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グルグル1
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そして琉司を見送った後。
仕事に戻ろうとしたところで、急にトイレに行きたくなる。
でももう大貴はいないから、当然1人で行くしかなくて……
そうなってからは、みんなが帰る前に済ませてたけど。
今日は個人的な手続きで仕事を抜けたため、その分を夢中で補ってたから忘れてたのだ。
仕方なく、エレベーターと逆方向にあるトイレに向かおうとするも。
角を曲がる手前で立ち止まってしまう。
この先に何かいたらどうしよう!
それすら怖くなると、トイレのドアなんてもっと開けられない。
またまた仕方なく、なんとか我慢しよう!と引き返すも。
でもまだやる事たくさん残ってるし~、と踏み止まる。
そう、ただでさえ仕事が多いのに。
今は株主総会の後処理や、7月の人事異動の手配、そして社長就任に関わる業務で大忙しだったのだ。
そんな心情で、その場をグルグル往復して。
「どうしよう……」
思わず情けない声を漏らすも。
もう行くしかない!と気合いを入れる。
「大丈夫!お化けは出ない!
花子さんはいないっ!」
途端。
アハハ!と笑い声がして、ぎゃああ!と叫び声を上げてしまう。
「ごめんっ、驚かして」
そう角から出て来たのは。
「楓くんっ!?
なんでここにっ……」
動転しながら。
漏らすかと思った!漏らすかと思った!!
と心で叫ぶ。
「理由は後で話すから、とりあえず一緒にトイレ行こっか」
「ええっ!何でそれをっ……」
「花子さんを怖がってたから」
ああなるほど、ってじゃあ一連の挙動不審な行動もバレてるのっ?
いやあ!恥ずかしくて死んじゃうっ。
「でっ、でも別に、付いて来なくて結構よっ」
「夫婦なんだから、それくらい甘えてよ。
行こう?」と手を引かれる。
結局、それを拒む余裕はなくて……
スッキリしたあと。
色々と恥ずかしくて申し訳なくて、楓くんが待ってる廊下に出れなくなる。
でも早く出ないと大きい方だと思われちゃう!
意を決して、レストルームから出ると。
「戻ろっか」と再び手を繋がれた。
「いや汚いから!」
「え、洗ってないんだ?」
「いや洗ってるに決まってるでしょお!?」
ただイメージ的に申し訳ないからっ。
そんな私を、クックと笑う楓くん。
「~~とにかく離してっ」
「繋いでた方がいいと思うよ?
俺けっこう、見える方だから」
「えええっ!」
てことは、いるって事?
この辺にいるって事っ?
いやあ!もう残業出来ないっ。
そこで今度はアハハ!と笑われて。
え、嘘?嘘って事よねっ?
ねえお願い嘘って言って~~!
と困惑する。
「だからこれからも、俺を頼って?
いつでも、どこにいても駆け付けるから」
「っ、いちいちこんな事で頼るわけないでしょうっ?」
怖いけど、その申し出は嬉しいけどっ、これ以上楓くんに甘えられないっ。
「山下さんには頼ってたのに?」
うっ、それを言われると……
反論出来ずに口ごもると。
「やっぱりそっか」
えええ!カマ掛けだったのっ?
いやでも今までの状況と、さっきの言動からバレバレか……
とそれを思い出し。
「それより、どうしてあんな所にいたの?」
と話を変える。
「ああ実は、今だから言えるんだけど」
と語られた理由は……
なんと楓くんは、この前私が琉司に襲われて以来。
2度とそんな事が起きないように、守ってくれてたようで……
事件直後は怖くないように、なるべく一緒にいて。
財務課に行ってからは、琉司の動向の方に気をつけていたらしい。
というのも。
琉司はほとんど残業しないし、他の社員が残ってる時間は大丈夫だから。
終業1時間後に、琉司が帰ってるかチェックして。
帰ってなかったら、私の近辺で見張ろうと考えてたそうだ。
でも実際、見張る事になったのは今日が初めてらしく。
今回はすぐに助けられるように、近くで立ち聞きしていたら……
琉司が帰る事になり、急いで反対方向に隠れたのだという。
「ごめん、ストーカーみたいな真似して」
ううん、ぜんっぜんいいの!
