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107話 -いざ、ジュエリア王国へ 15-
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「チカ」
「『浄化の結界』」
目的地手前に来た時、俺はチカに指示を出す。レインは素早くそれに呼応し、焼け焦げている村全域に魔法を掛ける。
「マスター。この村に蔓延していた状態異常系は無くなった」
「便利だよな魔法って…。んじゃ中に入るぞ」
俺の後にチカ達が続く。
「お、俺はここに…」
「マルクス。チカさん達が大丈夫といったら大丈夫なんだよ。だから私達も中に入ろう」
中に入るのを渋っていたマルクスさんであったが、やや強引にオニキスさんに連れられ村へと入った。
「…………」
村の状況は酷いの言葉に尽きる。マルクスさんが言った通り、襲撃後のままであった。家々は焼け焦げており、黒焦げの何かが道に数々転がっている。辛うじて屋根がまだ残っている家を見つけ、その中へと入る。
「…まぁベッドは無いよねぇ」
期待はして無かったが、やはり黒焦げであり辛うじて形を保っていた。地べたに寝かせるのは流石に酷いと思うのでテントを取り出しその中にレインを寝かせた。
「酷い汗…」
村に入ってからレインの容態は悪化していた。呼吸は浅く顔色も悪くなっていた。ナナは氷の魔法を使いタオルに包んで氷枕にし、ナナは空調を弄り、ローリィは村に使えそうなものが無いかを探しに出掛けた。
「兄ちゃん、俺が手伝える事は何か無いか?」
「飲み物とかを頼んでも良いですか?とりあえず必要なものがあればひとっ飛びして持ってくるんで」
「……コーラル。ここいらの薬草なんかの知識はあるか?」
「…………………確かこの村は『ルルシュ』よね?だったら周辺の地中に『アマール』って薬草があるはずだわ」
「アマールか………。ドリンクでも作ろうかと思ったが、アマールには毒性があるからな…」
「そのアマールってのは効果がある薬草なんですか?」
「あるにはあるが……ちぃと厄介な品物だ。毒抜きさえすれば毒消しなんかになる」
「それじゃ俺はそれ探してきます。地中にあるって言ってましたけど…生えない草なんですか?」
「地中には出ない……根菜みたいなやつだ。ただ、日光に弱いから見つけた時は素早く皮袋に入れなきゃなんねぇ」
「分かりました。とりあえず探してきます」
「見つける手段はあるのか?」
「探知を使えば何とかなるかと」
「…ならアマールは兄ちゃんに任せる。俺は毒抜きの準備しとく」
家屋から出て村の外へと出る。探知の魔法を地中へと広げ目的の物を探す。ただ、見たことも聞いた事も無い薬草なので見つけ次第皮袋に突っ込んでいく。
「……………えぇ?」
地中に探知を広げていると、変な物がヒットした。それは硬い何かであり、結構大きいものだった。気になったのでそこの部分に広げると、それは結構な深さまで存在しており、中には空洞もある事が分かった。
「…ダンジョンか何かかな?」
地中に埋まっており、硬い岩の様な物、そして空洞。それだけしか分からないが、ダンジョンでは無いかと俺は考える。だが、今回はダンジョンに用は無いし、ダンジョンじゃないかもしれない。ならば無駄な物に割く時間は無い。
一通り地中を掘り、アマール--ボックスに入れ名前をしっかりと確認した--を集め終わるとレインの元へと戻る。レインは未だに呼吸は浅く早い。ただ、顔色は先程よりもマシの様に見えた。
「戻りました。……マルクスさんは?」
「裏側で準備しているわ。アマールは見つかった?」
「はい。じゃマルクスさんに渡してきます」
家屋の裏に行くと簡易的な釜を作っており、水を煮ているマルクスさんがいた。
「おう。見つかったか?」
「はい。数が分からなかったんで適当に採取してきました」
「おう。……兄ちゃん、この皮袋を使い潰しても良いか?」
「??」
「皮袋ごと煮るつもりなんだが…他のモンは入ってないよな?」
「ああ、そういう事すか。大丈夫っすよ」
「んじゃ貰うぜ」
皮袋を受け取ったマルクスさんは沸騰した湯に投げ入れる。グツグツとした湯に紫色が混じり始めた。
「これは?」
「アマールの毒成分だ。……つか、めっちゃ取ってきたな」
「すいません…」
「兄ちゃん、水魔法は使えるか?」
「使えますよ」
「んならこの鍋に水を足してくれ。少しずつで良いんだが……調整は出来るか?」
「多分…」
水の初級魔法を鍋へと注ぐ。この魔法は水鉄砲の様な魔法である。威力はジョブスキルによって変化するが、大抵は使わない魔法だ。
「そんくらいで良いぞ」
マルクスさんのストップの声で魔法を止める。そして再度沸騰するまでマルクスさんは表面の水を周辺に捨てていく。
「大丈夫なんすか?そこら辺に捨てて」
