異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

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中東系エルフ魔術師編

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 途中でジョッキ(木樽のデザインの!めっちゃ欲しい!)をほいと渡されて、ご近所の方々とそこかしこで乾杯を交わしつつ、まずはビョルンのところに行く。
 ビョルンは今は子どもに囲まれて、我も我もと話す子たちを相手にしていた。ひとりひとりに目線を合わせて、返事をして、大げさに驚いてみたり、褒めてみたり。すごく上手に子どもの相手をしている。周囲のお父さんやお母さんも微笑ましくそんなやり取りを見守っている。
 ビョルンなら、保父さんも出来そうだよねぇ。それに絶対、いいお父さんになれるよね。…私は彼を、お父さんにしてあげられるのかな。彼の子どもを、産んであげられるのかな。
 ふと暗い気持ちが差し込んできた時、見守っていたお母さんの1人が私に気づいた。
「英雄さん!ご主人さんとお話しに来たんですか?すみません、子ども達が群がってしまって」
 すぐに解散させようとしていたので、大丈夫ですよー、と止める。
「様子見に来ただけなんで、お気になさらず」
 私の用件なんて、シュエンやっぱりビンゴだったよ!ってくらいだし。目をキラキラさせて、ビョルンに質問を浴びせかけている子ども達の邪魔はしたくない。
 ビョルンには後で声掛ければいいや、と去ろうとすると、先程とは別の若いお母さんに呼び止められた。
「あの、今日は本当に、ありがとうございました」
 お母さんの眼差しが真剣だったので、軽く流さず立ち止まる。
 聞けば、こちらのお母さんは旦那さんとお子さんと一緒に、最近この2番街11区に越して来たばかりだそうだ。旦那さんは仕事が忙しく不在がち、自分は子どもが幼いため働くこともできず、引っ込み思案な性格で積極的に交流することもできず、子どもと2人で家に引き篭もりがちになってしまっていたらしい。
「子どもは可愛いし、大好きなんですけど…癇癪を起こした時とか、どうしても辛くなってしまう時があって…」
 まだ若いお母さんが堰を切ったように話すのを、頷きながら聞く。
「でも今日、お誘いいただいて、近所の皆さんとお話しできて、なんて言うか、すごく救われたんです。子どもと2人きりの閉ざされた世界から、やっと外に出れたっていうか…。すみません、自分でも上手く言えないんですけど。でも、とにかくお礼を言いたくて…」
 最後は声が小さくなって、モジモジしてしまう。きっとすごく真面目なお母さんなんだね。
「私は子どもがいないから、あまりわからなくて申し訳ないんだけど。人ひとりの命を守って育ててるんだもの、お母さんてすごいなぁと思うよ。…よく、頑張ってるね」
 多分この人、私より若いんじゃないかな?なのにもうお母さんとして、自分以外の命に責任を持っている。本当に、すごいと思うよ。
 彼女はパッと顔を上げた後、口元を手で押さえた。込み上げてくるものを、必死に我慢しているんだろう。手が震えて、目が潤んでいる。
 この人は、いつか私が欲しいと思っているものを持っている。だけどこういう姿を見ると、そこは決してゴールなんかじゃないんだなと思う。みんな目標とすることは色々ある。受験、就職、恋人、結婚、妊娠、出産…色んな目標に向かって努力したりするけど、達成したからってそこはゴールじゃない。新たなスタートラインに立つだけだ。
 脅威に立ち向かった時、『ボナ・ノクテム』を終わらせるのをずっと目標にしていた。そしてそれは一応達成できた。『対するもの(コントラ)」を退けて、世界に平和が訪れて、めでたしめでたし。そんな風に都合よく、人生は終わってくれない。戦いの後も戦後処理に追われ、落ち着いたと思ったら恋もしないうちに結婚することになって、それも落ち着いたら今度は子どもの問題だ。
 乗り越えても乗り越えても、新たな苦難はやってくる。でもそれは私の人生だけじゃなくて、いま目の前で涙を堪えているお母さんだって色んな苦難を乗り越えて来たし、優しげな目で私たちを見守ってくれている、周囲のお父さんお母さんもきっと同じだ。
「…嫌じゃなければ、背中に触れてもいい?」
 言葉が出ないようで、コクコクと頷く若いお母さんの背中をさする。がんばって生きているお母さんに、たくさんの幸福と優しさが降り注ぎますように。いつかまた苦難が訪れた時に、乗り越えられる力が湧いて来るように。
 ポンポンと彼女の背中を叩いていると、私達の間にグイグイと入り込んで来る存在があった。空気なんて読みませんけど何か?な存在は、きっとこのお母さんの小さな騎士だ。まだ3歳くらいかな?幼い男の子は私を無言で押しのけて、お母さんにギュッとしがみつく。
「あら、ごめんね?」
 お母さんを取られたくないのよね。可愛い。男の子はチロっとこちらを見た後、ぷいと顔を背けた。
「す、すみません」
「全然よ。お母さん大好きなんだもんね?可愛い騎士さん」
 男の子はこちらを向かない。ふふ、ホント可愛いなぁ。
 それを切っ掛けにか、ビョルンに群がっていた子どもたちが親の元に戻っていく。ビョルンがにこやかに手を振って立ち上がると、男の子達が「デッケー!」「スゲー!」と興奮していた。子どもからしたら巨人よね。縦にも横にも大きいし。
 それぞれでまた会話を始めた親子さんたちに二人で手を振って、他の人たちと離れた所でビョルンと向き合った。
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