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混血系大公編:第二部
23
「射抜けますか?」
「合図をくれれば、いつでも」
頼もしい言葉に私は頷き、タイミングを図るために自分の目で戦況を見る。
『ロルフ、行くぞ!』
『あいよ』
二人の声が聞こえた。
チャンスを待つ。
『ぬぅん!!』
ビョルンが大剣をスライムに深く突き刺す。その先には生存者の入った酒樽。彼は大剣の腹を酒樽に当て、そのまま力任せにスライムの外へ押し出していく。
「うおおおお!!」
水の中で体を動かそうとすると負荷がかかるように、ビョルンにも、今かなりの負荷がかかっているはずだ。ましてやスライムの中身はゲル状だから…水よりさらに抵抗が大きいはず。
でもビョルンには関係ない。
「…おおお!!」
ブチブチブチィ!
スライムが引きちぎれる音と共に、酒樽がスライムから外へと飛び出す。
『ロルフ!』
『よっしゃ!!』
飛び出した先に構えていたロルフが、酒樽をがっしりキャッチする。
「よし!」
まずは生存者を救助できた…!
「シュエン、ミンミは退避して生存者を確認!」
『知道了!ロルフ隊長!』
『おらよ』
シュエンはロルフに雑に投げ渡された酒樽をしっかりキャッチして、ミンミと共に先に退避する。
「シャトラ」
弦をギリギリと引き絞ったヴァレさんに、私は手を挙げて頷く。
もう遠慮はいらない。
「総員、イスのとこまで一時退避!イスはフォローして!」
『みんな、戻るぞ!』
カッツェが5番街の三人衆に声を掛け、撤収する。殿(しんがり)を務めながら、荒れ狂うスライムの触手をいなしつつ、ビョルンとロルフも戦線から下がっていく。
そのタイミングを見計らって…もう少し…よし、今だ!!
「Shoot!」
バァン!
手を下ろすのと同時に、ヴァレさんの手から矢が放たれる。
真っ直ぐに飛んだ矢は、スライムの体に潜り込みながらも勢いを失わずに目標へと向かう。
そして。
「捉えた」
私の目には見えない。
でもスライムが激しい咆哮をあげ、左側の太い触手が崩れ落ち…ヴァレさんの一矢が、左側の魔核を撃ち砕いたことを悟った。
「すごい…!」
スライムの魔核は、透明度が高ければハッキリ見えたりもするけど…石と似たような見た目をしているから、瓦礫やなんかを取り込んでいる状態だとほとんど見分けがつかない。体を大きく動かす時には魔力が放たれるから、わずかに光るみたいだけれど…この状態で目視できるのは、ヴァレさんでなければ難しいだろう。
そんなすごいことをしてのけたというのに、彼は誇るでもなく附術を施した矢を手に取った。
「これは?」
ヴァレさんは矢のシャフト部分に結び付けた小さな袋に気づき、首をかしげる。
「それ、そのままスライムに打ち込んで欲しいやつです」
「そうか、わかった」
再び撃てる準備をしながら、スライムに目を向ける。
スライムはブルブルと激しく揺れ、左腕を再生させる。体内に含有する魔核を代わりに出したんだろう。でも砕いた魔核より魔力が少ないようで、先ほどの触手より明らかに細く短い。
よし、弱体化してる!
『B**F*****、ギャハハハ!…イテェ!』
よく聞き取れなかったけど、きっとロルフがしょうもないこと言ったんだな…ビョルンにゴチンと殴られた音が通信に入る。
「バグ…?ヴァレさん、なんて言ってたか聞こえました?」
「わからなくてよろしい」
キッパリと言い放たれてしまう。
ヴァレさんてば…高貴なご身分のくせに、ロルフの言った言葉が理解できたんですか。そうですか。
「それよりこの附術はどこに撃ち込めばいい?」
あ、話を逸らした。まぁいいけど。
「どこでも効果はありますけど…まず、右腕を潰したいですね」
「Wilco」
ヴァレさんは矢をつがえ、引き絞る。矢の先を動かし、狙いを定める。
「総員、構え!待機!」
私の視線の先で、いつでも飛び出せるように、ビョルン達が身構える。5番街の三人衆も、スライム加工用ナイフを各々構えている。彼らもなかなか戦闘慣れしてるね。よし!
