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混血系大公編:第一部
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夕方になり、ダービー伯が到着されたとの知らせが入った。奥様にお茶のお礼を言って部屋を辞し、メイドさんに案内してもらってまた応接室へ向かう。奥様には「またお手紙を送ってもよろしいですか?まだまだ話足りませんわ」と仰っていただけたので、よろこんでと答えておいた。今まで貴族の友人や知人はいても、ほぼ男性だったからね。貴族女性の友人ができるのはありがたいし、純粋に嬉しい。歳食ってくると、どんどん新しい友人って作れなくなっていくからねー。特に前世は独身だったからか、同世代の人たちはだいたい家庭を持っていて付き合いは疎遠になっちゃったし。一番の親友は家族持ちでもちょくちょく食事に誘ってくれたけど、やっぱり出てくるのって子どもの話なんだよね。
その親友は「子どもの話しかしないと思ってる?でもごめん子どものことしかねーのよ話題が!何故なら!子どもとしか接してねぇから!生活の大部分が子どもと夫の世話で占められてるから!そら主婦は社会から取り残されるわ―!!」なんて叫んでいた。…うん、面白い子だったわ。
いかん話が逸れた。とにかく歳を食えば食うほど、新しい出会いは貴重だと思う。特に友人になれそうな人との出会いは。そう思えば、今回のトラブルも無駄ではなかったのかもね。
そんなことを考えているうちに、応接室に到着した。
「おかえりシャトラ。妻の相手をしてくれてありがとう」
応接室に戻ると3人の男たちもビジネスの話は終わっていたようで、にこやかに談笑していた。ハリーさんにお礼を言われたので、私は「こちらこそ」と返しながらイスの隣に腰掛ける。
「素敵な奥様ですね。また文通するお約束をしました」
「それはよかった。忙しいだろうが、合間にでも相手してくれるとありがたいよ」
「よろこんで」
そこからまた話していると、ダービー伯が到着された執事さんが伝えに来た。それから執事さんが私たちに聞こえない様に、ハリーさんに耳打ちをする。ハリーさんは額を手で押さえたあと、私たちに向き直った。
「すまない。まずは私だけでダービー伯に挨拶してくる」
「あ、はい…?」
「君たちは、娘の準備ができてから来てもらいたいそうだ」
「…娘さんだけ、到着が遅れてらっしゃるんですか?」
「門を通ったのは間違いない。大方、身支度に時間がかかっているんじゃないか?自分を美しく見せることには余念のない女だから。まぁダービー伯は、君たちの主張を私から聞いておきたいのだろうね」
「へぇ!それはありがたいです」
公平な方のようで、こちらとしても非常にありがたい。
「どちらかというと、娘の主張を頭から信じられないのではないかな?」
「おー…」
それは何というか、こちらは助かるけれどご愁傷様というか。
「だからこそ、私も中立の立場でいかせてもらうよ」
「ええ、もちろん。ハリーさんが中立じゃないと、オーバーキルになっちゃいますからねー」
ニヤっと笑ってやると、ハリーさんが楽しそうに目を細める。
「おお、すごい自信じゃないか。いやぁ、これは楽しみだ」
そう言いながら応接室を出て行ったので、イスとアンリと待つことにした。
「ビジネスって何の話だった?」
「ああ。ウォリック伯爵領で狩られた魔獣を解体した際に、何らかの結晶体が見つかったそうだ。その性質を調べる魔道具はないかと聞かれた」
「結晶体?そんなのあるの?」
私たちも魔獣を狩った際は売れそうな部位を解体して買取屋に持ち込むけれど、結晶体なんて見たことない。
