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中東系エルフ魔術師編
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タイミングよく帰って来たビョルンの鶴の一声で、ロルフはとりあえず諦めてくれた。
「腹の魔法陣は、ちゃんとできたのか?」
「うん、大丈夫だって」
「そうか、それはよかった。ロルフ、今日はまだシャーラも俺も出勤しないから、時間はたっぷりある。今は少し、休ませてやれ」
「チッ…、わぁったよ」
渋々どいたロルフに、ホッとする。でもコレ、先送りになっただけよね?後が怖いわー。
「ありがとね、ビョルン」
「いいや。これから風呂に行くのか?」
「うん。ビョルンは?」
「すまん、俺は帰る前に寄って来たんだ。店に泥酔した奴がいて、酒を掛けられちまってな」
「うわぁ、災難だったね。じゃあイスがまだ寝てるから、留守番頼んでいい?ロルフは私と一緒にお風呂行こ。汗臭いよ」
任務明けだからしょうがないけどね、今日ばかりはお風呂屋さんでしっかり洗って来ていただきたい。
「ヘッ、嫌いじゃねぇだろ?」
「イヤだよ嫌いだよ」
キッパリと言い放つと、ロルフに捕まって羽交締めにされる。ぎゃー!汗臭い!!
「そうかよ、テメェにもつけてやる」
「やめてよ、バカッ!私も臭くなるでしょ!!」
2人でギャーギャー大騒ぎしていると、ビョルンが呆れ返ったため息をついて。
「全く、いい大人が何をしてるんだ。遅くなる前に、早く風呂へ行ってこい!」
一喝されて、慌てて準備してロルフとお風呂屋さんに向かった。家庭内でビョルンのオカン度がどんどん上がっているんだけど、間違いなくロルフと私のせいよね。ごめんなさい。
それからお風呂屋さんでロルフがしつこくナンパ(男から)されて、持ってたナイフで脅しつけるトラブルはあったものの、ちゃんと寸止めしてくれたので『穏便に』収めることが出来た。えらいぞロルフ。以前に木桶風呂を衝動買いしちゃったお風呂屋さんでもあるので、オーナーさん達が味方についてくれたのもよかった。えらいぞ私。
体も気分もサッパリして、帰りに皆の分の朝ごはんを購入して。ロルフと手を繋ぎながら、ご機嫌で家に帰った。
家に帰り着くと、イスが寝ぼけ眼でダイニングテーブルについていた。目が半分くらいしか開いてないけど、変わらず顔が濃いな。
「おはよーイス。まだ寝てたらいいのに」
「さすがに、塔に帰って仕事を片づけなければ。後が怖い」
ああ、そうね。その気持ちは大いにわかるわ。
「イスは、このまま塔に住むの?ここから通うのは遠いもんね」
「そうだな、塔長は基本、塔長室に住むよう定められている。だが、連絡がつく所なら、休暇時は外に出ても問題ない。普段は塔に住み、休暇が取れた時にこちらへ来るつもりだが、構わないか?」
頻度としては、研究や仕事が立て込んでなければ1月に1回1週間程度、まとまった休みを取ってこちらへ来るつもりだそうだ。なるほど、通い婚ってことか。そりゃ複婚の方が上手くいくわ。
「いいよ、もちろん。イスの部屋を準備しておくね」
「ああ、ありがとう」
私物はおいおい自分で揃えてもらうとして、とりあえずベッドといくつか着替えを用意しておけばいいかな。
買ってきた朝食を皆で食べながら、これからの予定を話し合う。
イスはさっき言った通り塔へ帰って仕事、私とビョルンは待機、ロルフは傭兵団に行って任務完了の報告を…と思ったら、今回は副隊長のアンリがやってくれたらしい。
「前に当直に付き合ったからな。報告はやらせた」
ああ、あの宴会の時の。なるほど、貸し借りちゃんと清算してるのね。報告は隊長か副隊長の仕事なので、もちろん構わない。
じゃ、久々に3人揃ったね。いちおう私たちはまだ任務中の体なので、週明けまではそこらに出掛けることもできないけど。楽しく引きこもるかー。
みんなの予定をだいたい把握したところで、イスハークが塔に戻る準備を始めた。目もパッチリ開いてきて、眠気も去ったようだ。ローブを羽織って、しっかりターバンを巻いて。
「ではな、シャハラ。また来れる日が決まったら連絡する」
「うん、わかった。いってらっしゃい」
そう言ってイスに抱きついて、ちょっと背伸びをする。
「何だ?」
「いってらっしゃいの挨拶だよ。あなたは行ってくるって言って、キスするの。帰って来たらただいまとおかえりのキス。喧嘩したとしても、これは忘れないでね。我が家のルールだよ」
「ああ…」
イスが感慨深げに頷いて、チュッと軽いキスをする。スルッと魔力が頬を撫でて、彼の優しい愛情を感じる。
「行ってくる」
「いってらっしゃい、気をつけてね。あと、食事と睡眠も忘れずに!」
「ああ、気をつける」
そんなこと言って、夢中になったらまた疎かにしそうだけど。ちょこちょこ通信して、状態を確認した方がいいかもね。
「ではな、イスハーク。また連絡をくれ、休みを合わせるから」
「ああ、そうだな」
「次来るまでに、キッチリ準備して来いよ」
「ああ、わかっている」
男たちがいろいろ打ち合わせしてるけど、何の話?
「わざわざ休み合わせるなんて、何かあるの?」
私が問いかけると、3人の男が顔を見合わせたあと、ビョルンがにっこり笑った。
「せっかく家族になったんだ。みんなで交流を深めた方がいいだろう?」
ビョルンの言葉に、イスが深く頷く。
「そうだな、交流が必要だ」
イスの言葉に、ロルフがニヤニヤしながら同意する。
「ああ、深い交流がいるよなぁ。お前もそう思うだろ?」
ロルフの言葉に、疑問は残るものの、私も同意して。
「そうね、確かに。皆で仲良くしていきましょうね」
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でもどうも、嫌な予感がするんだけど…それが何かは、さっぱりわからなかった。
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