雨の夜、家出少女は僕を支配する

枢名ゆい

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予想外の主導権_1

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―――ん?

朝日が窓から差し込み、優斗の目を覚ました。彼は一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。そして、隣で寝息を立てる芽依の姿を見て、昨夜の出来事が鮮明に蘇ってきた。

「そうだ……」

優斗は静かに起き上がり、芽依を起こさないように気をつけながらベッドから離れた。バスルームの鏡に映る自分の顔を見て、彼は深いため息をついた。目の下にはクマができ、顔には疲労の色が浮かんでいた。

「何をやってるんだ、俺は……」

昨夜の記憶が断片的に蘇る。芽依の挑発的な言葉、彼女の積極的な行動、そして自分が彼女のペースに完全に飲み込まれていったこと。優斗は冷たい水で顔を洗い、必死に頭を冷やす。

バスルームから出ると芽依はまだ眠っていた。
バスローブが乱れ、その隙間から覗く白い肌に、優斗は再び目を奪われそうになった。彼は意識的に視線をそらし、窓際に立った。

―――今日中に彼女を家に帰すべきだ。

優斗はそう決意した。……した、はずだった。

「おはよう、優斗さん。あれ?優斗おじさん、かな♡?」

甘い声に振り返ると、芽依はベッドの上で伸びをしていた。バスローブがさらに乱れ、彼女の体の曲線が露わになる。優斗は慌てて視線をそらした。

「おはよう。あのな、今日は――――」
「お腹すいた」

芽依は優斗の言葉を遮り、無邪気な笑顔を見せた。しかし、その目には昨夜と同じ挑発的な光が宿っていた。

「ねーねー、何か食べに行こーよー。ご飯ご馳走してくれる約束でしょ」

確かに昨日、食事を奢ってやると言った手前、そして、その対価を受け取ってしまっている以上、優斗は拒否できなかった。

優斗はため息交じりに頷き、自分の服を手に取った。

「着替えるから、ちょっと向こうを向いてくれないか」

芽依はクスリと笑い、わざとらしく目を覆った。しかし、指の隙間から優斗の様子を窺っているのは明らかだった。優斗は背中を向け、急いで着替えた。

「芽依も着替えたら……」

振り返ると、芽依はすでにバスローブを脱ぎ捨て、昨日の服を身につけ始めていた。優斗は思わず目を見開いて魅入ってしまう。芽依は彼の反応を楽しむように、ゆっくりとスカートを上げ、ブラウスのボタンを留めていく。

「ほら、もっと堂々とみていいよ?優斗おじさん」

薄いピンクのレースがついた可愛らしい下着に包まれた体が目に入り、優斗は思わず見とれてしまう。下着姿のままベッドの上に座り込む姿に、優斗はなんとか視線を外すことができたものの、下半身はすぐに反応してしまう。そこに向けられる視線を感じ、芽依が意地悪そうに笑う。

