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100. 残念女神様
しおりを挟む『女神ナルナー様の社が、やっと完成しましたね。ナルナー様は、とても社を欲しがってましたし、これはきっと、女神ナルナー様は褒めてくれますよ! 最近、この世界で、女神ナルナー様を祀る人達が少なくなってきてると嘆いてましたから!』
やっとこさ完成した、世界樹を守る城塞の中に作った、ナルナー神殿の前で、なんか、鑑定スキルが語り出す。
「社を欲しがってた? そんな話、言ってたか?」
全く聞き覚えがない、女神ナルナーとの会話内容に、ヨナンは首を傾げる。
『アッ! この部分の記憶は、僕が勝手に取捨選択して省いてました!
ご主人様の地球の記憶は膨大過ぎて、やはり全ての記憶を脳ミソにダウンロードしちゃうと、ご主人様の脳ミソが焼き切れる恐れがありましたので!』
鑑定スキルは、平然と当たり前のように言ってのける。
「女神ナルナーとの約束って、とても重要な事だろうがよ!」
『何、言ってるんですか! 僕はいつでもご主人様ファーストなんです!
女神ナルナー様なんか、二の次ですよ!』
鑑定スキルが、とても罰当たりの事を言っている。
まあ、鑑定スキルはスキルなので、神とか関係無いかもしれないけど。
俺的に、鑑定スキルは、人口知能のようなAI的なものに思えるし。よく、自分のデータベースに入ってないとか、ダウンロードするとか言うしね。
とか、なんとなく作った女神ナルナーの為の祭壇のような場所で、鑑定スキルと話してると、突然、天空から清らかな風と光が祭壇に差し込み、女神ナルナー様が、化現なされたのであった。
「遅い! 遅過ぎる! あれほど私を祀る祭壇を作ってと、念を押してたのに、一体、私の祭壇を作るのに何年掛かってるのよ!」
突然、エリスと同じ顔をした残念女神ナルナーが、祭壇の上に登場した。
「ていうか、お前、何で地上に降り立ってるんだよ!
普通、女神様は、地上になんか降り立たないもんだろうが!」
ヨナンは、売り言葉に買い言葉で、女神ナルナーに言い返す。
「それは、貴方が物凄すぎる神殿を作っちゃったせいじゃない!
この有り得ない程、物凄すぎる神殿のせいで、なんか知らないけど、弱ってた私の偉大な力が復活というか、全盛期以上の力を得てしまって、この世に具現化できちゃったのよ!」
「俺のお陰かよ!」
「そうよ! 貴方のお陰よ! ありがとね!」
残念女神ナルナーは、言葉も軽い。というか神の癖に、人に感謝の気持ちを簡単に述べていいのだろうか?全く、威厳を感じないし。
「で?女神ナルナーは、これからどうするんだ?」
「それは、折角、この世界に具現化出来たんだから、ここでしか食べれない美味しいもの食べたいわよ!
取り敢えず、公爵芋の焼き芋食べさせて!」
「なんで、公爵芋知ってるんだ?」
「それは、貴方をずっと覗き見してたに決まってるでしょ!」
まさかの、覗き見。女神の癖にゲスい。
「覗いてたのに、助けなかったのかよ!
俺が、死に戻り前、酷い目にあってたの見てたんだろ!」
ヨナンは、ゲスい女神に文句を言う。
「それは、女神の権限じゃどうする事も出来なかったのよ!」
「今みたいに地上に降りて、助けてくれれば良かっただろ!」
「それは、そんな力が無かったからと言ってんでしょ!貴方が早く私を祀る社を作ってたら、貴方の死に戻り前に、この世に化現出来たかもしれないけどね!」
「じゃあ、鑑定スキルのせいか?」
「そうね! 鑑定スキルのせいね! 私の言葉をしっかりと伝えなかったんだから!」
残念女神は、全ての責任を鑑定スキルになすり付ける。
『僕のせいじゃないですよ! そもそも僕が鑑定スキルLv.3に進化して、ご主人様の前世の記憶がゼータベースに追加されたのって、ご主人様が死に戻る僅か1週間前ですよ!
その時には、ご主人様ボロボロで、アスカに囚われてたじゃないですか!
そんな時に、女神ナルナー様の社とか、そもそも作れない状況だったんですからね!』
鑑定スキルは反論する。確かにあの時、女神ナルナーの社を作れと言われても、とてもじゃないけど作れる状況じゃなかった。
出来る事と言えば、やはり自死する事だけ。
「じゃあ、誰のせいだよ!」
『それは、回りくどいスキルを、女神ナルナー様にねだったご主人様のせいじゃないですか?
ご主人様の計画って、死に戻り前提で、絶対に失敗しない俺TUEEE目指してたんでしょ?』
「俺のせいかよ!」
「そうそう! 失敗してもいいように、死に戻りスキル欲しがったんだから、むしろ失敗して計画通りだったじゃない!流石は私のお気に入り!計画通りグッジョブね!」
残念女神ナルナーに褒められると、なんかムカつく。というか、成功など全くしてないし。
『まあ、絶対に失敗する事を読めてたご主人様は、やはり優秀ですよ!
考え方によると、自分をよく分かってたという事になりますし』
なんやかんや俺に甘々な鑑定スキルが、フォローしてくれる。というか、女神ナルナーの姿が透明がかってるように感じる。
「おい、お前、なんか薄くなってないか?」
「だから、さっきからお腹がペコペコなのよ! 早く公爵芋の焼き芋を、魔法の鞄の中から取り出しなさい!
私、貴方の鞄の中に、いつでも公爵芋の焼き芋がストックされてるって、知ってるんだからね!」
「だから、薄いって、体が痩せてとかじゃなくて、透明がかってるんだけど……」
「えっ! 何ですって! これは信仰が足りてないのよ! 早く私に祈りを捧げて! そして公爵芋の焼き芋を私にお供えするのよ!」
「信仰心が足りないと化現出来ないのか?」
ヨナンは、冷静に残念女神に質問する。
「そもそも、普通、化現なんか出来ないから!この有り得ない神殿で、たまたま化現出来ただけだから!
兎に角、お供え物と、女神ナルナー教の信者を増やすのよ!
そしたら、また、この世界に化現出来る筈だから……早く、公爵芋の石焼き芋を……!」
なんか、「公爵芋の石焼き芋を!」と、最後に叫んで、女神ナルナーは消えてしまった。
どんだけ公爵芋の石焼き芋を食べたかったのだろう。
取り敢えずヨナンは、少し悪いと思ったので、女神ナルナーの祭壇に、公爵芋の石焼き芋をお供えしたのは、言うまでもない話だった。
ーーー
なんとか100話達成!
そんな作者を称えて、次世代ファンタジーカップ投票してね! 作者の凄い励みになります。
応援ありがとうございます!
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