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ぐちゃぐちゃBー3
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重松との会話を聞かされながら……
楓くんの発言に、えええ!何でっ?と混乱しつつも。
それどころじゃなくなっていた。
私や楓くんの事を思って打ち明けた、重松の気持ちはありがたいけど……
正直、何で言っちゃうの!?と信じられなかったし。
やめてやめてお願いだから言わないで!と、泣きそうで……
途端からあまり頭に入らなかった。
長年のストーカー的な行為や、自己満な復讐代行。
そしてその事実で辛い思いをさせてしまった事や、偽装浮気で苦しめてた事が……
申し訳なくて、消えてしまいたいほどい居た堪れなくなっていた。
なのに。
「……今までずっと、苦しめててごめん」
逆に謝らせてしまう。
「俺の復讐の犠牲にして、散々辛い思いをさせて……
しかも利用しようとしたり、切り捨てようとしてたり……
ほんとにごめんっ」
「ううんっ!
私が勝手にした事だし、そうなるように仕向けてたんだしっ……
私の方が、本当にごめんなさいっ」
「だから、杏音は何も悪くないって言っただろっ?
それどころか……
ずっと一緒に戦ってくれて、ありがとうっ……」
感極まった様子で、まさかの感謝を告げられて。
ぐわりと涙が込み上げる。
「ううん私の方がっ、ずっと励まされてたし、いつだって救われてたし……
感謝してもしきれないくらいだよっ」
とそこで、ハッとする。
「じゃなくて!
勝手にそんな、ストーカーみたいな事してごめんなさいっ」
「それは俺も、お互い様だし」
お互い様?と記憶を辿って……
琉司から襲われないように、見張ってくれてたのを思い出す。
「いや楓くんはっ、私を守ってくれてただけだし」
「杏音だって、俺を見守ってくれてたんだろ?」
「それはっ、そうだけど……
年月が違いすぎるし、そのためだけじゃないし……」
そう、不純な動機もコミコミだから!
「それなら問題ないよ。
これからは俺が、一生付き纏うから」
はいっ!?
耳を疑って、驚きの目をぶつけると。
「だから杏音も、一生側にいて欲しい」
願うように、切実な目で見つめられる。
重松との会話に出てきた発言と合わさって、胸が壊れそうなくらい騒ぎ出す。
「……側にいて、いいのっ?」
恐る恐る尋ねると。
「こんなしつこく連れ戻しに来た俺に聞く?」
柔らかく吹き出す楓くん。
「っ、だって」
あまりに信じられなくて……
と戸惑った矢先。
「やっぱりごめん」
まさかの、撤回されてしまう!
と思いきや。
「強制的に側にいてもらう。
奪った人間は、奪われるべきなんだろ?
杏音は俺の心を、全部奪ったんだから。
杏音の心も、これから全部奪い返す」
いや楓くんの心を全部奪うなんて恐れ多いし、そんなわけないし!
逆に私の心はとっくに全部楓くんのものだし、重松との会話で知ってるはずなのに……
どんな解釈になってるのっ!?
またしても混乱すると。
「資格がないのはお互い様だし。
欲しいなら何でも用意する。
けどまずは、これが資格の代わりにならないかな?」
そうスーツのポケットからリングケースを取り出して……
差し出されたそれが、開かれた。
そこには……
1千万くらいしそうな、エタニティリングが輝いていた。
「……私、に?」
「他に誰がいるんだよ」
「だって、指輪はもうあるしっ」
「それは杏音が用意したものだし、契約結婚の指輪だろ?
だから、契約が終了したら……
つまり目的を果たしたら、俺から贈るつもりだった。
それで、昨日用意出来たって連絡が入ったから、今日渡すつもりだったんだ」
「もしかして、大事な話って……」
だとしたらそんな時に、しかも約束を破って駆け落ちでいなくなるなんて……
なんて最低な女なの!と青ざめる。
「そう、この事。
だから、今聞いて?」
あああ!ごめんなさいっ、と思いながら頷くと。
「杏音が好きだ」
その不意打ちに……
魂が飛び出そうなほど衝撃を喰らう!
