異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

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混血系大公編:第二部

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「ヴァレさん、どこか行きたいところはあります?」
「君のエスコートで構わないが…そうだな。少し小腹がすいたかな」
「あら、朝は食べてない?」
「準備が忙しくてね。軽食しかつまめなかったんだ」
「あらら」
 私の覚えている限り、ヴァレさんもよく食べる人だった。それじゃあお腹すいちゃうわね。
「じゃあ、マーケットに向かいましょう。目も楽しめるし小腹も満たせるしね」
「いいね」
 私たちは、まず3番街のマーケットに向かうことにする。傭兵団本部に行くまでの通り道にちょうどあるしね。
 マーケットは朝早くから開いていて、朝食を摂ったり買い物をしている人たちでいつも賑わっている。朝は基本配達してもらったパンやミルク、残り物なんかで済ますことが多いけど、通ったついでにちょこっと買い物することもあるから顔見知りはいっぱいいる。
「おや団長さん!今日はまた違う男連れて!新しい旦那かい?」
 朝食にピッタリの、フルーツの切り売りをしているおかみさんが元気に声を掛けてくる。あのおかみさん、ゴシップ大好きだからなー。ビョルンとロルフと婚約した時も、翌日にはもう知ってたもんな。
「ちがいますぅー。友人ですぅー」
「そんなこと言って、塔長さんときだってアンタおんなじこと言ってたじゃないか!」
「やぶへびだったかー」
 揚げ足を取られて私はぐうの音も出ない。私も口が達者な方だけど、このオバチャンには敵わないのよねー。そんな姿を見てビョルンが助け舟を出してくれる。
「本当だよ、久しぶりに俺たちを訪ねて来てくれたんだ」
「アラッ、ビョルンさんてば今日も男前だね!」
 おかみさんの声がワントーン上がる。おばちゃんもイケメンには弱いよね。それからなにかに気づいたように、ヴァレさんの顔をじっと見つめる。
「なにか?」
「うーん、確かに!団長さんの旦那候補には、お兄さんじゃちょっと役不足だね!」
「ちょっと、おかみさん!」
 彼女の失礼な物言いに、ヴァレさんは気にした様子もなく口元に笑みを刷く。
「おや、そうかい?」
「団長さんは面食いだからねー。見染められるにはもっと男を磨かなきゃ!」
「わはは!そうか、それは精進しなければな」
 んもー、おかみさんたら言いたい放題なんだから。今は眼鏡で隠されてるけど、ホントはこれ以上磨きようもないくらいのイケメンなんだからね!
「そうだよ!さ、ウチのフルーツをどうだい?栄養たっぷり、お肌が綺麗になるよ。男だって、肌が綺麗な方が魅力的だからね!」
「ふふ、商売がうまいな。お勧めはあるか?」
「もちろん!まいどあり!」
 そう言って、梨を切り分けたものを串に刺してくれる。すごく瑞々しい、美味しそうな梨だ。
「団長さんもどうだい?」
 どうしよっかな、と悩む前にサッとヴァレさんがお金を支払ってくれる。
「みんなの分も頼むよ」
「まいどあり!」
 多めに支払ってもらったおかみさんはご機嫌で、私たちにフルーツを差し出してくれた。なんてスマートな!あっ、でも、
「ヴァレさん、私が払うよ?」
 ジョバンニさんから着手金もタップリいただいてるのに、ヴァレさんにお金を出させるのは申し訳ない。そう思っての発言だったけれど、財布を出す手を優しく押し込められる。
「ここは『俺』に格好つけさせてくれよ」
