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混血系大公編:第二部
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『なにあれ…?!』
オープンになっている通信から、ミンミの声が聞こえてくる。続いて
『団長、来ました』
と冷静なシュエンの声。
ふたりとも、来てくれたんだ!
スライムの咆哮は断続的になっている。その合間を縫って、カッツェと合流するよう指示を出す。お互いに連絡を取り合い、すぐに居場所を把握したようだ。
『カッツェ、怪我はない?!』
『すまねぇミンミ、めっちゃ元気!』
『もう…!』
オープンになってる通信から、ちょっぴり甘酸っぱい、恋人同士のやり取りが聞こえてくる。うーん、こそばゆいッ!
耳はなんだか平和になっちゃったけど、目はスライムの動向に注視する。もっと暴れるかと思ったけど、多分イスが拘束系の魔術を紡いでるかな?ウネウネと身悶えるように動いているけど、激しく暴れてはいない。
それから左の触手近く、矢を打ち込んだ部分を中心に、周辺の透明度が増していった。濁って見えなくなっていたスライムの中身が、その部分だけ徐々に露わになっていく。よし、上手く行った!
状況観察はヴァレさんに任せて、2本目の矢を手に取る。
『すげぇ団長、何の附術なんすか?!』
興奮したカッツェが、急に大きな声を出す。スライムの咆哮に負けないようにかもしれないけど…通信ピアスは耳元で聞こえるし周辺のノイズも多少カットしてくれる仕様だから、充分に聞こえるんだけどな。
『うるせぇぞテメェ!』
ホラ、ロルフに怒られた。
『すんません!!』とまた大きな声で謝ってるけど…懲りない子だね。
カッツェには後で説明してあげるけど…私が矢じりに刻んだのは、汚れを吸着する附術だ。込められた魔力が続く限り矢尻周辺に濁りが集まるから、その周辺は透明度が増すってわけ。
元々は川の水とかを飲み水に変えられるよう、作った附術なんだけど…思わぬところで新たな使い道ができちゃったわ。
次の矢尻に附術を刻みつつ、少し待つとだいぶクリアになったんだけど…魔石はまだ見えないとのこと。もともと目立つようなものでもないしね。でも、レンガやら石やら木片やら…何かの骨格やら。ごちゃまぜのガラクタたちの中心部に、きっと魔核があるはずだ。
ただ、生存者らしき姿は見つからない。
『シャハラ、生存者だ』
イスの声。えっ、どこに?!
『酒樽があるのがわかるか?恐らくあの中に入っている』
酒樽ーーーあった!!
「ビョルン、ロルフ!」
『おう!』
『あいよ』
ロルフとビョルンが前に飛び出す。殺気を感じたのか、ヴァレさんが打ち抜いた触手がブルンと瞬時に元通りになる。
ふたりに迫る触手。ロルフが懐から出した小型の爆薬に着火し、触手に向かって無造作に放る。あれ、ブレスレットと指輪がファイヤースターターになってて、それで着火できるようになっているのよね。
バチバチィ!!
激しい音と共に触手が爆ぜる。
『カッツェ!フォローしろ!!』
『AyeAye,Sir!!』
ビョルンの命令に、カッツェが5番街の3人を従えて飛び出す。そして次々と手にしたナイフを、飛び散ったスライムに突き刺していく。
『でっかいの優先だぞ!』
『わかってんよ!』
カッツェが彼らに指示をし、それに答える声が聞こえる。
彼らに配ったのは、スライム加工用のナイフだ。イスが手配してくれた、魔道具屋さんから借りてきたヤツね。
スライムの体は獲物を消化する成分がたくさん含まれているから、素手で触ったりすると皮膚が爛れちゃって危険だ。でもスライム加工用ナイフには附術が施されていて、その成分を無害化することができるらしい。多分スライムの消化成分ってのは胃液みたいな強酸性で、それをなんらかの方法でアルカリ性の成分を加えて中和してるのかな?なんて考えちゃうけど…企業秘密らしいので、それ以上の考察はやめておく。
とにかくスライムが無害化されると、性質が変わるからか本体は吸収できなくなってしまうんだそうだ。だから5番街の彼らに協力してもらって、本体から離れたスライムをナイフを突き刺していってもらう。そうすることで、本体に再び吸収されるのを阻止するのだ。
彼らがスライムを処理している間、ミンミが魔術を紡いでスライムの動きを鈍らせているようだ。イスほど大規模な魔術は組めないけど、5番街の彼らがいる場所を守るくらいは彼女にもできる。魔力を感じてか時々彼女を捕らえようとする触手が伸びるようだけど、シュエンがきっちりそれを処理して守っている。
…という状況を、私は通信具とヴァレさんの実況中継を通して把握する。
私は矢じりに附術を刻むのに忙しいのでね。団員たちの活躍をわが目で見ることができないのが口惜しい…。
ただヴァレさんは『鷹の目(ホークアイ)』なんて異名を取るくらい目がいい人なので、私が肉眼で見るより詳細に教えてくれるけどね。
「うまくいってるみたいですね」
「ああ。優秀な部下たちだね」
団員を褒められて、附術を刻む手もはかどりますわ。
ビョルンとロルフはお互いにフォローしつつ、スライム体を切り、千切り、地面に捨てていく。それをカッツェ率いる即席部隊が加工ナイフで処理していく。巨大すぎるスライムの容量は、はた目には減ったようにみえない。でも、確実に目標には近づいている。
私も附術を刻み終え、次の1本を取ろうとした時。
「見えた」
ヴァレさんがぽつりと呟き、その1本を手に取り、弓に番える。前団長の強弓の方だ。
すごい。鷹の目(ホークアイ)が捉えたんだ。
オープンになっている通信から、ミンミの声が聞こえてくる。続いて
『団長、来ました』
と冷静なシュエンの声。
ふたりとも、来てくれたんだ!
