を狙う

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:567

貴方のために涙は流しません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:40,442pt お気に入り:2,825

異世界日帰り漫遊記!

BL / 連載中 24h.ポイント:468pt お気に入り:959

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:40,782pt お気に入り:35,507

女神様から同情された結果こうなった

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:8,862

処理中です...