頭が無ければ西瓜を乗せれば良いじゃない。

荒谷創

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闇の中に響き渡る

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叫び声。
耳を塞いでも、聞こえる程に。
悪い夢の様だと、国王と近衛騎士達は思った。
二度と覚めることの無い、悪夢の光景。
西瓜畑に屯するは、首の無い人々。
否、西瓜の頭を持つもの達。
「…遅かった…」

ルシーダは。いや、ルシーダであった者は、ゆらりとファリーナの方に歩み寄る。
「ひぃ!」
逃げ出そうにも、その身体は西瓜の蔓で拘束されていて、動きようも無い。
「た、助けて!誰か!!お父様!殿下ぁ!」
助けを求めても、まったくの無駄。
婚約者たる第三王子も護衛の騎士達も、なまじ剣やナイフを振り回した結果、緑のボール状に雁字搦という有り様だ。
「助けて!」
ゆっくりと近付いて来る、血染めのドレス。その首から上は、西瓜。
「来ないで…来ないで!ル、ルシーダ?私たち、友達よね?」
顔面蒼白にして、ひきつった笑みで懐柔を試みる。
ゆらり。
「い、いやぁ…来ないでぇ…」
漏らした事にも気付かず、懇願する。
ゆらゆらと近付いてきたルシーダの、西瓜頭。
ファリーナの目の前に到達した時、そこに変化が現れた。
ピシリ。
小さな音を立てて、西瓜の表面に亀裂が走る。
逆三角形の亀裂が二つ。
そしてギザギザとした、獣の口の形に。

それは、怒り。

鋭い目と、大きく裂けた口の中で、赤いものが渦を巻く。
西瓜の果肉ではない。それは、焔。
「ヒイィィィィ!」
枯れ木の様に痩せたルシーダの手が、ファリーナの両肩をしっかりと押さえる。
「助けて!!お願い!謝るから!助けて!!助けてぇ!」
泣き叫ぶファリーナの視界一杯に、地獄の焔が広がり…

バクンッ!!

暗闇が訪れた。


ドサリ。
ルシーダだったモノに頭を食われたファリーナの体が、崩れ落ちる。
「…っ!」
思わず目を伏せたのは、ファリーナの実の父親である宰相タシケーン。第三王子ライツと、側近のバクサラン侯爵子息ゼンクス。
「おのれ、おのれ!バケモノめ!よくも我が娘を!!」
怒りの声を上げる宰相。
何とか蔦の拘束を解こうともがくが、もがけばもがく程絡み付いてくる。
「くそっ!ゼンクス!なんとかしろ!!…ゼンクス?」
自らの護衛でもあるゼンクスを怒鳴り付けたライツ王子は、そのゼンクスの様子がおかしい事に気が付いた。
「あ…あ…」
「どうした…!?…そ、そんな…」
視線を辿れば、そこには立ち上がるファリーナの姿身体
その首から上は、西瓜だった。
ふらり。
ふらふら。
西瓜頭になったファリーナが、三人に向かって歩いてくる。
そして………

悲鳴が飛び交う西瓜畑から、這う這うの態で逃げ帰った国王カーク五世。
既に災厄は訪れていた。ならば、なんとか鎮めなければ、間違いなく国が滅ぶ。
「誰か、ヘルファラム伯爵家に連絡を!」
「陛下!一体、あれは何なのですか!?」
「ヘルファラム伯爵の仕業なのですか!?」
「直ぐに引き立てて…」
「違うわ馬鹿者!」
この期に及んでもまだ理解していないのかと憤慨するが、そもそも王家直系の血筋以外には『秘密』の事だ。
それが仇になった。
「ヘルファラム伯爵には、緊急故に余が直接協力を要請する!とにかく、何とか出来るとすれば伯爵だけなのだ!急げ!!」
他にもやる事は沢山ある。
カーク五世は、矢継ぎ早に指示を出し始めた。
近侍も含め動きが鈍いのは、普段指示を出すのが宰相であったからだ。
カーク五世は今まで殊更気にした事が無かったが、宰相不在の非常時となって、国王として如何に怠慢であったかを実感していた。
この危機を乗り切れなければ国が終わるかもしれないが、無事に終わったら自らを見直さなくては。

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