 ふいにヴァレさんから放たれた、粗野な言い方にドキッとする。でもそっか、3番街で気取った言い方してたら目立っちゃうもんね。でも不意のギャップは狡いわ~。ちょっとドキドキしてしまった。イスがいたらまた拗ねられちゃいそうだ。ビョルンとロルフは割り切っちゃってるのか、あんまり嫉妬しない気がするんだけどね。
「じゃあ、甘えるね」
「ありがとう」
 奢ってくれたヴァレさんにお礼を言われるなんて、変なの。ふふっと顔を見合わせて笑うと、おかみさんがアラっと大きな声を出した。
「こりゃあ意外と脈ありなんじゃない!?」
「いやないって…」
「団長さんはニブチンだからね、信用できないよ!ビョルンさん、どうなんだい?!」
 おかみさんはゴシップのネタを見つけたとばかりに興奮して、ビョルンに迫る。彼が苦笑して「ノーコメントだ」と告げると、不満げに口を尖らせた。
「イケズだねぇ、自分の時はすぐに教えてくれたのに…」
 ん?自分の時?
「あー、ごっそさん。さあシャーラ、時間は有限なんだからさっさと行くぞ」
「えっ?あっ」
 ビョルンに背中を押されて、強制的にその場から離れさせられる。ちょっと離れたところで待機していたロルフもスタスタ歩き出し、これ以上とどまれなくて私も歩き出した。まぁ、そんなに深く掘り下げることでもないよね。
「またわかったら教えとくれよ!サービスするからさ!」
 ビョルンは返事をせずに手を振って、私と歩幅を合わせて歩き出したので。
「…そういえば私たちが婚約した時、光の速さで噂が広がったよね…」
 串に刺さった果実を見ながら呟くと、ビョルンが空っとぼけた声で「そうだなぁ」なんて呟くもんだから、少々強めに肘で小突いておいた。笑ってるけど、絶対ビョルンの仕業だよね!
 それからみんなでフルーツを堪能して、おしゃべりしつつマーケットを散策する。ヴァレさんはフルーツをペロリと平らげ、他にもサンドイッチや串焼きのお肉を購入していた。私も勧められたけど、さすがに断った。そんなに食べられませんがな…。ビョルンとロルフはヴァレさんに奢ってもらって、ガッツリ食べていたけどね。普段は人の上に立つ彼らだけど、ヴァレさんがいるとなんか後輩感が出てて、微笑ましいな。
「ああ、うまいなァ」
 串焼きを食べた時に手についたソースを、ベロっと舌で舐めとる。皇族がするにはお行儀の悪い仕草だけど、今の彼にはすごく似合っている。
「普段はもっと旨いもん食ってんだろうが」
「それはそれ、これはこれだよ」
「ヘッ」
「ロルフ、お前も貴族になれば『もっと旨いもの』が食えるようになるよ。推薦しようか?」
 功績は充分だしな、英雄殿?とヴァレさんが言うと、ロルフは嫌そうに舌打ちした。
「そんでテメェの犬コロになれってか?やなこった」
 犬コロってのは、騎士を揶揄する言葉ね。騎士は主を定めて忠義を尽くすから、忠誠心の強い犬に例えられたりするのよね。前世でいう警察みたいな役割もあるし、ところ変わっても人の考えることって似通ってるんだなぁって思う。
「ロルフはシャーラの犬だもんな」
「誰が犬だ!俺は夫だ!」
 からかうように言うビョルンの腕を、ドスッと拳で殴りつけている。…ごめん、ロルフ。私もちょいちょいあなたのこと犬に例えちゃってるわ。
「ふぅ、満足だ。さて、このあとどうする?」
 ようやくお腹が満たされたらしいヴァレさんは、満足げにお腹を撫でてそう言った。
「リクエストがなければ、ヴァレさんの傭兵団だった衛兵詰所と、ウチの傭兵団をのぞいてみようと思うんですけど、どうです?」
 そう言うと、ヴァレさんの顔がパァっと輝いた。
「いいのかい?それは嬉しいな。実は見てみたいと思ってたんだよ!」
「もちろん。じゃあ近い方で、詰所から行きましょうか」
「いいとも」
 こうして私たちはマーケットを後にし、衛兵詰所へと向かった。

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