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混血系大公編:第三部
33
次の日。
朝から作業に集中して、昼前にはヴァレさんの部屋の防犯システムがほぼ完成した。
いやー、悩ましいことがある時は仕事に打ち込むにかぎるね!その間は悩みを忘れられるもの。
昼食は作業の合間にささっと済ませられるよう、軽食を用意してもらっているんだけど…今日はなんと、大好きなサンドイッチだった!
システムの完成まであと一息、というところではあったけれど。ちょうどキリがついたので、ゆっくり味わうことにした。
…いやー、ささっと済ませていいレベルのサンドイッチじゃなかったわ…。一口噛むごとにジューシーなお肉のうまみが広がり、それにシャキッとしたレタスとトマトが歯ごたえを演出、チーズのコクとスパイシーなソースがさらに味に彩りを添え…まぁ早い話がとにかく美味しい!美味しすぎる!!
「お気に召されましたか?」
「はい、ものすごく!私サンドイッチ大好きなんですけど、今まで食べた中でも一番かもしれません」
「それはよろしゅうございました。紅茶もいかがですか?」
「いただきます!」
そしてメアリさんが淹れてくれた紅茶が、これまた美味しい!
「ああ、やっぱりメアリさんの淹れてくれた紅茶は美味しい!」
「ありがとうございます」
ニコリと微笑んでくれたメアリさんに見守られながら、ランチを堪能して…ハッと気づく。
…なんだか私、皇城の美味しい料理にしっかり胃袋を掴まれてない…?
いかんいかん、ここに住むわけじゃないんだから、気をしっかり持たなきゃね。
それからランチを終え、最後の仕上げを行った。
最初はヴァレさんの部屋だけに防犯システムを組むつもりだったんだけど。時間もさほどかからなかったため、ヴァレさんの部屋と私の部屋の、それぞれの窓とドアに感知ゲートを設置することになった。
真ん中の部屋で繋がっているわけだから、その方が安全性が高いしね。
こちらは動力となる魔石を組み込めば、すぐに作動させることができる状態にしておいた。
ちなみにキーホルダーに組み込むキーは、既に準備済みだ。私の部屋にも防犯システムを組んだので、急遽キーも二つ準備してもらったんだけど…既製品の魔石付きキーホルダーなので、すぐに準備してもらえた。
これらにささっと附術を刻み、キーは完成。
普段は執事長とメイド長が一つずつ所持しておいて、その日の当番が台帳に記名して借りる…という手順で管理するそうだ。使用方法や注意点なんかも、全部説明してあるから問題なく使えると思う。
そして昼下がりになると、一対の指輪が届いた。王室御用達の細工師が作成したらしい、細かな意匠が施された美しい指輪が、リングケースの中で並んでいる。
侍従長さんが恭しく捧げ持ったそれを見て、私は顔を引きつらせた。
…ねぇこれ、元々準備してなかった…?
昨日の今日で準備できるとは思えないんだけど。新たな悩み事きたわー。
「じゅ、準備が早いですね…」
思わず呟くと、侍従長さんの後ろに控えていた女性がぺこりと頭を下げた。服装から見て、どうやら彼女が細工師さんらしい。
「昨夜陛下より勅命がございまして。元々土台はできておりまして、細工のみでしたので半日いただければ充分でございます」
つまり徹夜コースだったと。お疲れ様でございます。
「でもサイズなんて、計ってませんよね?」
「問題ございません!サイズ情報はすでにいただいて…」
細工師さんがそう言いかけたところで、侍従長さんがゴホンと咳ばらいをする。
「あっ、…あっ!あのその、一般的なサイズですので、一度つけていただければと、はい」
……仕立て屋ァ!
「細工はシンプルに仕上げましたので、ここからさらに凝った意匠にすることもできます。そちらは陛下とご相談いただければと」
「はは…」
私は自分の分の指輪を手に取って、まじまじと確認する。
帝国の紋章は、大樹と薔薇をモチーフにしたものだ。中央に剣を抱いた大樹を中心にして周囲を茨の蔦が彩り、背後に盾を背負っているようなデザイン。
それにちなんでか、指輪には茨の蔦と一輪の咲いた薔薇の意匠が施されている。
シンプルだけど、だからこそ美しい、完成されたデザインだ。
「これで充分です。附術を刻む余地もないといけないですし」
「ああ、確かに!ではこのままで。魔石も装着済みですが、色変更も可能でございますのでお申し付けください」
「はぁ…」
答えながら、自分の分の指輪をつけてみる。
「わぁ、ぴったりですね!」
そりゃそうでしょうね。もうなんでもいいっすわ…。
私がぐったりしてきたのがわかったのかな。細工師さんはまだ何か話したそうだったけど、侍従長さんが促して連れて行ってくれた。
やれやれ。
私は自分の手に残った、一対の指輪を改めて眺める。
ああもう、ヴァレさんてば…。
強引に迫っては来ないくせに、逃げ道はガンガン塞いで来るのなんなの?
こめかみをもみほぐしていると、メアリさんから声がかかる。
「英雄様、紅茶をお淹れいたしましょうか?」
「あ、はい、ぜひ」
朝からずっと作業続きだったし、休憩した方がいいよね。
「お茶菓子も準備いたしますね」
「わ、助かります」
こうして美味しい紅茶とお茶菓子いただいた私は、気合を入れ直して指輪の刻印に取り掛かったのだ。
朝から作業に集中して、昼前にはヴァレさんの部屋の防犯システムがほぼ完成した。
いやー、悩ましいことがある時は仕事に打ち込むにかぎるね!その間は悩みを忘れられるもの。
昼食は作業の合間にささっと済ませられるよう、軽食を用意してもらっているんだけど…今日はなんと、大好きなサンドイッチだった!