「確かに俺は、ずっと復讐のために生きて来たけど……
今は杏音ために生きてる。
もう杏音なしじゃ、生きられないんだ。
杏音のためなら何だってやってみせるし、必ず幸せにするって約束する。
だから……
俺と本当の夫婦になってください」
う、そ………
ありえない告白に。
ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!
思考がオーバーヒートして、胸が千切れそうなほど締め付けられる。
「……っ私で、いいのっ?」
「話聞いてた?
杏音じゃなきゃダメなんだけど。
だから、受け取ってくれなきゃ捨てるしかない」
「ええっ!でもっ……
花耶ちゃんの事は、もういいの?」
動転してつい、その秘められた気持ちを掘り出してしまうと。
楓くんはキョトンと固まる。
「は?
何で花耶が出てくるんだよ」
「だって楓くんはっ……
ずっと花耶ちゃんの事を、想って来たでしょう?」
「……それってまさか、恋愛的な意味で?」
こくりと頷くと。
「はあっ?
何でそんな発想になるんだよっ」
唖然とする楓くん。
だけどすぐに。
「あぁそうか、琉司くんの事があるからか」
と合点した様子を見せた。
「ううんっ、琉司の気持ちを知ったのは最近だし。
そうじゃなくて……
楓くんは花耶ちゃんだけに、ものすごく優しくて愛しそうな目を向けてたから」
「だけって……
まぁ実際花耶の事は特別だし、ものすごく大事に思ってるけど。
それは俺が半分育てたようなもんだから、親心的な気持ちだし。
杏音にはそれ以上の目を向けてたと思うんだけど」
いや確かに私にもそんな目を向けてくれるようになったけど、それは復讐の筋書きだと思ってたし……
それより、親心的!?
花耶ちゃんにはそういう愛情だったのっ?
あああ勝手に片思いの想像してごめんなさいっ。
「それに杏音だって。
花耶には特別優しい目を向けてたし、めちゃくちゃ大事にしてただろ?」
「それはっ、花耶ちゃんがあまりに可愛くていい子だったから。
それに、楓くんにそんな目をさせてあげられる存在だから、大事にしたいと思ったし。
私は楓くんを幸せにしてあげられないけど、花耶ちゃんならそうしてあげられると思って」
ていうか、見抜かれてたんだ……
そういえば。
ー「花耶ちゃんには、仕方なく付き合ってるだけ」
「そうは見えないけど」ー
と、そのやり取りを思い出す。
すると楓くんは片手で顔を覆って、堪らなそうに呟いた。
「そんな思いの中で、そんな勘違いした状態で、俺の要望に応えてくれてたんだ……」
その要望は、夫婦らしい行為に他ならなくて。
つまりは、そんな状況下で抱かれてたのかって事で……
しまった!
全部バレたから、枷が外れて余計な事を~~。
どう見ても、さらなる罪悪感を与えてしまってて……
慌ててそれを取り繕う。
「違うのっ!そのっ……
ちょうど私も、この歳で未経験とか恥ずかしいと思ってたしっ。
初めては楓くんに捧げたいと思ってたから、全然いいのっ」
そこで「えっ」と、驚きの顔が向けられる。
「やっぱり、初めてだったんだ?」
しまった!
焦って逆に泥沼に~~。
それじゃ余計罪悪感を感じるだろうし。
何よりそんな重いものを捧げたいと思われてたら、気持ち悪いに決まってる!
どうしよう、と戸惑ってると……
「ごめん、ますます申し訳ないんだけど……
めちゃくちゃ嬉しい」
嬉しいのぉっ?
なら、よかったけど……
「そ、そう。
じゃあこの件はもう、気にしないで?」
「……そう思うなら受け取って?