だって私の方が何十倍もそうだから~~。
それより待って……
感激すぎて泣きそうっ。
だって普通なら出来っこないほどの、業務や恩返しに奔走してた最中。
私の事までそんなに気にかけて、人知れず守ってくれてたなんて。
あまりに優しすぎて……
守ってもらう資格すらないのに、あまりに幸せ者すぎて……
キュッと縮こまるように顔を俯けて、必死に必死に込み上げてくるものを押し殺した。
「……もしかして、引いてる?」
無言でそんな反応をする私を見て、自分まで怖がらせたと思ったのだろう。
「っっ、そうね。
もう2度とそんな真似しないで」
ごめんね、楓くん……
でももう私なんかのために、無理させたくないから。
「そう言うと思った。
だから、今じゃなきゃ言えなかった。
けどまぁ、琉司くんと和解したみたいで良かったよ。
俺は許さないけど」
ええっ!と思わず顔を上げるも。
確かに楓くんからしたら……
復讐対象の事情なんか、知らねぇよって感じだろうし。
残酷な人生を歩まされた被害者から見れば、贅沢な悩みでしかなかっただろう。
と思いきや。
「だって当たり前だろ?
これからは杏音の全てが、俺だけのものなんだから。
手を出そうとする奴は、誰だって許さない」
にわかに胸が鷲掴まれるも!
いや心臓に悪い言い方やめて~~。
それってつまり……
私の全ての株を手に入れるにあたり、その支配権を脅かしそうな奴は許さないって意味だよねぇ?
大丈夫!ちゃんと全部譲るから。
「だったら私の株も、全部あなたが所有してくれない?
そしたら社長の座は、揺るぎないものになるし」
「……確かにそうだけど、それは別に。
夫婦なんだから、わざわざ俺名義にしなくても……
贈与税だって馬鹿らしいし」
まぁ建前上そう言うわよね……
自社株の60%という莫大すぎる資産を、すんなり受け取れるわけがない。
「だとしても、会社の顔である社長のイメージは重要よ。
今の状態じゃ、私という実質的支配者に踊らされてる、形だけの社長でしかないわ。
それじゃ企業評価も下がりかねないし、ライバル社に買収を目論まれる可能性もある」
「それは、そうかもだけど……
だからって、全部俺名義にする必要はないだろ。
せめて、半分ずつでいんじゃない?」
「いいえ、全部背負ってもらうわ。
実は私、退職を考えてるの。
それを機に、一切の経営から手を引きたいのよ」
当然、「えっ」と驚く楓くん。
「何で急に……
今まであんなに頑張ってたのにっ?」
「だからよ。
ずっと復讐のために頑張って来ただけだし。
それが果たされたなら、もう頑張る必要はないわ。
これからは、私の好きに生きさせてよ」
「……わかった。
けど株の事は……」
とその先を言いためらう。
「ごめん、ここじゃあれだから、帰って話そう?
そのためにも、残業手伝うよ」
えええっ、この期に及んで何の話っ?
楓くんには、願ったり叶ったりな状況のはずなのに……
もしかして、旨い話すぎて警戒してる?
でも実際、無理もない。
親子でも5%の株すら、簡単には譲ってもらえないだろうに。
たった1年関わっただけの、契約夫婦でしかない相手に、60%にも及ぶ全ての持株を譲るなんて。
それを私から言い出すなんて、不自然に決まってた。
しかも別れる前提なら、尚更ありえない。
だから、その計画を明かすわけにはいかなかったのだ。
それはともかく。
誰も居ないと思って、けっこうなぶっちゃけトークをしてたのに。
ここじゃあれな話となると、かなりのトップシークレットに違いなくて……
まさか、本当の復讐をカミングアウトする気?
だったら私、どんな反応すればいいのっ?
そうグルグル考察するも、とりあえず。
楓くんの話を聞くためとなれば、残業の手伝いを断るわけにはいかず……
せめて少しでも負担を減らそうと、7割方で切り上げる事にした。
さらには……
「ありがとう、助かったわ」
「そう思うなら一緒に帰ろう?
車で話せるし」
そう言われたら、またしても断るわけにはいかず。
初めて一緒に退社する事になった。
「だからって、手を繋ぐ必要はないでしょおっ?」
「あるよ、危ないし」
と辺りを見回す楓くん。
いやあ!何が見えるのっ?
嘘よね?いじめという名の復讐だよねっ?
でもさすがに不安になって……
これからどうしようと、思わず半泣きになると。
「ごめん、嘘だよ」
エレベーターの中で、おでこにキスされ。
「あまりに可愛くて」
そう唇を奪われた。
そして犯されるように、口内を抉られて。
溶かされるように、その熱を絡められて。
ぐっと後頭部を押さえられて、グイとその腕の中に取り込まれる。
会社だけど密室だし、私も離れたくなくて。
淫らな水音と、甘い吐息に溺れて……
到着までの短い間で、息も絶え絶えになってしまう。
そんな私に……
「ヤバい、可愛すぎるんだけど」
エレベーターを出たところで、再びデコチューする楓くん。
「ちょっ、ここはダメ!」
さすがにエントランスは目立ちすぎる。
「わかってるよ、車まで我慢する」
仕事に戻ろうとしたところで、急にトイレに行きたくなる。
でももう大貴はいないから、当然1人で行くしかなくて……
そうなってからは、みんなが帰る前に済ませてたけど。
今日は個人的な手続きで仕事を抜けたため、その分を夢中で補ってたから忘れてたのだ。
仕方なく、エレベーターと逆方向にあるトイレに向かおうとするも。
角を曲がる手前で立ち止まってしまう。
この先に何かいたらどうしよう!
