異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

文字の大きさ
283 / 305
混血系大公編:第三部

32

 私を誘惑しようとする、あの甘ったるくて蕩けるような声で囁かれる。  
 …これは、気軽にオッケーしちゃダメなやつよね?
「…お揃いの指輪って、なんか意味あります?」
 ビョルンたちと婚約した時、前世みたいに婚約指輪を贈るとかはなかった。結婚時に、お揃いの指輪を作るとかも特にない様子だ。
 中にはお揃いのアクセサリーを作る人もいるらしいけど、ほとんどの人がする慣習…というほどではないらしかった。
 でもこの世界では、平民と貴族・皇族ではけっこう慣習が違う。
 それに気づいたから、警戒して聞いたわけなんだけど…。
 ヴァレさんは笑みの形に目を細めたあと、私の左手をそっと取った。
「ビョルンたちにプロポーズされた時…ここに、キスされなかった?」
 そう言って、薬指の腹を彼の指で撫でられる。
 それだけなのに、撫で方がひどく官能的で。ぴくり、と私の手が反応してしまう。
「どう?」
「…されました」
 顔を見れなくて、目線を下げながら答える。
 ふっ、とヴァレさんが笑うのを、音だけで聞く。
「あれね。帝国紀初期にあった、左手の薬指には心臓に直接繋がる血管があるという考えから来ているんだよ」
 その説は、前世でも聞いたことがある。だから結婚指輪は、左手の薬指につけるのだと。
「だから夫婦になるとね、ここにお揃いの指輪をつけるんだ。…お互いの心臓と、繋がれるように」
 左手を持ち上げられ、薬指の背に、唇が押し付けられる。温かくて、柔らかい唇。
「お互いの心臓に、愛を誓うために」
 顔に血が昇り、心臓が破裂しそうなくらいに高鳴る。
 この手を、振り払うことができない。
 この思いを、断ち切ることができない。
「この指につける指輪。…作ってくれる?」
 目を逸らしたままだけど、わかる。神秘的なアースアイが、私をじっと見つめていること。
 低く甘く、愛を乞うようなその声色に。
「……考えて、おきます」
 逃げることしか、できない。
 左手の薬指に、フッと温かい息がかかった。
「…期待しておくよ」
 喜色の混じったその声に、私は目を逸らしたままうなずいた。


 そのあと、ヴァレさんはさっと話題を変えてくれた。
 でも時折目が合うと、その瞳は熱を帯びたままで。
 気まずくて、それをごまかすようにお酒が進んでしまった。
「シャトラ、大丈夫?」
「んん~…」
 いつの間にか、机に突っ伏していたみたい。
 ヴァレさんが揺すって起こそうとしてくれるけど、瞼も体も重い。
 意識はなんとか保っているけど、起きたくない。このままウトウトしていたい。気まずさもあるし。このまま寝たふりを決め込む。
「やれやれ。まったく…」
 苦笑した声が聞こえる。
 それから肩を支えられ、膝裏に手が入り、体が浮き上がる。その流れで、ヴァレさんの首元に顔を埋める。
 ベルガモットの、香水の匂い。
 ヴァレさんの匂い。
 ああ、また、匂いの記憶ができる。この匂いがしたら、こうして抱き上げられたこと、きっと思い出してしまう。
 心臓がトクトクと高鳴って、頬が熱くなる。お酒を飲んでいるから、バレないかな。
 そのまま自分の部屋の寝室へ運んでくれ、ベッドに横たえられる。布団を掛けてくれ、頭を撫でられる。
 優しい。
 そのまま去るかと思ったけれど、私の体の横に手をついた気配がした。
 ベッドが少し、沈む。
 そして唇に、柔らかいものが押し付けられる。
 少し離れて、温かい吐息。
 それからもう一度、触れる。
 触れるだけの…キス。

 少し長めにキスをしたあと、ヴァレさんは寝室から出ていった。
 ドアがパタンと閉まる音がしてから、そのまま少し待って。
 ヴァレさんの気配が完全に消えたと確信できてから、私は大きく息を吐いた。
「はぁー……」
 寝返りを打って、枕に顔を埋める。
 どうしよう、どうしたらいいのかわからない。
 ヴァレさんはどうして、こんなに私に迫って来るんだろう。
 彼は皇帝だ。この国のトップに立つ人だ。複数の妻を持つことはあっても、複数の夫のひとりになれる立場じゃないはずだ。
 なのにどうして?
 どうして、こんなに私を惑わせるの?
 どうして。
 ビョルンも、ロルフも、イスも、許可するの?
 彼らが拒否してくれれば。
 違う。
 どうして。

 私は、拒否しないの?

「……ッ」
 自分が情けなくて、涙が滲んだ。
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。 そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!? 貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です