スライムの咆哮は断続的になっている。その合間を縫って、カッツェと合流するよう指示を出す。お互いに連絡を取り合い、すぐに居場所を把握したようだ。
『カッツェ、怪我はない?!』
『すまねぇミンミ、めっちゃ元気!』
『もう…!』
オープンになってる通信から、ちょっぴり甘酸っぱい、恋人同士のやり取りが聞こえてくる。うーん、こそばゆいッ!
耳はなんだか平和になっちゃったけど、目はスライムの動向に注視する。もっと暴れるかと思ったけど、多分イスが拘束系の魔術を紡いでるかな?ウネウネと身悶えるように動いているけど、激しく暴れてはいない。
それから左の触手近く、矢を打ち込んだ部分を中心に、周辺の透明度が増していった。濁って見えなくなっていたスライムの中身が、その部分だけ徐々に露わになっていく。よし、上手く行った!
状況観察はヴァレさんに任せて、2本目の矢を手に取る。
『すげぇ団長、何の附術なんすか?!』
興奮したカッツェが、急に大きな声を出す。スライムの咆哮に負けないようにかもしれないけど…通信ピアスは耳元で聞こえるし周辺のノイズも多少カットしてくれる仕様だから、充分に聞こえるんだけどな。
『うるせぇぞテメェ!』
ホラ、ロルフに怒られた。
『すんません!!』とまた大きな声で謝ってるけど…懲りない子だね。
カッツェには後で説明してあげるけど…私が矢じりに刻んだのは、汚れを吸着する附術だ。込められた魔力が続く限り矢尻周辺に濁りが集まるから、その周辺は透明度が増すってわけ。
元々は川の水とかを飲み水に変えられるよう、作った附術なんだけど…思わぬところで新たな使い道ができちゃったわ。
次の矢尻に附術を刻みつつ、少し待つとだいぶクリアになったんだけど…魔石はまだ見えないとのこと。もともと目立つようなものでもないしね。でも、レンガやら石やら木片やら…何かの骨格やら。ごちゃまぜのガラクタたちの中心部に、きっと魔核があるはずだ。
ただ、生存者らしき姿は見つからない。
『シャハラ、生存者だ』
イスの声。えっ、どこに?!
『酒樽があるのがわかるか?恐らくあの中に入っている』
酒樽ーーーあった!!
「ビョルン、ロルフ!」
『おう!』
『あいよ』
ロルフとビョルンが前に飛び出す。殺気を感じたのか、ヴァレさんが打ち抜いた触手がブルンと瞬時に元通りになる。
ふたりに迫る触手。ロルフが懐から出した小型の爆薬に着火し、触手に向かって無造作に放る。あれ、ブレスレットと指輪がファイヤースターターになってて、それで着火できるようになっているのよね。
バチバチィ!!
激しい音と共に触手が爆ぜる。
『カッツェ!フォローしろ!!』
『AyeAye,Sir!!』
ビョルンの命令に、カッツェが5番街の3人を従えて飛び出す。そして次々と手にしたナイフを、飛び散ったスライムに突き刺していく。
『でっかいの優先だぞ!』
『わかってんよ!』
カッツェが彼らに指示をし、それに答える声が聞こえる。
彼らに配ったのは、スライム加工用のナイフだ。イスが手配してくれた、魔道具屋さんから借りてきたヤツね。
スライムの体は獲物を消化する成分がたくさん含まれているから、素手で触ったりすると皮膚が爛れちゃって危険だ。でもスライム加工用ナイフには附術が施されていて、その成分を無害化することができるらしい。多分スライムの消化成分ってのは胃液みたいな強酸性で、それをなんらかの方法でアルカリ性の成分を加えて中和してるのかな?なんて考えちゃうけど…企業秘密らしいので、それ以上の考察はやめておく。
とにかくスライムが無害化されると、性質が変わるからか本体は吸収できなくなってしまうんだそうだ。だから5番街の彼らに協力してもらって、本体から離れたスライムをナイフを突き刺していってもらう。そうすることで、本体に再び吸収されるのを阻止するのだ。
彼らがスライムを処理している間、ミンミが魔術を紡いでスライムの動きを鈍らせているようだ。イスほど大規模な魔術は組めないけど、5番街の彼らがいる場所を守るくらいは彼女にもできる。魔力を感じてか時々彼女を捕らえようとする触手が伸びるようだけど、シュエンがきっちりそれを処理して守っている。
…という状況を、私は通信具とヴァレさんの実況中継を通して把握する。
私は矢じりに附術を刻むのに忙しいのでね。団員たちの活躍をわが目で見ることができないのが口惜しい…。
ただヴァレさんは『鷹の目(ホークアイ)』なんて異名を取るくらい目がいい人なので、私が肉眼で見るより詳細に教えてくれるけどね。
「うまくいってるみたいですね」
「ああ。優秀な部下たちだね」
団員を褒められて、附術を刻む手もはかどりますわ。
ビョルンとロルフはお互いにフォローしつつ、スライム体を切り、千切り、地面に捨てていく。それをカッツェ率いる即席部隊が加工ナイフで処理していく。巨大すぎるスライムの容量は、はた目には減ったようにみえない。でも、確実に目標には近づいている。
私も附術を刻み終え、次の1本を取ろうとした時。
「見えた」
ヴァレさんがぽつりと呟き、その1本を手に取り、弓に番える。前団長の強弓の方だ。
すごい。鷹の目(ホークアイ)が捉えたんだ。
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