大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

文字の大きさ
127 / 256
第一章 ヨナン・グラスホッパー編

127. 剣鬼VS剣姫(2)

しおりを挟む
 
「チッ!重過ぎる」

 アンの連撃を全て受け止めてやろうとしてた、カレンが舌打ちを打つ。

 アンの一撃一撃が、想像以上に重かったのだ。

『力だけは、負けてるわね』

 カレンは、直ぐに頭を切り替えて、避けに専念する。
 このままアンの剣を受け続けてたら、とてもじゃないが体が持たない。
 それ程、アンの剣激は、常軌を逸した重さなのだ。

 ズドン! ズドン!

 カレンが、避けるたびに、床が裂け地響きが起こる。
 どれだけ愚直に修行したら、これほど綺麗な振りになるのだろう。
 アンの振りは、力任せの振りとは全く違う。

 その上段から振り落とされる剣撃は、空気を切り裂き地面を割る。

 カレンだからこそ、何とか、数発受け止める事が出来たが、常人なら、多分、風圧だけで体が破裂してしまうだろう。それほどの信じられいほどの圧が、木刀に込められてるのだ。

 未だに、カレンの手が痺れてるのは、その証拠。

 カレンは元より、自分が普通の人より力が有ることを知っている。
 カレンのお爺ちゃんの、イーグル辺境伯も、力持ちだったし、それがイーグル辺境伯の血筋だと教えられて育ってきた。

 そして、勿論、今まで、同年代の女の子に、力で負けた事など一度も無かった。

 それなのに、カレンより2歳年下のアンが、カレンより力強い剣撃を放ってくるのだ。

 実を言うと、そんなアンと対峙して、カレンはとてもワクワクしてる。
 だって、今迄、カレンとマトモに剣を交えることが出来る者など居なかったから。

 ん?ヨナンは?

 まあ、確かに、ヨナン・グラスホッパーは強い。

 だけれども、ヨナンの場合は、ハッキリ言って次元が違い過ぎる。
 だって、カレンは、その辺に落ちてた小枝で負けたのだから。

 それまで、カレンは、お爺ちゃんである、イーグル辺境伯にしか負けた事なかったのに。

 ヨナンとのファーストインパクトで、始めてヨナンと剣を交えた時など、全く、ヨナンの動きが見えなかった。

 完全なる敗北。

 せめて、ヨナンの動きが分かる実力を身に付けたいのだ。最終的な目的は、ヨナンを捕まえて、自分の旦那にする為に。

 取り敢えずのカレンの目標は、本気になったヨナンを目で追えるようになる事。
 その為に、カララムダンジョンを攻略して修行したと言っても過言じゃない。

 少しでも、ヨナンの奥さんに相応しい女になる為に、ヨナンと同じように、カララムダンジョンを完全攻略しようと思ったのだ。

 そして、攻略した暁には、きっとヨナンの動きを、目で追えるようになってると。
 ヨナンを、絶対に逃がさない為には、せめて目で追える実力を身につけなければならないと。切に願ったのである。

 そして、ただただヨナンに追いつく為に、無心に魔物をぶった斬ってたら、カララムダンジョンをいつの間にか、攻略してた感じだ。多分、完全にゾーンに入ってたのだろう。

 イーグル辺境伯の血筋の女は、集中し始めると止まらない性質をしている。2徹3徹当たり前、飯を食べるのも、生理現象(オシッコやウ〇コ)まで忘れて、ただ一心に目標に向かって突き進んでしまうのだ。

 で、その結果。カララムダンジョンを攻略して凱旋したら、たまたまカララム王国学園剣術祭が開催されていて、そしてたまたま、聖剣ムラサメを持って、せっせと、剣術祭の実行委員の仕事をしてたヨナンを、その目で視認出来たのだ。

 まあ、それだけで、実は、カレンの目標だった、本気のヨナンを目で追うという目標を、達成できてたりする。

 とか、思ってたのは、昨日まで。

 昨日は、聖剣ムラサメを持って移動してたヨナンを視認する事が出来ていたのだが、今日は、全く、ヨナンを視認する事が出来なくなってしまっていたのだ。

 ヨナンが上空を飛んでるのは、気配で分かるのだが、姿は、どれだけ目を細めても見えない。

 まあ、ヨナンは、誰にも見えないように、超高速移動しながら、貧乏揺すりというか、空中を走り回ってるから仕方がないんだけど。
 だって、カレンとアンの決勝戦より、空を飛んでるヨナンの方が、目立ってしまう訳にはいけないしね。

 カレンは、実をいうと相当凹んでいる。
 カララムダンジョンを完全攻略して、相当強くなり、ヨナンの本気の動きも視認出来るようになったと思ったのだけど。
 それ以上に、ヨナンの実力が、更に更に上だった事に。

 だけれども、カレンは凹んだ反面、嬉しかったりもするのだ。

「流石は、私が認めた旦那様。私が想像してた何千倍も凄い男」と、

 そんなふうに感じてしまうのが、イーグル辺境伯の血筋の悪い所。強くて甲斐性がある男に、強く強く惹かれてしまうのだ。

 まあ、ヨナンの話は、その辺にしといて、今は、目の前のアンをどうにかしないといけない。

 ヨナン以外での、始めての好敵手。
 動きは基本に忠実。裏表が全く無い剣。
 当たれば、一撃必殺だが、当たらなければそれまで。

 アダマンタイトミスリル合金で作らた床をも破壊する、アンの一撃必殺の剣を避け続ける事、5分。やっと手の痺れが取れてきた。

『やっと、やれる』

 カレンは、木刀を強く握り締め、手が問題なく動くか確認すると、斬りかかってくるアンの剣撃を、紙一重で避け、そしてそのまま、アンの懐に潜り込み、一閃。

 ズザン!

 アンの腹を木刀で、打ち抜く。

「グフッ!」

 正に閃光。アンは、ガクッと、腹を抱えて膝を付く。

「私の勝ちね! やはり、剣貴コンビのリーダーは、この、私という事よ!」

 どうやら、どっちがリーダーになるか、未だに揉めてたようである。
 というか、アンは何か言いたそうな顔をしてるのだが、鳩尾に木刀がヒットしたようで、悶絶してマトモに話せなそうだ。

 そして、

「勝者! カレン・イーグル!」

 グロリア先生が、勝ち名乗りを上げる。

「「ウオォォォォーー!! ブラボー!!」」

「今年の優勝は、前回同様、カレン・イーグルだーー!!」

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!

「決勝戦に相応しい、戦いだったぞーー!」

「カレン姉ちゃん、スゲー!」

 観客は、決勝戦に相応しい戦いに、歓声と拍手を送る。

 まあ、ヨナン的には、スローモーションの世界で見てたので、大した戦いに見えなかったが、観客的には、見応えがあった試合だったかもしれない。

 だって、アン姉ちゃんが、アダマンタイトミスリル合金のメッチャ硬い床を、盛大に破壊尽くしてしまったので、絵柄的には、壮絶な戦いをしたように見えるしね!

 まあ、兎に角、アン姉ちゃんを怒らしたら、アダマンタイトミスリル合金をも破壊しちゃうパワーで、ボコられてしまう事が、よ~く分かった試合であった。
しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

処理中です...