「アマールの抽出した毒は飲まなければ大丈夫だ。ただ、毒成分だけを煮詰めたヤツは危険だけどな」
それからはマルクスさんのお手伝いをする。何度も水を入れ替え、紫色が出なくなるまでアマールを煮込んだ。
「……そろそろ抜けそうだな」
紫色が薄くなり始めると、マルクスさんは自分の皮袋から瓶を取り出す。
「それは?」
「色が完全に出なくなったらこの瓶にアマールを入れる。そして、沸騰した湯を入れて少しおいたら完成だ」
「へぇー…」
「酒なんかを混ぜたら最高の味になるんだが、病人には呑ませられねぇ」
「強いんすか?」
「酒が回るのが早くなるんだよ。その分、味は染み込みやすいし調理のしがいがあるけどな」
紫色が出なくなるとマルクスさんはテキパキと瓶詰めに移行する。予想以上に採取していたらしく、瓶にぎゅうぎゅう詰めになっていた。そして上から湯を入れ残ったアマールは違う瓶に詰めていた。マルクスさん曰く『備え』との事だ。
「コーラル。出来たぞ」
「ありがとう」
「チカ。レインの様子は?」
「まだ意識はハッキリとしてません。発熱は少し治まりましたが……うなされてるみたいです」
「そうか…」
「ご主人様ぁー、ちょっとこっちに来てぇー」
外からローリィの声が聞こえそこに行くと、困った顔をしたローリィがいた。
「どうした?」
「ベッドが造れないか材木を探したんだけど……見つかんなかったぁー」
「まぁ全焼してるしな……」
「それでねー?材木を探してたんだけど、ここには結構死体があるんだよ」
「黒焦げのか?」
「うん…。多分子供も居るっぽい。それでね?相談があるんだけど…」
「ん?相談?」
「ご主人様は聖魔法を使えたよね?それで、この村の死体を空に送ってあげたいなって…」
「………うん。分かった。お墓は作らなくて良いか?」
「一つだけ作ろうと思ってる。レインちゃんと関係してるのかは分からないけど、そのままにしとくのは可哀想だから…」
「…そうだな。俺も手伝うよ」
レインの事も心配であるが、俺が居ても役に立たないし、ローリィのお願いを手伝う事にした。一応チカには伝えといた。結局レインの容態は回復する事無く夕方を迎え、オニキスさんと相談してここに野営する事にした。もちろん野晒しはキツいのでコテージを出し、そこに皆で泊まる事にした。
マルクスさんは俺が出したコテージを見て『こんなモンがあるのか……。つか、最初からコレ出してレインちゃん寝かせれば良かったじゃねぇか』と小言を頂いきながら、夜を迎えるのであった。
「チカ」
「『浄化の結界』」
目的地手前に来た時、俺はチカに指示を出す。レインは素早くそれに呼応し、焼け焦げている村全域に魔法を掛ける。
「マスター。この村に蔓延していた状態異常系は無くなった」
「便利だよな魔法って…。んじゃ中に入るぞ」
俺の後にチカ達が続く。
「お、俺はここに…」
「マルクス。チカさん達が大丈夫といったら大丈夫なんだよ。だから私達も中に入ろう」
中に入るのを渋っていたマルクスさんであったが、やや強引にオニキスさんに連れられ村へと入った。
「…………」
村の状況は酷いの言葉に尽きる。マルクスさんが言った通り、襲撃後のままであった。家々は焼け焦げており、黒焦げの何かが道に数々転がっている。辛うじて屋根がまだ残っている家を見つけ、その中へと入る。
「…まぁベッドは無いよねぇ」
期待はして無かったが、やはり黒焦げであり辛うじて形を保っていた。地べたに寝かせるのは流石に酷いと思うのでテントを取り出しその中にレインを寝かせた。
「酷い汗…」
村に入ってからレインの容態は悪化していた。呼吸は浅く顔色も悪くなっていた。ナナは氷の魔法を使いタオルに包んで氷枕にし、ナナは空調を弄り、ローリィは村に使えそうなものが無いかを探しに出掛けた。
「兄ちゃん、俺が手伝える事は何か無いか?」
「飲み物とかを頼んでも良いですか?とりあえず必要なものがあればひとっ飛びして持ってくるんで」
「……コーラル。ここいらの薬草なんかの知識はあるか?」
「…………………確かこの村は『ルルシュ』よね?だったら周辺の地中に『アマール』って薬草があるはずだわ」
「アマールか………。ドリンクでも作ろうかと思ったが、アマールには毒性があるからな…」
「そのアマールってのは効果がある薬草なんですか?」
「あるにはあるが……ちぃと厄介な品物だ。毒抜きさえすれば毒消しなんかになる」
「それじゃ俺はそれ探してきます。地中にあるって言ってましたけど…生えない草なんですか?」
「地中には出ない……根菜みたいなやつだ。ただ、日光に弱いから見つけた時は素早く皮袋に入れなきゃなんねぇ」
「分かりました。とりあえず探してきます」
「見つける手段はあるのか?」
「探知を使えば何とかなるかと」
「…ならアマールは兄ちゃんに任せる。俺は毒抜きの準備しとく」