俺は、杏音じゃなきゃ幸せになれないんだ。
いくらでも人生を捧げるから、もう一度好きになってもらいたい。
一からやり直させて欲しい」
切なげで真剣な眼差しを向けられる。
今さらのように、私のためにそんな高価な物を用意してくれたんだと……
胸が詰まって。
決して手が届かないと思ってた大好きな人に、ここまで想われるなんて……
信じられないくらい奇跡で。
なにより、私が楓くんを幸せにしてあげられるなんて……
これほど嬉しい事はなくて。
ぐわりと涙が込み上げる。
そして好きになってもらいたいという言葉で、心のタガが外れて……
20年分の想いが涙と一緒に、次から次へと溢れ出す。
「一からやり直さなくても、好きだよ……
人生捧げなくたって、大好きだよっ。
ずっとずうっと好きだった。
好きで好きで大好きで、どうしようもないくらい好きだった!
私の心は、とっくに全部楓くんのものだし。
私だって、楓くんのためなら何だってやってみせるっ。
好きなの、大好きっ、どれだけ口にしたって足りないくらい好き!」
それはみっともないほど、ぐちゃぐちゃな告白で……
顔も見苦しいほど、涙まみれでぐちゃぐちゃだっただろう。
「大好き、大好きっ、めちゃくちゃ大好き!
楓くんの事が大っ好きなのっ」
そこまで言ったところで、グイと抱き寄せられて。
「俺も好きだよっ、愛してる……」
ぎゅううと、壊れそうなほど抱き締められる。
今、なんて……
心が凄まじい力で掴まれて。
ぐちゃぐちゃに掴まれまくって。
なおも追い討ちを喰らわされる。
「もう狂いそうなくらい、杏音を愛してるっ……」
心臓にトドメを刺されて。
ぶわりと、例えようもない激情がほとばしって……
ついには、声をあげて泣いてしまう。
そんな私を、愛しくて堪らないふうに撫でながら……
「一生大切にする。
俺と、本当の夫婦になってくれる?」
再びプロポーズの言葉が告げられた。
言葉にならなくて、ただただ必死に頷くと……
「ありがとうっ……」
噛み締めるように零されて。
腕をほどいて、私の手を取った楓くんから……
薬指に、眩い奇跡が授けられた。
まだどこか夢のようで……
信じられないくらい幸せすぎて……
魂が震える思いだった。
「私こそ、ありがとうっ……」
いっそう涙で溢れ返ると。
楓くんの親指に、優しく拭われて……
その唇で、愛しげに拭われた。
楓くんの発言に、えええ!何でっ?と混乱しつつも。
それどころじゃなくなっていた。
私や楓くんの事を思って打ち明けた、重松の気持ちはありがたいけど……
正直、何で言っちゃうの!?と信じられなかったし。
やめてやめてお願いだから言わないで!と、泣きそうで……
途端からあまり頭に入らなかった。
長年のストーカー的な行為や、自己満な復讐代行。
そしてその事実で辛い思いをさせてしまった事や、偽装浮気で苦しめてた事が……
申し訳なくて、消えてしまいたいほどい居た堪れなくなっていた。
なのに。
「……今までずっと、苦しめててごめん」
逆に謝らせてしまう。
「俺の復讐の犠牲にして、散々辛い思いをさせて……
しかも利用しようとしたり、切り捨てようとしてたり……
ほんとにごめんっ」
「ううんっ!
私が勝手にした事だし、そうなるように仕向けてたんだしっ……
私の方が、本当にごめんなさいっ」
「だから、杏音は何も悪くないって言っただろっ?
それどころか……
ずっと一緒に戦ってくれて、ありがとうっ……」
感極まった様子で、まさかの感謝を告げられて。
ぐわりと涙が込み上げる。
「ううん私の方がっ、ずっと励まされてたし、いつだって救われてたし……
感謝してもしきれないくらいだよっ」
とそこで、ハッとする。
「じゃなくて!
勝手にそんな、ストーカーみたいな事してごめんなさいっ」
「それは俺も、お互い様だし」
お互い様?と記憶を辿って……
琉司から襲われないように、見張ってくれてたのを思い出す。
「いや楓くんはっ、私を守ってくれてただけだし」
「杏音だって、俺を見守ってくれてたんだろ?」
「それはっ、そうだけど……
年月が違いすぎるし、そのためだけじゃないし……」
そう、不純な動機もコミコミだから!
「それなら問題ないよ。
これからは俺が、一生付き纏うから」
はいっ!?
