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混血系大公編:第一部
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それからは、ふたりでポツポツと雑談しながら馬車の中の時間を過ごした。
「塔長様はエルフでしょ?セックスは苦痛ではない?」
「え?あぁ、魔力の相性の事です?たまたま私は相性がいいみたいで、苦痛はないですよー」
「魔力?そうではないわ。エルフの殿方は…下手、という印象しかないのだけれど…」
え、うちのイスさんディスってる?って一瞬思ったけれど、アレか。エルフってセックスにも魔力を使うから、体の愛撫とかはあんまりしないみたいなのよね。イスさんはヒューマン種の私に合わせてちゃんとしてくれるけど…。
「あー、エルフって『魔力を交わす』のが最高のセックスらしいですよ。だから逆ならまだしも、男側がエルフだと難しいかもしれないですねぇ」
「魔力で交わす?何よそれ?」
「私もまだまだ下手くそですけど。お互いの魔力を使って快感を得るというか…」
「体には触れないの?」
「究極は、魔力だけで高め合えるとかなんとか」
「…理解できないわ…」
「…まぁ、お互いを尊重して歩み寄るのが一番じゃないですかねぇ…」
めっちゃオブラートに包んでおいたけどね。要は魔力も体も使え!ってことだ。
「今後の参考にどぞー」
「しないわよ」
「えー」
エルフの男はもうコリゴリってことかな?私が首を傾げると、彼女は自分の胸にそっと手を置いてため息をついた。
「コレをなんとかしてもらえたら…しばらくは、ゆっくりしたいわ…」
「…そうですね」
まだレディから話しは聞いていない。けれど、きっとここまでに色々あったんだろう。
「…あんまり落ち着かないかもしれないですけど…とりあえず、例の魔術師さんが来るまでゆっくりしてくださいね」
「ええ、そうするわ。ところでビョルン様は…」
「いやなんでそんな根ほり葉ほり聞くんです?レディの話もしてくださいよー」
「話せないことが多すぎて無理よ」
「機会があればめっちゃ聞いてやる…」
「ふふ。ね、体が大きい殿方って、アレも大きいことが多いわよね?ビョルン様はどうなの?」
「言いたくねぇわー」
「小さいの?」
「モンスターコックでぇす」
「モンスター…なに?」
「スラングは知らんかー」
そんなこんなで下ネタ交えつつ話に花を咲かせていると、順調に道を踏破し翌日の夕方には医療の塔に到着することができた。
レディと騎士さんはここで別れて、医療の塔の監視下に入る。あの屋敷自体は医療の塔の管轄だからね、医療の塔の魔術師さんが監視してくれるのだろう。
馬車から降りると、なんと塔長であるフローラさん自ら出迎えてくれた。
「やだ!フローラさん自ら!」
「お前も来ると聞いてね。どうだい、調子は?」
「バリバリ元気ですよー」
「そのようだ。イスハークとは上手くやっているかい?積年の想いが叶って、お前に無理を強いてないといいが」
「例の魔方陣が、いい仕事してますよ」
「と言うことは、無理をさせているな?全く」
馬を繋いでいたイスがこちらにやって来ると、さっそくフローラさんから小言を言われた。イスが遠い目をしながらそれを聞き流しているのに苦笑しつつ、私はレディ達に向き直った。
「それではレディ。これでお別れですね」
「ええ…」
レディのこれからのことは、サークルにお任せだ。ダービー伯との契約はここに送り届けたことで完了したし、元々の山賊退治についても話はついた。ローブについてはあくまでサークルの問題だし、私が深く関わっていいことじゃない。残りの契約金を受け取れば、レディとはここでお別れとなる。
「お元気で」
手を差し出すと、彼女は躊躇った後に私の手を握り返した。
「その…悪かったわ」
「え?何がです?」
レディが本気かコイツ?という表情で私を見つめる。
「…貴女の婚約者を誘惑したことよ」
「あー。まったく相手にされてませんでしたけどね」
からかうように言うと、レディは口を尖らせて私の手をギュッと強く握った。全然痛くないです。
「お気になさらず。ただ、もうしないでください。…次は命の補償はないですよ」
レディは少し面食らったような顔をしたあと、神妙に頷いた。
「…身に染みてるわ」
「ふふ。よかったです」
それから私は、レディに一枚のカードを差し出した。名刺代わりに作った、傭兵団の住所と私の名前が入った木製のカードだ。
「いろいろ済んで身軽になったら、よかったら訪ねて来てください。まだ聞けてないお話もありますしね」
ニコっと笑うと、彼女は馬車の中で盛り上がったあられもない話を思い出したのか、クスリと笑った。
「そうね。…そうできると、いいわね」
レディはカードを受け取ると、付き添いの女騎士さんに促されてフローラさんの元へ行った。彼女は残りの契約金を支払うと、私たちに深々と頭を下げ、自分の主人の元へ向かった。
それで私たちの用は済んだので、傭兵団本部に戻ることにした。イスはフローラさん達と必要な話があるため、その場に残るという。
「今日は帰って来れる?」
「それほど時間はかからない。傭兵団本部で待っててくれ」
「ん。ロルフもビョルンも何事もなければ多分帰って来てるから、皆でご飯食べようね」
「わかった」
さすがに衆人環視のなか唇にキスをするのは憚れられたので、ハグして頬にキスをする。このくらいなら挨拶の範囲だから恥ずかしくないよねー。フローラさんにはニヨニヨしながら見られたけど…いいじゃん婚約者だもんよー。
それからサークルメンバー&レディ達に別れを告げ、私たちはようやく傭兵団本部に帰着することができた。
いやぁ、濃厚な旅でございました。
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