家屋から出て村の外へと出る。探知の魔法を地中へと広げ目的の物を探す。ただ、見たことも聞いた事も無い薬草なので見つけ次第皮袋に突っ込んでいく。
「……………えぇ?」
地中に探知を広げていると、変な物がヒットした。それは硬い何かであり、結構大きいものだった。気になったのでそこの部分に広げると、それは結構な深さまで存在しており、中には空洞もある事が分かった。
「…ダンジョンか何かかな?」
地中に埋まっており、硬い岩の様な物、そして空洞。それだけしか分からないが、ダンジョンでは無いかと俺は考える。だが、今回はダンジョンに用は無いし、ダンジョンじゃないかもしれない。ならば無駄な物に割く時間は無い。
一通り地中を掘り、アマール--ボックスに入れ名前をしっかりと確認した--を集め終わるとレインの元へと戻る。レインは未だに呼吸は浅く早い。ただ、顔色は先程よりもマシの様に見えた。
「戻りました。……マルクスさんは?」
「裏側で準備しているわ。アマールは見つかった?」
「はい。じゃマルクスさんに渡してきます」
家屋の裏に行くと簡易的な釜を作っており、水を煮ているマルクスさんがいた。
「おう。見つかったか?」
「はい。数が分からなかったんで適当に採取してきました」
「おう。……兄ちゃん、この皮袋を使い潰しても良いか?」
「??」
「皮袋ごと煮るつもりなんだが…他のモンは入ってないよな?」
「ああ、そういう事すか。大丈夫っすよ」
「んじゃ貰うぜ」
皮袋を受け取ったマルクスさんは沸騰した湯に投げ入れる。グツグツとした湯に紫色が混じり始めた。
「これは?」
「アマールの毒成分だ。……つか、めっちゃ取ってきたな」
「すいません…」
「兄ちゃん、水魔法は使えるか?」
「使えますよ」
「んならこの鍋に水を足してくれ。少しずつで良いんだが……調整は出来るか?」
「多分…」
水の初級魔法を鍋へと注ぐ。この魔法は水鉄砲の様な魔法である。威力はジョブスキルによって変化するが、大抵は使わない魔法だ。
「そんくらいで良いぞ」
マルクスさんのストップの声で魔法を止める。そして再度沸騰するまでマルクスさんは表面の水を周辺に捨てていく。
「大丈夫なんすか?そこら辺に捨てて」
「アマールの抽出した毒は飲まなければ大丈夫だ。ただ、毒成分だけを煮詰めたヤツは危険だけどな」
それからはマルクスさんのお手伝いをする。何度も水を入れ替え、紫色が出なくなるまでアマールを煮込んだ。
「……そろそろ抜けそうだな」
紫色が薄くなり始めると、マルクスさんは自分の皮袋から瓶を取り出す。
「それは?」
「色が完全に出なくなったらこの瓶にアマールを入れる。そして、沸騰した湯を入れて少しおいたら完成だ」
「へぇー…」
「酒なんかを混ぜたら最高の味になるんだが、病人には呑ませられねぇ」
「強いんすか?」
「酒が回るのが早くなるんだよ。その分、味は染み込みやすいし調理のしがいがあるけどな」
紫色が出なくなるとマルクスさんはテキパキと瓶詰めに移行する。予想以上に採取していたらしく、瓶にぎゅうぎゅう詰めになっていた。そして上から湯を入れ残ったアマールは違う瓶に詰めていた。マルクスさん曰く『備え』との事だ。
「コーラル。出来たぞ」
「ありがとう」
「チカ。レインの様子は?」
「まだ意識はハッキリとしてません。発熱は少し治まりましたが……うなされてるみたいです」
「そうか…」
「ご主人様ぁー、ちょっとこっちに来てぇー」
外からローリィの声が聞こえそこに行くと、困った顔をしたローリィがいた。
「どうした?」
「ベッドが造れないか材木を探したんだけど……見つかんなかったぁー」
「まぁ全焼してるしな……」
「それでねー?材木を探してたんだけど、ここには結構死体があるんだよ」
「黒焦げのか?」
「うん…。多分子供も居るっぽい。それでね?相談があるんだけど…」
「ん?相談?」
「ご主人様は聖魔法を使えたよね?それで、この村の死体を空に送ってあげたいなって…」
「………うん。分かった。お墓は作らなくて良いか?」
「一つだけ作ろうと思ってる。レインちゃんと関係してるのかは分からないけど、そのままにしとくのは可哀想だから…」
「…そうだな。俺も手伝うよ」
レインの事も心配であるが、俺が居ても役に立たないし、ローリィのお願いを手伝う事にした。一応チカには伝えといた。結局レインの容態は回復する事無く夕方を迎え、オニキスさんと相談してここに野営する事にした。もちろん野晒しはキツいのでコテージを出し、そこに皆で泊まる事にした。
マルクスさんは俺が出したコテージを見て『こんなモンがあるのか……。つか、最初からコレ出してレインちゃん寝かせれば良かったじゃねぇか』と小言を頂いきながら、夜を迎えるのであった。
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