システムの完成まであと一息、というところではあったけれど。ちょうどキリがついたので、ゆっくり味わうことにした。
…いやー、ささっと済ませていいレベルのサンドイッチじゃなかったわ…。一口噛むごとにジューシーなお肉のうまみが広がり、それにシャキッとしたレタスとトマトが歯ごたえを演出、チーズのコクとスパイシーなソースがさらに味に彩りを添え…まぁ早い話がとにかく美味しい!美味しすぎる!!
「お気に召されましたか?」
「はい、ものすごく!私サンドイッチ大好きなんですけど、今まで食べた中でも一番かもしれません」
「それはよろしゅうございました。紅茶もいかがですか?」
「いただきます!」
そしてメアリさんが淹れてくれた紅茶が、これまた美味しい!
「ああ、やっぱりメアリさんの淹れてくれた紅茶は美味しい!」
「ありがとうございます」
ニコリと微笑んでくれたメアリさんに見守られながら、ランチを堪能して…ハッと気づく。
…なんだか私、皇城の美味しい料理にしっかり胃袋を掴まれてない…?
いかんいかん、ここに住むわけじゃないんだから、気をしっかり持たなきゃね。
それからランチを終え、最後の仕上げを行った。
最初はヴァレさんの部屋だけに防犯システムを組むつもりだったんだけど。時間もさほどかからなかったため、ヴァレさんの部屋と私の部屋の、それぞれの窓とドアに感知ゲートを設置することになった。
真ん中の部屋で繋がっているわけだから、その方が安全性が高いしね。
こちらは動力となる魔石を組み込めば、すぐに作動させることができる状態にしておいた。
ちなみにキーホルダーに組み込むキーは、既に準備済みだ。私の部屋にも防犯システムを組んだので、急遽キーも二つ準備してもらったんだけど…既製品の魔石付きキーホルダーなので、すぐに準備してもらえた。
これらにささっと附術を刻み、キーは完成。
普段は執事長とメイド長が一つずつ所持しておいて、その日の当番が台帳に記名して借りる…という手順で管理するそうだ。使用方法や注意点なんかも、全部説明してあるから問題なく使えると思う。
そして昼下がりになると、一対の指輪が届いた。王室御用達の細工師が作成したらしい、細かな意匠が施された美しい指輪が、リングケースの中で並んでいる。
侍従長さんが恭しく捧げ持ったそれを見て、私は顔を引きつらせた。
…ねぇこれ、元々準備してなかった…?
昨日の今日で準備できるとは思えないんだけど。新たな悩み事きたわー。
「じゅ、準備が早いですね…」
思わず呟くと、侍従長さんの後ろに控えていた女性がぺこりと頭を下げた。服装から見て、どうやら彼女が細工師さんらしい。
「昨夜陛下より勅命がございまして。元々土台はできておりまして、細工のみでしたので半日いただければ充分でございます」
つまり徹夜コースだったと。お疲れ様でございます。
「でもサイズなんて、計ってませんよね?」
「問題ございません!サイズ情報はすでにいただいて…」
細工師さんがそう言いかけたところで、侍従長さんがゴホンと咳ばらいをする。
「あっ、…あっ!あのその、一般的なサイズですので、一度つけていただければと、はい」
……仕立て屋ァ!
「細工はシンプルに仕上げましたので、ここからさらに凝った意匠にすることもできます。そちらは陛下とご相談いただければと」
「はは…」
私は自分の分の指輪を手に取って、まじまじと確認する。
帝国の紋章は、大樹と薔薇をモチーフにしたものだ。中央に剣を抱いた大樹を中心にして周囲を茨の蔦が彩り、背後に盾を背負っているようなデザイン。
それにちなんでか、指輪には茨の蔦と一輪の咲いた薔薇の意匠が施されている。
シンプルだけど、だからこそ美しい、完成されたデザインだ。
「これで充分です。附術を刻む余地もないといけないですし」
「ああ、確かに!ではこのままで。魔石も装着済みですが、色変更も可能でございますのでお申し付けください」
「はぁ…」
答えながら、自分の分の指輪をつけてみる。
「わぁ、ぴったりですね!」
そりゃそうでしょうね。もうなんでもいいっすわ…。
私がぐったりしてきたのがわかったのかな。細工師さんはまだ何か話したそうだったけど、侍従長さんが促して連れて行ってくれた。
やれやれ。
私は自分の手に残った、一対の指輪を改めて眺める。
ああもう、ヴァレさんてば…。
強引に迫っては来ないくせに、逃げ道はガンガン塞いで来るのなんなの?
こめかみをもみほぐしていると、メアリさんから声がかかる。
「英雄様、紅茶をお淹れいたしましょうか?」
「あ、はい、ぜひ」
朝からずっと作業続きだったし、休憩した方がいいよね。
「お茶菓子も準備いたしますね」
「わ、助かります」
こうして美味しい紅茶とお茶菓子いただいた私は、気合を入れ直して指輪の刻印に取り掛かったのだ。
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