異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

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混血系大公編:第二部

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 それからふたりで色んな角度からスライムを眺め、どこから切るのがベストか検討する。
「ビョルンの大剣で一刀両断がいちばんいいと思うんだけど」
「そうだなぁ。だがこいつは骨が折れそうだ」
「結構くっついてるね。なんとか離れてくれないかな?」
「剣でつついてみるか?」
「突き刺してグリグリって?スライムとは言えエグいわー」
「コイツの体を切り売りさせてるお前に言われたくないぞ」
「でしたでした」
 そんな雑談をしつつ作戦を練る。ロルフに頼んだ方が精密性は高いと思うんだけど、断面がきれいすぎるとスライムがすぐくっついちゃいそうだしな。ビョルンの振り下ろす勢いなら衝撃派みたいのが出るから、うまく分断してくれると思うんだ。
 でも魔核まで潰しちゃったら水の泡だしなー。なんていろいろ考えながら、スライムの周囲を歩いていると。
「英雄さん!」
 突然、後ろから声を掛けられて振り向いた。
 そこにいたのは、なんだか見覚えのある顔の男の子。さっき広場で、スライム拾い中に鼻をこすろうとして注意した子だ。
 スライム拾いの道具を貸し出した時に、危ないから本体には近づくなってことも注意喚起されたはずなんだけど、なんでここに?
 とりあえずこの場から遠ざけるために、少年に声を掛けようとしたんだけど…。
 彼はわざとらしいくらいに無邪気な笑顔を私に向けて、こう言った。

『爆ぜろ』

 ……日本語…?


「シャトラ、伏せろ!!」
「「シャーラ!」」
 私を呼ぶ声が聞こえたと思ったら、私は衝撃を受けて地面に倒れ伏した。

 バァァァン!!

 爆発音、振動、そこかしこで上がる悲鳴…。
 それらをすべて、のしかかる重みの下で聞いて、感じる。
「ぐ…ッ」
 何かが当たる鈍い音、うめき声。私に覆い被さる重みが揺れる。鼻の中いっぱいに広がる香水の香り。
「ヴァレさん!どいて、ヴァレさん!」
「…大丈夫だ」
「やだ、バカ!私なんか庇って…!」
「はは、手厳しいな」
 苦笑しながら、彼は私の上からゆっくりと退く。
 違う、バカは私だ!
 急いで起き上がり、座り込んでいるヴァレさんの傷を確認する。
 ああ、クソ。私はヴァレさんの護衛なのに、なに庇ってもらってんの!
 身につけている護身用装具は、常時発動させてる。でも範囲を広げると魔力の消費量が増えるから、普段は自分の周囲にしか展開させていない。
 密着していたから、ヴァレさんを襲った衝撃も多少は緩和されたかもしれない。でも、無傷ってことはないはずだ。
「当たったの、どこですか?」
「左肩」
 確かに、装備に汚れがついている。でも血は滲んでいない…とりあえず、出血はなさそうだ。今回ヴァレさんの装備はロルフに借りたもので、肩の動きが悪くなるからって肩当てとかのしっかりした装備はしていない。それも心配だ。
「肩は動きます?」
「ああ、大丈夫だよ」
 顔をしかめながらも、腕を回してみせる様子にホッとする。折れてはなさそうだ。よかった…。
 ヴァレさんの無事を確認して、それから周囲の状況を確認することにした。
 彼の周囲には瓦礫や木片が落ちている。中でも人の頭くらいの大きさの瓦礫があって、恐らくこれがヴァレさんの肩に直撃したんだろう。
 ああ、これはかなり痛そうだ。私を庇わなければ、そんな思いをしなくて済んだのに…。彼に申し訳なく、そして油断していた自分が悔しい。 
「シャーラ、怪我はないか」
 ビョルンが来て、心配そうに私の様子を見てくれる。
「無傷よ。ヴァレさんが庇ってくれたから…」
「ああ、よかった。ヴァレンティーノ、助かった」
「光栄だよ」
 ビョルンてば、ヴァレさんが私を護るのが当たり前のように話している…そりゃさっき私のこと頼んでたけどさ。護衛するのは私の方だし、それなのに対象に怪我を負わせちゃったってんで、内心めちゃくちゃ動揺してるんだけどね。
 でもここで止まっていてはいけない。まずは事態を収拾させることに努めなければ。焦る気持ちを無理やり押し込めて、まずは状況を把握しなければ。
「みんな、無事?」
 周囲を見ながら問いかけると、口々に返事をしてくれる。
 幸い、音のわりには爆発の規模はそこまで大きくなかったようだ。スライムのいたところを見ると、周囲にゲル状のものをまき散らして四散している。やはり、爆心地はスライムか。
 ちょうど私とビョルンが観察するために、他の人たちはスライムから離れてくれていたから爆発に巻き込まれずに済んだみたいだ。
「ビョルンも怪我はない?」
「もちろんだ」
 私と同じようにスライムの近くにいたビョルンには、護身用装具(夫仕様の強力なヤツ)を身につけてもらってるし、とっさに幅広の大剣を盾にして瓦礫からの被害も防いだようだ。すばらしい反射神経だね。
「よかった」
 無事を確かめるようにビョルンに抱きつき、周囲に聞こえないよう小声で問う。
「ロルフとシュエンは?」
「追わせた」
 抱き返してくれたビョルンが耳元でそう囁く。
 私に声を掛けてきた、あの少年は姿を消していた。でもロルフとシュエンが追跡してくれているのなら、何かしら突き止めてきてくれるだろう。
 それからイスが魔術師さんを二人連れて走ってきて、一番に私の無事を確かめてくれる。
「大丈夫、ヴァレさんが庇ってくれたから」
「そうか。よくやった」
「はは、どうも」
 なんて、サークルの塔長サマが皇帝陛下サマにのたまっている。
 だから私が護衛する側なんだってば…。
「イス」
「?なんだ」
 イスの前で両手を広げてみせるけど、何故だか小首を傾げている。
「いや、ハグしてよ」
「いいのか?」
「何でダメなのよ」
「人前では嫌だとよく言うじゃないか」
「それはキスの話!これはハグ!」
「どちらも接触じゃないか…」 
 接触の度合が違うわい!
 若干腑に落ちない感じのイスを、やや強引に抱きしめる。
 そして、先ほどと同じように小声で囁いた。
「スライムに、レディと同じものが掛けられてたかも」
「…!そうか、調べてみる」
 同じく小声で囁き返してくれた。よしよし。
「でも先に、ヴァレさんの怪我の具合を見てくれる?」
「ああ」
「あと、今回の件は『認可外の違法魔道具の暴発』ってことで治めようと思うけど…」
「それがいいだろう」
「ありがとう」
 よし、塔長様の許可ももらったぞ。
 それからギュッと力を込めて抱きしめ、イスから体を放した。
 イスはヴァレさんのところに行き、連れてきた魔術師さんふたりにスライムを調べるよう指示を出していた。とりあえずは、これ以上爆発の危険性のあるものがないか調べるように。それから何か不審な点があれば、触らずすぐ報告するように伝えている。
 さて。
 じゃあ私は、まだざわついている会場の人々を落ち着かせましょうかね。


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