それすら怖くなると、トイレのドアなんてもっと開けられない。
またまた仕方なく、なんとか我慢しよう!と引き返すも。
でもまだやる事たくさん残ってるし~、と踏み止まる。
そう、ただでさえ仕事が多いのに。
今は株主総会の後処理や、7月の人事異動の手配、そして社長就任に関わる業務で大忙しだったのだ。
そんな心情で、その場をグルグル往復して。
「どうしよう……」
思わず情けない声を漏らすも。
もう行くしかない!と気合いを入れる。
「大丈夫!お化けは出ない!
花子さんはいないっ!」
途端。
アハハ!と笑い声がして、ぎゃああ!と叫び声を上げてしまう。
「ごめんっ、驚かして」
そう角から出て来たのは。
「楓くんっ!?
なんでここにっ……」
動転しながら。
漏らすかと思った!漏らすかと思った!!
と心で叫ぶ。
「理由は後で話すから、とりあえず一緒にトイレ行こっか」
「ええっ!何でそれをっ……」
「花子さんを怖がってたから」
ああなるほど、ってじゃあ一連の挙動不審な行動もバレてるのっ?
いやあ!恥ずかしくて死んじゃうっ。
「でっ、でも別に、付いて来なくて結構よっ」
「夫婦なんだから、それくらい甘えてよ。
行こう?」と手を引かれる。
結局、それを拒む余裕はなくて……
スッキリしたあと。
色々と恥ずかしくて申し訳なくて、楓くんが待ってる廊下に出れなくなる。
でも早く出ないと大きい方だと思われちゃう!
意を決して、レストルームから出ると。
「戻ろっか」と再び手を繋がれた。
「いや汚いから!」
「え、洗ってないんだ?」
「いや洗ってるに決まってるでしょお!?」
ただイメージ的に申し訳ないからっ。
そんな私を、クックと笑う楓くん。
「~~とにかく離してっ」
「繋いでた方がいいと思うよ?
俺けっこう、見える方だから」
「えええっ!」
てことは、いるって事?
この辺にいるって事っ?
いやあ!もう残業出来ないっ。
そこで今度はアハハ!と笑われて。
え、嘘?嘘って事よねっ?
ねえお願い嘘って言って~~!
と困惑する。
「だからこれからも、俺を頼って?
いつでも、どこにいても駆け付けるから」
「っ、いちいちこんな事で頼るわけないでしょうっ?」
怖いけど、その申し出は嬉しいけどっ、これ以上楓くんに甘えられないっ。
「山下さんには頼ってたのに?」
うっ、それを言われると……
反論出来ずに口ごもると。
「やっぱりそっか」
えええ!カマ掛けだったのっ?
いやでも今までの状況と、さっきの言動からバレバレか……
とそれを思い出し。
「それより、どうしてあんな所にいたの?」
と話を変える。
「ああ実は、今だから言えるんだけど」
と語られた理由は……
なんと楓くんは、この前私が琉司に襲われて以来。
2度とそんな事が起きないように、守ってくれてたようで……
事件直後は怖くないように、なるべく一緒にいて。
財務課に行ってからは、琉司の動向の方に気をつけていたらしい。
というのも。
琉司はほとんど残業しないし、他の社員が残ってる時間は大丈夫だから。
終業1時間後に、琉司が帰ってるかチェックして。
帰ってなかったら、私の近辺で見張ろうと考えてたそうだ。
でも実際、見張る事になったのは今日が初めてらしく。
今回はすぐに助けられるように、近くで立ち聞きしていたら……
琉司が帰る事になり、急いで反対方向に隠れたのだという。
「ごめん、ストーカーみたいな真似して」
ううん、ぜんっぜんいいの!