「今までもごく稀に、見つかったという話は聞いたことがある。だが特に使い道があるわけでもなく、屑石扱いだった。それが最近、その結晶体を有する個体が徐々に増えているように感じると言っていた。そこでそれがどういう性質のものか、何か悪い前兆ではないか、もしくは資源として有効活用できるものなのか。調べるためにサークルに相談を持ちかけようとしたようだが、まだ件数がそれほどあるわけでもないからと断られたそうだ。まぁ、どこの塔の魔術師も常時忙しくしているからな。よほど興味を惹くか伝手でもない限り、取り上げられるのは難しいと思う」
「えッ、そうなの?」
私なんか魔術師関連の頼み事あるとすぐイスに相談して、解決してもらってたんだけど。それってもしやすごい迷惑だったんじゃなかろうか。
「うわごめんね、私イスに負担かけてたんじゃない?」
「そんなことはない」
いやでも塔長になる以前からイスって忙しい人だったよね。なのにだいたいすぐ解決してくれてたもん、申し訳ないことをした。
「そりゃー団長にいい顔見せたかったんでしょ。男は女にカッコつけたい生き物だからさぁ、ねぇ塔長サマ?」
「うるさい黙れ」
「容赦ないぶった切り!」
無表情でアンリに冷たく言い放つイスに、少し笑ってから彼の腕にそっと触れる。
「ありがとう、イス」
「…いや、いい」
イスは私の手に自信の手を重ねると、チュッと軽く口づけて来た。こらこら。
「ちょっと、人前!」
慌ててイスから距離を取る。アンリもいるけれど、ここはウォリック伯邸の応接間。メイドさんも騎士の人もいる。皆さんプロだからシレっとしているけど、絶対に見られているはずだ。
「許可は不要だといったじゃないか」
「TPOは考えてくださーい」
「じゃあ何でその気にさせたんだ」
「その気ってなに?!させた覚えありませんけど?!」
なんという冤罪!イスの滅茶苦茶ないい分に憤慨していると、何故だかアンリがしみじみと頷いた。
「なるほど、ロルフはオープンスケベだけど塔長はムッツリスケベか…。ねぇ団長、副団長は何スケベ?」
「知るかこのスケコマシ!」
ギャーギャー騒いでいると、部屋の壁沿いでブフゥと吹き出す声が一瞬入る。プロの皆さんではあるが、堪えきれずに一部の人が吹き出してしまったらしい。ゲフゲフ咳をして取り繕っていたけれど、なんかスミマセン…。
そんなこんなで騒いでいるうちに時間が過ぎて、執事さんらしき人が呼びに来てくれた。どうやらダービー伯の娘も到着し、対談の準備が整ったらしい。
さぁ、戦いに出ましょうか。
イスとアンリと目配せをして、私たちは席を立った。
その親友は「子どもの話しかしないと思ってる?でもごめん子どものことしかねーのよ話題が!何故なら!子どもとしか接してねぇから!生活の大部分が子どもと夫の世話で占められてるから!そら主婦は社会から取り残されるわ―!!」なんて叫んでいた。…うん、面白い子だったわ。
いかん話が逸れた。とにかく歳を食えば食うほど、新しい出会いは貴重だと思う。特に友人になれそうな人との出会いは。そう思えば、今回のトラブルも無駄ではなかったのかもね。
そんなことを考えているうちに、応接室に到着した。
「おかえりシャトラ。妻の相手をしてくれてありがとう」
応接室に戻ると3人の男たちもビジネスの話は終わっていたようで、にこやかに談笑していた。ハリーさんにお礼を言われたので、私は「こちらこそ」と返しながらイスの隣に腰掛ける。
「素敵な奥様ですね。また文通するお約束をしました」
「それはよかった。忙しいだろうが、合間にでも相手してくれるとありがたいよ」
「よろこんで」
そこからまた話していると、ダービー伯が到着された執事さんが伝えに来た。それから執事さんが私たちに聞こえない様に、ハリーさんに耳打ちをする。ハリーさんは額を手で押さえたあと、私たちに向き直った。
「すまない。まずは私だけでダービー伯に挨拶してくる」
「あ、はい…?」
「君たちは、娘の準備ができてから来てもらいたいそうだ」
「…娘さんだけ、到着が遅れてらっしゃるんですか?」
