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混血系大公編:第三部
26
「やあ、いらっしゃい」
食堂に到着すると、既にヴァレさんは円テーブルの席に就いていた。
私たちが近づくとサッと立ち上がって、こちらへ歩み寄って来てくれる。
「素敵な紳士淑女ぶりだね。二人とも良く似合っている」
「恐れ入る」
「ありがとうございます」
「ふふ、もっと気楽にしていいよ。給仕の人数も最低限にしているからね」
そう言ってウィンクしてみせたヴァレさんも、今は皇族に相応しい優美な恰好だ。宵闇のような紺色のスワローテールド・コートには金糸で刺繍が入っていて、中にお揃いのベストを着ている。首元には控えめなジャボ、ブラウスとズボンは同じ白色で、靴も艶やかな白色。刺繍も飾りもたくさん入っていてとっても華やかなのに、しっかり着こなしている。
さすがヴァレさん、皇族の風格ってやつですかね。
ふわー、と見惚れていると、ヴァレさんはニコっと極上の笑みを浮かべて見せた。
か っ こ い い !!!
「さぁ食卓に就こう。すぐに食事を運ばせるからね」
「はい、楽しみです」
「ふふ。ねぇビョルン、ここからは私がエスコートしてもいいかい?」
「ああ、もちろん。俺は貴族のマナーはさっぱりだからな」
「そう?でも、シャトラと食堂に入って来た時は、様になっていたよ」
「付け焼刃だよ。彼女の支度を待っていた間、付き添いの騎士殿に教えてもらったんだ」
ああ、あのビョルンファンの騎士さんかな。彼ならきっと、嬉々として教えてくれたんだろう。
「ではありがたく。マイレディ、お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
ヴァレさんの差し出した左手に右手を乗せると、すっと持ち上げられて指にキス。前のことを思い出して一瞬ドキリとしたけれど、すぐに唇は離れていったのでホッとした。
特に意図はない、挨拶のキスなのかな。
貴族の風習には疎いから、よくわからないや。
それからヴァレさんに手を引かれ、席に案内される。ヴァレさんが椅子を引いてくれて、スカートがくしゃくしゃにならないように気をつけながら腰を下ろす。
「なるほど、スマートだな」
「こう見えて、皇族なんだよね」
「ははっ!違いない」
軽口を叩きながら、紳士二人も席についた。
私たちが席に着くと同時に、次々と食事が運ばれてきた。
まずは冷めてても大丈夫なオードブルがテーブルに並ぶ。
大皿に盛り付けられた、色とりどりの美しい料理たち。
コースのように一品ずつ出てくるのではなくて、こうしてオードブル、メイン、デザート…と数点ずつ一気に出てくるスタイルらしい。
好きなものを取って食べられるって、贅沢だし嬉しいよね。
「まずはオードブルを楽しんで。メインは、できたての最高の状態で提供されるから、お楽しみに」
給仕は最低限にしたって言ってたものね。シェフが来るんじゃなくて、皇帝自らが説明しちゃうものだから、なんだか面白くなってしまった。
「お肉もあります?」
「もちろん。楽しみにしていて」
「はい!」
ヴァレさんとそんな話をしていると、給仕さんが声を掛けてきてくれた。
「失礼いたします。英雄様、お好みのものはございますか?」
どうやら給仕さんにサーブしてもらえるようだ。ドレスの状態だと動きにくいので、至れり尽くせりでありがたい。
そして「全種類食べたいです!」と言いたいところだけれど、さすがにドン引きされるかな。ヴァレさんとビョルンは、笑ってくれそうだけれど。
「少しずつ、色々なものを食べてみたいのですが…」
「かしこまりました」
少し上品ぶって控えめに言うと、お上品な量をお皿に盛ってくれた。しまった、上品ぶり過ぎたか…。ビョルンに取り分けている量を見て、ちょっとだけ後悔する。そんな私の気持ちは丸わかりだったのか、ヴァレさんにコソっと「おかわりできるからね」と言われてしまった。ちょっと恥ずかしい。
それから雑談をしながら料理を楽しんだ。食前酒に蜂蜜酒(ミード)を出してもらい、ビョルンもご機嫌だ。
「ああ、美味い。最高だ」
「ふふ、よかったねぇビョルン。蜂蜜酒は久しぶりだっけ?」
「ああ、最近は特に手に入りにくくてな。ノルレベクの商船が滞ってるんだろう?」
「そうだよ。どうも、あちらの情勢が不穏らしくてね…」
そんな話をしていると、メインディッシュが運ばれてきた。お皿がテーブルの上に置かれ、パカリと蓋が取られる。
きゃー、待ちに待ったお肉料理!
シンプルにステーキにしたものもあれば、ローストチキン、トロトロに煮込んだ料理まで…お肉のフルコース?というくらいたくさんの料理が並べられた。
ああ、いい匂い!幸せ!