「矢の着弾を合図に攻撃を再開する!狙うは右腕だ!『赤色の石』は見つけ次第破壊しろ!」
『『Rojer!!』』
「ヴァレさん、行きますよ!」
「いつでも」
私は手を上げ、すぐに振り下ろす。
「Shoot!!」
合図とともに、矢が解き放たれる。
矢に結んだ袋も千切れることなく、矢と共にスライムに潜り込んでいく。
<ぷぎゅアアアアァァァァ!!>
附術が発動したせいだろう。スライムがもだえ苦しむ声が、周囲に響き渡った。
「合図をくれれば、いつでも」
頼もしい言葉に私は頷き、タイミングを図るために自分の目で戦況を見る。
『ロルフ、行くぞ!』
『あいよ』
二人の声が聞こえた。
チャンスを待つ。
『ぬぅん!!』
ビョルンが大剣をスライムに深く突き刺す。その先には生存者の入った酒樽。彼は大剣の腹を酒樽に当て、そのまま力任せにスライムの外へ押し出していく。
「うおおおお!!」
水の中で体を動かそうとすると負荷がかかるように、ビョルンにも、今かなりの負荷がかかっているはずだ。ましてやスライムの中身はゲル状だから…水よりさらに抵抗が大きいはず。
でもビョルンには関係ない。
「…おおお!!」
ブチブチブチィ!
スライムが引きちぎれる音と共に、酒樽がスライムから外へと飛び出す。
『ロルフ!』
『よっしゃ!!』
飛び出した先に構えていたロルフが、酒樽をがっしりキャッチする。
「よし!」
まずは生存者を救助できた…!
「シュエン、ミンミは退避して生存者を確認!」
『知道了!ロルフ隊長!』
『おらよ』
シュエンはロルフに雑に投げ渡された酒樽をしっかりキャッチして、ミンミと共に先に退避する。
「シャトラ」
弦をギリギリと引き絞ったヴァレさんに、私は手を挙げて頷く。
もう遠慮はいらない。
「総員、イスのとこまで一時退避!イスはフォローして!」
『みんな、戻るぞ!』
カッツェが5番街の三人衆に声を掛け、撤収する。殿(しんがり)を務めながら、荒れ狂うスライムの触手をいなしつつ、ビョルンとロルフも戦線から下がっていく。
そのタイミングを見計らって…もう少し…よし、今だ!!
「Shoot!」
バァン!
手を下ろすのと同時に、ヴァレさんの手から矢が放たれる。
真っ直ぐに飛んだ矢は、スライムの体に潜り込みながらも勢いを失わずに目標へと向かう。
そして。
「捉えた」
私の目には見えない。
でもスライムが激しい咆哮をあげ、左側の太い触手が崩れ落ち…ヴァレさんの一矢が、左側の魔核を撃ち砕いたことを悟った。
「すごい…!」
スライムの魔核は、透明度が高ければハッキリ見えたりもするけど…石と似たような見た目をしているから、瓦礫やなんかを取り込んでいる状態だとほとんど見分けがつかない。体を大きく動かす時には魔力が放たれるから、わずかに光るみたいだけれど…この状態で目視できるのは、ヴァレさんでなければ難しいだろう。
そんなすごいことをしてのけたというのに、彼は誇るでもなく附術を施した矢を手に取った。
「これは?」
ヴァレさんは矢のシャフト部分に結び付けた小さな袋に気づき、首をかしげる。
「それ、そのままスライムに打ち込んで欲しいやつです」
「そうか、わかった」
再び撃てる準備をしながら、スライムに目を向ける。
スライムはブルブルと激しく揺れ、左腕を再生させる。体内に含有する魔核を代わりに出したんだろう。でも砕いた魔核より魔力が少ないようで、先ほどの触手より明らかに細く短い。
よし、弱体化してる!
『B**F*****、ギャハハハ!…イテェ!』
よく聞き取れなかったけど、きっとロルフがしょうもないこと言ったんだな…ビョルンにゴチンと殴られた音が通信に入る。
「バグ…?ヴァレさん、なんて言ってたか聞こえました?」
「わからなくてよろしい」
キッパリと言い放たれてしまう。
ヴァレさんてば…高貴なご身分のくせに、ロルフの言った言葉が理解できたんですか。そうですか。
「それよりこの附術はどこに撃ち込めばいい?」
あ、話を逸らした。まぁいいけど。
「どこでも効果はありますけど…まず、右腕を潰したいですね」
「Wilco」
ヴァレさんは矢をつがえ、引き絞る。矢の先を動かし、狙いを定める。
「総員、構え!待機!」
私の視線の先で、いつでも飛び出せるように、ビョルン達が身構える。5番街の三人衆も、スライム加工用ナイフを各々構えている。彼らもなかなか戦闘慣れしてるね。よし!
「矢の着弾を合図に攻撃を再開する!狙うは右腕だ!『赤色の石』は見つけ次第破壊しろ!」
『『Rojer!!』』
「ヴァレさん、行きますよ!」
「いつでも」
私は手を上げ、すぐに振り下ろす。
「Shoot!!」
合図とともに、矢が解き放たれる。
矢に結んだ袋も千切れることなく、矢と共にスライムに潜り込んでいく。
<ぷぎゅアアアアァァァァ!!>
附術が発動したせいだろう。スライムがもだえ苦しむ声が、周囲に響き渡った。
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