だって私の方が何十倍もそうだから~~。
それより待って……
感激すぎて泣きそうっ。
だって普通なら出来っこないほどの、業務や恩返しに奔走してた最中。
私の事までそんなに気にかけて、人知れず守ってくれてたなんて。
あまりに優しすぎて……
守ってもらう資格すらないのに、あまりに幸せ者すぎて……
キュッと縮こまるように顔を俯けて、必死に必死に込み上げてくるものを押し殺した。
「……もしかして、引いてる?」
無言でそんな反応をする私を見て、自分まで怖がらせたと思ったのだろう。
「っっ、そうね。
もう2度とそんな真似しないで」
ごめんね、楓くん……
でももう私なんかのために、無理させたくないから。
「そう言うと思った。
だから、今じゃなきゃ言えなかった。
けどまぁ、琉司くんと和解したみたいで良かったよ。
俺は許さないけど」
ええっ!と思わず顔を上げるも。
確かに楓くんからしたら……
復讐対象の事情なんか、知らねぇよって感じだろうし。
残酷な人生を歩まされた被害者から見れば、贅沢な悩みでしかなかっただろう。
と思いきや。
「だって当たり前だろ?
これからは杏音の全てが、俺だけのものなんだから。
手を出そうとする奴は、誰だって許さない」
にわかに胸が鷲掴まれるも!
いや心臓に悪い言い方やめて~~。
それってつまり……
私の全ての株を手に入れるにあたり、その支配権を脅かしそうな奴は許さないって意味だよねぇ?
大丈夫!ちゃんと全部譲るから。
「だったら私の株も、全部あなたが所有してくれない?
そしたら社長の座は、揺るぎないものになるし」
「……確かにそうだけど、それは別に。
夫婦なんだから、わざわざ俺名義にしなくても……
贈与税だって馬鹿らしいし」
まぁ建前上そう言うわよね……
自社株の60%という莫大すぎる資産を、すんなり受け取れるわけがない。
「だとしても、会社の顔である社長のイメージは重要よ。
今の状態じゃ、私という実質的支配者に踊らされてる、形だけの社長でしかないわ。
それじゃ企業評価も下がりかねないし、ライバル社に買収を目論まれる可能性もある」
「それは、そうかもだけど……
だからって、全部俺名義にする必要はないだろ。
せめて、半分ずつでいんじゃない?」
「いいえ、全部背負ってもらうわ。
実は私、退職を考えてるの。
それを機に、一切の経営から手を引きたいのよ」
当然、「えっ」と驚く楓くん。
「何で急に……
今まであんなに頑張ってたのにっ?」
「だからよ。
ずっと復讐のために頑張って来ただけだし。
それが果たされたなら、もう頑張る必要はないわ。
これからは、私の好きに生きさせてよ」
「……わかった。
けど株の事は……」
とその先を言いためらう。
「ごめん、ここじゃあれだから、帰って話そう?
そのためにも、残業手伝うよ」
えええっ、この期に及んで何の話っ?
楓くんには、願ったり叶ったりな状況のはずなのに……
もしかして、旨い話すぎて警戒してる?
でも実際、無理もない。
親子でも5%の株すら、簡単には譲ってもらえないだろうに。
たった1年関わっただけの、契約夫婦でしかない相手に、60%にも及ぶ全ての持株を譲るなんて。
それを私から言い出すなんて、不自然に決まってた。
しかも別れる前提なら、尚更ありえない。
だから、その計画を明かすわけにはいかなかったのだ。
それはともかく。
誰も居ないと思って、けっこうなぶっちゃけトークをしてたのに。
ここじゃあれな話となると、かなりのトップシークレットに違いなくて……
まさか、本当の復讐をカミングアウトする気?
だったら私、どんな反応すればいいのっ?
そうグルグル考察するも、とりあえず。
楓くんの話を聞くためとなれば、残業の手伝いを断るわけにはいかず……
せめて少しでも負担を減らそうと、7割方で切り上げる事にした。
さらには……
「ありがとう、助かったわ」
「そう思うなら一緒に帰ろう?
車で話せるし」
そう言われたら、またしても断るわけにはいかず。
初めて一緒に退社する事になった。
「だからって、手を繋ぐ必要はないでしょおっ?」
「あるよ、危ないし」
と辺りを見回す楓くん。
いやあ!何が見えるのっ?
嘘よね?いじめという名の復讐だよねっ?
でもさすがに不安になって……
これからどうしようと、思わず半泣きになると。
「ごめん、嘘だよ」
エレベーターの中で、おでこにキスされ。
「あまりに可愛くて」
そう唇を奪われた。
そして犯されるように、口内を抉られて。
溶かされるように、その熱を絡められて。
ぐっと後頭部を押さえられて、グイとその腕の中に取り込まれる。
会社だけど密室だし、私も離れたくなくて。
淫らな水音と、甘い吐息に溺れて……
到着までの短い間で、息も絶え絶えになってしまう。
そんな私に……
「ヤバい、可愛すぎるんだけど」
エレベーターを出たところで、再びデコチューする楓くん。
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