さっそく給仕さんがサーブしてくれたんだけど、先ほどの私の様子を見ていたからか何も言わずとも全種、それなりの量を盛ってくれた…。嬉しいんだけど、ちょっと気恥ずかしい。普段なら何にも気にせず、パクパク食べちゃうんだけど。ドレスアップしてるからかこう、できるだけ上品に振舞いたくなっちゃうのよね。
隣のビョルンはもっと多い量を盛られているので、相対的に控えめに見えるのが救いだけれど…。うう、気を使っちゃうな。
食堂に到着すると、既にヴァレさんは円テーブルの席に就いていた。
私たちが近づくとサッと立ち上がって、こちらへ歩み寄って来てくれる。
「素敵な紳士淑女ぶりだね。二人とも良く似合っている」
「恐れ入る」
「ありがとうございます」
「ふふ、もっと気楽にしていいよ。給仕の人数も最低限にしているからね」
そう言ってウィンクしてみせたヴァレさんも、今は皇族に相応しい優美な恰好だ。宵闇のような紺色のスワローテールド・コートには金糸で刺繍が入っていて、中にお揃いのベストを着ている。首元には控えめなジャボ、ブラウスとズボンは同じ白色で、靴も艶やかな白色。刺繍も飾りもたくさん入っていてとっても華やかなのに、しっかり着こなしている。
さすがヴァレさん、皇族の風格ってやつですかね。
ふわー、と見惚れていると、ヴァレさんはニコっと極上の笑みを浮かべて見せた。
か っ こ い い !!!
「さぁ食卓に就こう。すぐに食事を運ばせるからね」
「はい、楽しみです」
「ふふ。ねぇビョルン、ここからは私がエスコートしてもいいかい?」
「ああ、もちろん。俺は貴族のマナーはさっぱりだからな」
「そう?でも、シャトラと食堂に入って来た時は、様になっていたよ」
「付け焼刃だよ。彼女の支度を待っていた間、付き添いの騎士殿に教えてもらったんだ」
ああ、あのビョルンファンの騎士さんかな。彼ならきっと、嬉々として教えてくれたんだろう。
「ではありがたく。マイレディ、お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
ヴァレさんの差し出した左手に右手を乗せると、すっと持ち上げられて指にキス。前のことを思い出して一瞬ドキリとしたけれど、すぐに唇は離れていったのでホッとした。
特に意図はない、挨拶のキスなのかな。
貴族の風習には疎いから、よくわからないや。
それからヴァレさんに手を引かれ、席に案内される。ヴァレさんが椅子を引いてくれて、スカートがくしゃくしゃにならないように気をつけながら腰を下ろす。
「なるほど、スマートだな」
「こう見えて、皇族なんだよね」
「ははっ!違いない」
軽口を叩きながら、紳士二人も席についた。
私たちが席に着くと同時に、次々と食事が運ばれてきた。
まずは冷めてても大丈夫なオードブルがテーブルに並ぶ。
大皿に盛り付けられた、色とりどりの美しい料理たち。
コースのように一品ずつ出てくるのではなくて、こうしてオードブル、メイン、デザート…と数点ずつ一気に出てくるスタイルらしい。
好きなものを取って食べられるって、贅沢だし嬉しいよね。
「まずはオードブルを楽しんで。メインは、できたての最高の状態で提供されるから、お楽しみに」
給仕は最低限にしたって言ってたものね。シェフが来るんじゃなくて、皇帝自らが説明しちゃうものだから、なんだか面白くなってしまった。
「お肉もあります?」
「もちろん。楽しみにしていて」
「はい!」
ヴァレさんとそんな話をしていると、給仕さんが声を掛けてきてくれた。
「失礼いたします。英雄様、お好みのものはございますか?」
どうやら給仕さんにサーブしてもらえるようだ。ドレスの状態だと動きにくいので、至れり尽くせりでありがたい。
そして「全種類食べたいです!」と言いたいところだけれど、さすがにドン引きされるかな。ヴァレさんとビョルンは、笑ってくれそうだけれど。
「少しずつ、色々なものを食べてみたいのですが…」
「かしこまりました」
少し上品ぶって控えめに言うと、お上品な量をお皿に盛ってくれた。しまった、上品ぶり過ぎたか…。ビョルンに取り分けている量を見て、ちょっとだけ後悔する。そんな私の気持ちは丸わかりだったのか、ヴァレさんにコソっと「おかわりできるからね」と言われてしまった。ちょっと恥ずかしい。
それから雑談をしながら料理を楽しんだ。食前酒に蜂蜜酒(ミード)を出してもらい、ビョルンもご機嫌だ。
「ああ、美味い。最高だ」
「ふふ、よかったねぇビョルン。蜂蜜酒は久しぶりだっけ?」
「ああ、最近は特に手に入りにくくてな。ノルレベクの商船が滞ってるんだろう?」
「そうだよ。どうも、あちらの情勢が不穏らしくてね…」
そんな話をしていると、メインディッシュが運ばれてきた。お皿がテーブルの上に置かれ、パカリと蓋が取られる。
きゃー、待ちに待ったお肉料理!
シンプルにステーキにしたものもあれば、ローストチキン、トロトロに煮込んだ料理まで…お肉のフルコース?というくらいたくさんの料理が並べられた。
ああ、いい匂い!幸せ!
さっそく給仕さんがサーブしてくれたんだけど、先ほどの私の様子を見ていたからか何も言わずとも全種、それなりの量を盛ってくれた…。嬉しいんだけど、ちょっと気恥ずかしい。普段なら何にも気にせず、パクパク食べちゃうんだけど。ドレスアップしてるからかこう、できるだけ上品に振舞いたくなっちゃうのよね。
隣のビョルンはもっと多い量を盛られているので、相対的に控えめに見えるのが救いだけれど…。うう、気を使っちゃうな。
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