耳を疑って、驚きの目をぶつけると。
「だから杏音も、一生側にいて欲しい」
願うように、切実な目で見つめられる。
重松との会話に出てきた発言と合わさって、胸が壊れそうなくらい騒ぎ出す。
「……側にいて、いいのっ?」
恐る恐る尋ねると。
「こんなしつこく連れ戻しに来た俺に聞く?」
柔らかく吹き出す楓くん。
「っ、だって」
あまりに信じられなくて……
と戸惑った矢先。
「やっぱりごめん」
まさかの、撤回されてしまう!
と思いきや。
「強制的に側にいてもらう。
奪った人間は、奪われるべきなんだろ?
杏音は俺の心を、全部奪ったんだから。
杏音の心も、これから全部奪い返す」
いや楓くんの心を全部奪うなんて恐れ多いし、そんなわけないし!
逆に私の心はとっくに全部楓くんのものだし、重松との会話で知ってるはずなのに……
どんな解釈になってるのっ!?
またしても混乱すると。
「資格がないのはお互い様だし。
欲しいなら何でも用意する。
けどまずは、これが資格の代わりにならないかな?」
そうスーツのポケットからリングケースを取り出して……
差し出されたそれが、開かれた。
そこには……
1千万くらいしそうな、エタニティリングが輝いていた。
「……私、に?」
「他に誰がいるんだよ」
「だって、指輪はもうあるしっ」
「それは杏音が用意したものだし、契約結婚の指輪だろ?
だから、契約が終了したら……
つまり目的を果たしたら、俺から贈るつもりだった。
それで、昨日用意出来たって連絡が入ったから、今日渡すつもりだったんだ」
「もしかして、大事な話って……」
だとしたらそんな時に、しかも約束を破って駆け落ちでいなくなるなんて……
なんて最低な女なの!と青ざめる。
「そう、この事。
だから、今聞いて?」
あああ!ごめんなさいっ、と思いながら頷くと。
「杏音が好きだ」
その不意打ちに……
魂が飛び出そうなほど衝撃を喰らう!
「確かに俺は、ずっと復讐のために生きて来たけど……
今は杏音ために生きてる。
もう杏音なしじゃ、生きられないんだ。
杏音のためなら何だってやってみせるし、必ず幸せにするって約束する。
だから……
俺と本当の夫婦になってください」
う、そ………
ありえない告白に。
ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!
思考がオーバーヒートして、胸が千切れそうなほど締め付けられる。
「……っ私で、いいのっ?」
「話聞いてた?
杏音じゃなきゃダメなんだけど。
だから、受け取ってくれなきゃ捨てるしかない」
「ええっ!でもっ……
花耶ちゃんの事は、もういいの?」
動転してつい、その秘められた気持ちを掘り出してしまうと。
楓くんはキョトンと固まる。
「は?
何で花耶が出てくるんだよ」
「だって楓くんはっ……
ずっと花耶ちゃんの事を、想って来たでしょう?」
「……それってまさか、恋愛的な意味で?」
こくりと頷くと。
「はあっ?
何でそんな発想になるんだよっ」
唖然とする楓くん。
だけどすぐに。
「あぁそうか、琉司くんの事があるからか」
と合点した様子を見せた。
「ううんっ、琉司の気持ちを知ったのは最近だし。
そうじゃなくて……
楓くんは花耶ちゃんだけに、ものすごく優しくて愛しそうな目を向けてたから」
「だけって……
まぁ実際花耶の事は特別だし、ものすごく大事に思ってるけど。
それは俺が半分育てたようなもんだから、親心的な気持ちだし。
杏音にはそれ以上の目を向けてたと思うんだけど」
いや確かに私にもそんな目を向けてくれるようになったけど、それは復讐の筋書きだと思ってたし……
それより、親心的!?
花耶ちゃんにはそういう愛情だったのっ?