「朝から元気だね」

芽依の言葉には、昨夜の情事を思い出させる色気があった。優斗は喉の渇きを感じながら、再び視線をそらした。

―――昨日のはただの気の迷いだったんだ。

自分に言い聞かせるようにして自分を説得し、優斗は芽依に向き直った。

「さあ、朝ごはんに行こうか」

二人はホテルを出て、近くのカフェに入った。芽依は優斗の隣に座り、メニューを眺めた。

「優斗さん、私、パンケーキセットがいいです」

にこにこと笑いながら注文を決める芽依を見て、優斗はため息をついた。

優斗は頷き、ウェイトレスに注文した。芽依は嬉しそうに微笑み、甲斐甲斐しくサービスの水などを取りに行く。

「ふんふーん」

鼻歌を歌いながらパンケーキを口に運ぶ芽依の姿は、年齢相応の無邪気な少女そのものに見えた。昨晩の姿が嘘のようだ。

「優斗さんもどうですか?」
「俺はいいよ」

優斗はコーヒーをすすりながら答えた。

「芽依、今日は……」

優斗は言いにくそうに口を開いた。

「家に帰ったほうがいいんじゃないか?家族が心配してるだろう」
「そうかもしれませんね」

口の周りについたクリームを舐め取った芽依はにこり、いや、にやりと笑った。

「まだ帰りたくないな。優斗お・じ・さ・んと、もっといろんなことしたいなーって♡」
「なっ……」

耳元で囁たその言葉に、優斗の心臓が高鳴った。だが、何とか平静を保ちつつ、言い聞かせるように言った。

「いいか。もうこんなことは終わりだ。家に帰れ」
「本当に?」

肩が触れるほど身を寄せ、芽依は優斗を見上げながら、するりと足に手を伸ばす。

「昨日の夜の優斗おじさん、すごく気持ちよさそうだったよ?」

芽依の指先がスーツ越しに優斗のものを撫でた。ゾクゾクと背筋が震え、優斗は思わず腰を浮かせてしまった。その様子を見た芽依はくすくすと笑う。

「それに、私だってすっごく楽しかったもん」
「ここでそんな話をするな。それに手も離せ」

指がどんどんと股間に近づき、ファスナー部分をカリカリと引っかかれる。優斗は慌てて芽依の手を抑えた。

「だから、こんなところでやめろ」
「じゃあ、どこでならいいの?」

優斗は言葉に詰まった。芽依の挑発に、彼の理性が揺らいでいく。 眼前にある柔らかそうな唇と大きな瞳に心が吸い寄せられそうになる。

「ふふっ♡。優斗さんってやっぱりおもしろいですね」

お水取ってくるねーとそのまま席を離れた芽依を見送った後、全身から汗が噴き出していた。からからになった喉に冷めたコーヒーを流し込む。

「芽依、本当に何歳なんだ?」

芽依は両手でコップを持ち、背筋を伸ばし礼儀正しく水を飲んでいる。その姿と言い、先ほどの態度と言い、声色と言い、ますます芽依のことがわからなくなる。

「秘密♪」

その答えに、優斗は眉をひそめた。

「またそれか」
「そんなのいいじゃないですか。それより今日は何して遊んでくれますか?」

芽依は話題を変え、明るい声で尋ねた。優斗は深いため息をついた。

「芽依、俺は今日仕事だ。休日出勤の予定があるんだ」

嘘だった。しかし、優斗は芽依との関係を終わらせるべきだと思っていた。

「えー、本当ですか?つまらないです」

芽依は不満そうな表情を見せた。しかし、すぐに彼女の目に蠱惑的な光が浮かぶ。

「そっか、仕方ないですよね。何時に終わりますか?」

そう言いながら芽依は自分の胸の谷間に指を這わせ、ゆっくりと下に下ろしていく。
ついつい視線を奪われてしまいそうになるのをぐっとこらえ、優斗は答えた。

「わからない。もしかしたら、遅くなるかもしれないし……」
「じゃあ、夜ならいいよね?」

舌をぺろりと出す仕草に、不覚にもドキリとしてしまった。再び芽依は優斗に身を寄せ、上目遣いで見つめてきた。

「夜ならいいでしょ?ほら、昨日の続き、したくない?」
「なっ……」

優斗はごくりと唾を飲み込んだ。心臓の音がバクバクとうるさく響き渡っていた。

「お仕事頑張った優斗おじさんへのご褒美、ちゃーんとしますから」

芽依の指がまた太ももを撫でる。それだけなのに、優斗の股間は熱を帯び始めてしまう。スラックスを履いているのが痛いくらいだった。
そのまま芽依は優斗の手に自分の手を重ね、指先で彼の手の甲を撫でた。その感触にも優斗の体が反応する。

「ね、優斗おじさん。いいでしょ?」

その問いかけに、反射的に首を縦に振ってしまっていた。

「昨日の続きをするなら、もっといいところで食事がしたいかなぁ」
「どういうことだ?」
「おにぎりも好きだけど、今度は高級レストランで食事させて」
「芽依、それは……」
「嫌なの?」
「……わかった」

優斗は自分の弱さに呆れながらも、芽依の要求を受け入れた。

「やった!」

芽依は嬉しそうに声を上げ、優斗の頬にキスをした。その仕草は、まるで純粋な少女のようだった。しかし、優斗は彼女の目に宿る狂気の光から目を離すことができなかった。
芽依は小さく微笑むと、優斗の腕をぎゅっと抱きしめた。柔らかい感触が伝わってくる。

「どこがいい?」
「銀座のフレンチレストラン!」

芽依の即答に、優斗は苦笑した。彼女は最初からそのつもりだったのだろう。

「わかった。予約を取っておく」

芽依は満足げに微笑み、残りのパンケーキを食べ終えた。

「じゃあ、夜7時に待ち合わせね」

優斗は頷いた。芽依は立ち上がり、優斗の耳元で囁いた。

「楽しみにしてるね、優斗おじさん」

その言葉だけで、昨夜のベッドの情事を思い出させる色気があった。優斗は思わず身震いした。
芽依は軽やかに歩き去り、カフェを出ていった。優斗は彼女の後ろ姿を見送りながら、自分がどれだけ彼女に翻弄されているかを痛感した。

「何をやってるんだ、俺は……」

今朝起きてから何度目かの自問をした。しかし、彼の心の奥底では、夜の約束を心待ちにしている自分がいることを否定できなかった。
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