「門を通ったのは間違いない。大方、身支度に時間がかかっているんじゃないか?自分を美しく見せることには余念のない女だから。まぁダービー伯は、君たちの主張を私から聞いておきたいのだろうね」
「へぇ!それはありがたいです」
公平な方のようで、こちらとしても非常にありがたい。
「どちらかというと、娘の主張を頭から信じられないのではないかな?」
「おー…」
それは何というか、こちらは助かるけれどご愁傷様というか。
「だからこそ、私も中立の立場でいかせてもらうよ」
「ええ、もちろん。ハリーさんが中立じゃないと、オーバーキルになっちゃいますからねー」
ニヤっと笑ってやると、ハリーさんが楽しそうに目を細める。
「おお、すごい自信じゃないか。いやぁ、これは楽しみだ」
そう言いながら応接室を出て行ったので、イスとアンリと待つことにした。
「ビジネスって何の話だった?」
「ああ。ウォリック伯爵領で狩られた魔獣を解体した際に、何らかの結晶体が見つかったそうだ。その性質を調べる魔道具はないかと聞かれた」
「結晶体?そんなのあるの?」
私たちも魔獣を狩った際は売れそうな部位を解体して買取屋に持ち込むけれど、結晶体なんて見たことない。
「今までもごく稀に、見つかったという話は聞いたことがある。だが特に使い道があるわけでもなく、屑石扱いだった。それが最近、その結晶体を有する個体が徐々に増えているように感じると言っていた。そこでそれがどういう性質のものか、何か悪い前兆ではないか、もしくは資源として有効活用できるものなのか。調べるためにサークルに相談を持ちかけようとしたようだが、まだ件数がそれほどあるわけでもないからと断られたそうだ。まぁ、どこの塔の魔術師も常時忙しくしているからな。よほど興味を惹くか伝手でもない限り、取り上げられるのは難しいと思う」
「えッ、そうなの?」
私なんか魔術師関連の頼み事あるとすぐイスに相談して、解決してもらってたんだけど。それってもしやすごい迷惑だったんじゃなかろうか。
「うわごめんね、私イスに負担かけてたんじゃない?」
「そんなことはない」
いやでも塔長になる以前からイスって忙しい人だったよね。なのにだいたいすぐ解決してくれてたもん、申し訳ないことをした。
「そりゃー団長にいい顔見せたかったんでしょ。男は女にカッコつけたい生き物だからさぁ、ねぇ塔長サマ?」
「うるさい黙れ」
「容赦ないぶった切り!」
無表情でアンリに冷たく言い放つイスに、少し笑ってから彼の腕にそっと触れる。
「ありがとう、イス」
「…いや、いい」
イスは私の手に自信の手を重ねると、チュッと軽く口づけて来た。こらこら。
「ちょっと、人前!」
慌ててイスから距離を取る。アンリもいるけれど、ここはウォリック伯邸の応接間。メイドさんも騎士の人もいる。皆さんプロだからシレっとしているけど、絶対に見られているはずだ。
「許可は不要だといったじゃないか」
「TPOは考えてくださーい」
「じゃあ何でその気にさせたんだ」
「その気ってなに?!させた覚えありませんけど?!」
なんという冤罪!イスの滅茶苦茶ないい分に憤慨していると、何故だかアンリがしみじみと頷いた。
「なるほど、ロルフはオープンスケベだけど塔長はムッツリスケベか…。ねぇ団長、副団長は何スケベ?」
「知るかこのスケコマシ!」
ギャーギャー騒いでいると、部屋の壁沿いでブフゥと吹き出す声が一瞬入る。プロの皆さんではあるが、堪えきれずに一部の人が吹き出してしまったらしい。ゲフゲフ咳をして取り繕っていたけれど、なんかスミマセン…。
そんなこんなで騒いでいるうちに時間が過ぎて、執事さんらしき人が呼びに来てくれた。どうやらダービー伯の娘も到着し、対談の準備が整ったらしい。
さぁ、戦いに出ましょうか。
イスとアンリと目配せをして、私たちは席を立った。
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