いとこ

かなん

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学校

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「海都くん昨日は大丈夫だった~?」
朝登校してまず初めに嵐が昨日の心配をしてくれた。

「うん。貧血だったみたい」
そういって笑って言う俺に、「よかったー」と言い、話が変わる。

「来週桜が満開なんだって。クラスのみんなで花見しないかって昨日話があったんだけど、海都くんは来れる~?」

「あ、ごめん。俺来週から家の用事で休むんだ」

そう言って海都はごめんのポーズをして楽しんできてと言って笑った。

「残念だなー、じゃあ帰ってきた頃にまだ桜が咲いてたら2人で見にいこ」

そう言って笑ってくれた嵐に、ありがと、でも写真見せてくれるだけでいいよ返したところでチャイムが鳴った。

それから何事もなく週末になり、海都は準備をした。

「準備、できた?」
部屋の扉からコンコンとなってから扉が開けられ、視線を向けると芹だった。

「...うん。多分忘れ物はないと思う。」

「...じゃあ、いくか。」

そう言った2人の空気はどこか重苦しく、それでいて暗かった。

海都の大きな荷物を芹は持ってあげ、それを車の後ろに乗せる。そしてそのまま2人は後部座席に乗り込んだ。

「お願いします。」

車で待っていた相馬さんにそう言い、相馬さんは頷き車を走らせる。
その間、誰も話すことはなかった。

無言のまま車が向かった先は大きな総合病院だった。


「.....確実に悪くなってる。」

そう言った目の前の医者は引き継ぎで担当をしてくれた腕のいい医者らしい。
地元の医者は、もう数度痛みを感じたら危ないと言われ、急遽大きな病院で、それも海外で今後は対応した方がいいと言われ俺は東京に来た。

「...海都くん、君、無茶しすぎかな....このままだと17まで持つかどうか....」

そう言った医者に俺は頷いた。

「...俺、17まで静かに生きるより、もう生きていられる間やりたいことをすると決めたんです。」

そう言った俺に医者は顔を顰めた。

「....もう、君の体は限界だ。もう退院はできないと思った方がいい...」

「...はい。やりたいことしてきました。ありがとうございました。」
海都は東京に来て、たかだか数週間のみだったが、初めて制服に袖を通した。芹と同じ制服を。
普通の生活をしてみたかった。
初めて同い年の男の友人ができた。
たくさんの人と知り合った。

海都は心臓が弱かった。
そのためストレスを感じない、空気のいい島国である祖父母の家で暮らし始めた。
そして芹と出会い、恋をして、東京にも憧れた。

初めて自分が行きたい場所を見つけ、限界を前に俺は自分の体より行きたい場所に行くことを選んだ。
芹の元へ。してみたかった生活を。

「楽しかったです。俺。」

学校帰りに芹に内緒で嵐とアイスを食べに行ったことがある。
芹に内緒で嵐の弁当を貰ったこともあった。初めてあんなに味がするご飯を食べた。
卓球も楽しかった。芹は激怒だったけど。
きっとアイスも弁当も芹が知ったら怒り狂うんだろうなと想像して笑う。
でも文化祭は出たかった。芹の撮った写真も見たかったし、ポストカードも欲しかった。
自分のクラスのクイズも楽しみだった。

「...そう」
医者は静かに俺の話を聞いて、最後に少しの返事をして部屋を出て行った。

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