あああ勝手に片思いの想像してごめんなさいっ。
「それに杏音だって。
花耶には特別優しい目を向けてたし、めちゃくちゃ大事にしてただろ?」
「それはっ、花耶ちゃんがあまりに可愛くていい子だったから。
それに、楓くんにそんな目をさせてあげられる存在だから、大事にしたいと思ったし。
私は楓くんを幸せにしてあげられないけど、花耶ちゃんならそうしてあげられると思って」
ていうか、見抜かれてたんだ……
そういえば。
ー「花耶ちゃんには、仕方なく付き合ってるだけ」
「そうは見えないけど」ー
と、そのやり取りを思い出す。
すると楓くんは片手で顔を覆って、堪らなそうに呟いた。
「そんな思いの中で、そんな勘違いした状態で、俺の要望に応えてくれてたんだ……」
その要望は、夫婦らしい行為に他ならなくて。
つまりは、そんな状況下で抱かれてたのかって事で……
しまった!
全部バレたから、枷が外れて余計な事を~~。
どう見ても、さらなる罪悪感を与えてしまってて……
慌ててそれを取り繕う。
「違うのっ!そのっ……
ちょうど私も、この歳で未経験とか恥ずかしいと思ってたしっ。
初めては楓くんに捧げたいと思ってたから、全然いいのっ」
そこで「えっ」と、驚きの顔が向けられる。
「やっぱり、初めてだったんだ?」
しまった!
焦って逆に泥沼に~~。
それじゃ余計罪悪感を感じるだろうし。
何よりそんな重いものを捧げたいと思われてたら、気持ち悪いに決まってる!
どうしよう、と戸惑ってると……
「ごめん、ますます申し訳ないんだけど……
めちゃくちゃ嬉しい」
嬉しいのぉっ?
なら、よかったけど……
「そ、そう。
じゃあこの件はもう、気にしないで?」
「……そう思うなら受け取って?
俺は、杏音じゃなきゃ幸せになれないんだ。
いくらでも人生を捧げるから、もう一度好きになってもらいたい。
一からやり直させて欲しい」
切なげで真剣な眼差しを向けられる。
今さらのように、私のためにそんな高価な物を用意してくれたんだと……
胸が詰まって。
決して手が届かないと思ってた大好きな人に、ここまで想われるなんて……
信じられないくらい奇跡で。
なにより、私が楓くんを幸せにしてあげられるなんて……
これほど嬉しい事はなくて。
ぐわりと涙が込み上げる。
そして好きになってもらいたいという言葉で、心のタガが外れて……
20年分の想いが涙と一緒に、次から次へと溢れ出す。
「一からやり直さなくても、好きだよ……
人生捧げなくたって、大好きだよっ。
ずっとずうっと好きだった。
好きで好きで大好きで、どうしようもないくらい好きだった!
私の心は、とっくに全部楓くんのものだし。
私だって、楓くんのためなら何だってやってみせるっ。
好きなの、大好きっ、どれだけ口にしたって足りないくらい好き!」
それはみっともないほど、ぐちゃぐちゃな告白で……
顔も見苦しいほど、涙まみれでぐちゃぐちゃだっただろう。
「大好き、大好きっ、めちゃくちゃ大好き!
楓くんの事が大っ好きなのっ」
そこまで言ったところで、グイと抱き寄せられて。
「俺も好きだよっ、愛してる……」
ぎゅううと、壊れそうなほど抱き締められる。
今、なんて……
心が凄まじい力で掴まれて。
ぐちゃぐちゃに掴まれまくって。
なおも追い討ちを喰らわされる。
「もう狂いそうなくらい、杏音を愛してるっ……」
心臓にトドメを刺されて。
ぶわりと、例えようもない激情がほとばしって……
ついには、声をあげて泣いてしまう。
そんな私を、愛しくて堪らないふうに撫でながら……
「一生大切にする。
俺と、本当の夫婦になってくれる?」
再びプロポーズの言葉が告げられた。
言葉にならなくて、ただただ必死に頷くと……
「ありがとうっ……」
噛み締めるように零されて。
腕をほどいて、私の手を取った楓くんから……
薬指に、眩い奇跡が授けられた。
まだどこか夢のようで……
信じられないくらい幸せすぎて……
魂が震える思いだった。
「私こそ、ありがとうっ……」
いっそう涙で溢れ返ると。
楓くんの親指に、優しく拭われて……
その唇で、愛しげに拭われた。
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