異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

文字の大きさ
146 / 305
混血系大公編:第一部

28


 団長室の戸を開けると、そこには聞き耳を立てる団員達がいた。ロルフに昼食の買い出しを頼まれていた、ビートの姿も…。
「アンタたち…何してんの?」
 声を低ーくして言ってやると、ビート以外はダッシュで逃げ出して行った。
「ちょっと!!」
「あー団長団長!コレ、隊長の昼飯買って来たんで!」
 他の団員を追いかけようとするのを、ビートが前に滑りこんで止める。そして私の目の前に籠をサッと差し出してきた。パンやらリンゴやらチーズやら、昼食になりそうな物が籠に入れられてる。
「あー、もらっとくわ。ロルフ寝ちゃったから」
「あぁ、3日くらいろくに寝てないっすからねー」
 ビートはロルフに何があったか聞かされていないけど、突然帰り支度をしろとアンリに言われ慌てて荷物をかき集めて、赴任先のダービー伯領を飛び出して来たのだそうだ。アンリがなんとか押しとどめていたが振り切ってロルフは出発してしまい、皆で慌てて追いかけたらしい。帝都まであと1日くらいの所で強盗が出たけどロルフが瞬殺し、その時点でアンリ以外はロルフに追いつくのを諦めたのだと言った。
「依頼された山賊の強奪品、持ち出せなくて置いてきちゃったんすよねー。だから盗賊の身ぐるみ剥いでちっとでも補填しようぜってなって」
 そうしたらロルフが瞬殺した盗賊が手配書で見た特徴と一致していたらしく、ビートが馬に遺体を括りつけて先行し、帝都の衛兵所に届けてきたとのこと。なかなかいい額の賞金が入りそうだと言うことだ。
「他の皆は?」
「生き残った盗賊を締めあげて、そいつらのアジト漁ってくるって言ってましたー。手配書に乗るくらいだから、けっこう貯め込んでんじゃないすかね?」
「やるじゃない。ご苦労様」
「うっす!」
 ビートが返事をして、急に身を屈めて頭を差し出してきた。最初はお辞儀かと思ったけど、そのまま頭が上がらないので「ああ」と思い出す。
「よくやったわ、ビート」
 わしゃわしゃっと頭を撫でて褒めてあげると、ビートは嬉しそうに笑う。なんかこの子、頭撫でられるの大好きなのよね。
「あんたも、用が終わったら休みなさいよ」
「っす!エリィさんに報告してきたんで、仮眠室で休みまっす」
「あら、この件はルーディが担当だったけど。まだアンリと話してた?」
「どーだったかな?最初に目についたんで、エリィさんに報告しといたっす!」
 ……ふぅん?
 ちょっと含むものを感じたけれど、そこは追及することなくスルーしておく。ま、私がゴチャゴチャ口出しすることじゃないわよね。
 ビートを見送ってから、ロルフの分の昼食をテーブルに置いておく。団長室は寝室と居間兼応接室の二間続きになっているんだけど、応接室側のテーブルね。こうしておけば、起きた時に勝手に食べるでしょ。
 私は団長室の扉をしっかり施錠すると、事務室へ向かった。


 事務室に顔を出すと、心なしかみんな顔がゲッソリしていた。特にアンリとルーディ…えー、そんなにすごい報告だったわけ?
「団長、とりあえず急いでまとめたので、仮の報告書ですが…」
 ルーディが差し出してきた紙を受け取る。保管用の報告書類は丁寧に清書してもらうけど、とりあえず訂正線があったり追記が書いてあったりするものを受け取る。
「ありがとうルーディ。アンリはお昼摂った?」
「これからー」
 くあっと欠伸をかますアンリに苦笑して、空いている椅子を指し示す。
「悪いけど、読みながら質問もするからもう少し付き合ってくれる?昼食摂りながらでいいから」
「イエス、マム」
 エリィがビートから受け取っていたらしい昼食の籠を差し出して、アンリに飲み物を渡す。椅子に座ってそれを受け取ったアンリは、とりあえずリンゴにガブリとかぶりついた。
 それを横目で見た後、報告書に目を戻す。
「……うわぁ」
 そこに書かれていたあまりにもな内容に、私は額を押さえてため息をついた。


 ロルフたちは任務に赴いたダービー伯領で、伯爵本人に直接会って依頼を受けた。まぁビョルンやロルフは英雄名鑑にも載ってる人たちなので、貴族でも会いたがる人はけっこういるから、そこは珍しいことでもない。ただ最初の調査にはなかった伯爵の娘が面会の場にいて、ロルフを上から下まで値踏みするようにじっとりと見てきて、かなりロルフが不機嫌になったようだ。それでも会うのは最初と最後だけだから、とロルフを説得してまずは任務に集中することにした。
 さほど苦労なく山賊のアジトを探り当て、夜襲を仕掛けてこれを殲滅した。ロルフの苛立ちもあって、山賊たちは甚振られたあげくに全員殺されたそうだ。まぁ、強盗強姦をして結構な被害が出ていたそうなので、そこは同情しない。夜明けを待ってアジトに貯め込んであった略奪品を物色し、価値のありそうなものを根こそぎ回収。鑑定所に持ち込んだ。そこで査定してもらっている間に、山賊に奪われた物を取り返したい人は鑑定所を見に行く。所有権は略奪品を取り返した傭兵団にあるから、元は自分の物だったとしても買い取らなければいけないシステムだ。その売買が済んで、伯爵領の衛兵が山賊の殲滅を確認し報酬を受け取るまでは帰還できない。そこで伯爵はロルフ達の待機場所にと、屋敷の客間を提供してくれたのだそうだ。
 前金で報酬の半額は受け取っていたので、何人かは娼館に繰り出したけれどロルフやアンリたち数人は仮眠を取ることにして…そこで、事件が起きた。アンリの報告だから彼の視点になるけど、ロルフはボヌ・ディエヌの英雄だってことで個室を準備してくれたそうだ。アンリ達他のメンバーは最初少し離れた部屋を案内されそうになったけど、何かあった時に困るってんで続きの部屋にしてもらったらしい。そうしてアンリがウトウトしていると、突然怒号が響き渡った。飛び起きて隣の部屋に入ろうとすると、鍵が掛けられていた。寝る前に廊下の鍵はしっかり掛けて、続きの扉は鍵を掛けなかったはずなのにだ。
 これは尋常じゃないと感じて他の団員と共に扉を蹴破って部屋に飛び込むと、全裸同然のスッケスケの服を着た女が床で蹲っていて、その前で拘束の魔道具を引き千切ったロルフが仁王立ちしていたそうだ。…拘束の魔道具って、B級くらいの魔獣なら拘束できるやつよね?それを引きちぎるとか…怖いわー、私の婚約者。
 一瞬唖然としたアンリ達だったけど、ロルフがさらに蹴り上げようとしたために全力で止めに入った。どう見ても、蹲っていた女が伯爵の娘と同じ髪色だったから。
 現状でも貴族の娘を傷つけたってことで相当やばいのに、殺しでもしたら更にやばい。英雄と呼ばれていても身分は平民だ。さすがに罪は免れない。場合によっては、婚約者である私にも罪が及ぶ。そう説得して、ロルフはなんとか怒りを鎮めようと左耳のトラガスに触れて…で、色々あったけれど少し落ち着いたので、介抱するフリして伯爵の娘に眠り薬を嗅がせてベッドに寝かせ、衛兵所の通信具でビョルンから帰還の指示をもらい大急ぎで荷物をまとめて、娼館に繰り出した連中も途中だろうが容赦なく呼び戻し…強行軍で帰還した、との事だった。
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。 そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!? 貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