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混血系大公編:第二部
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まずは参加者の人々に対応してくれていたモーガンさんを呼んで、こちらに来てもらう。
「英雄さん、ご無事で何より」
「ありがとうございます。それで参加者に状況を説明する前に、衛兵さん達にも認識を共有しておきたくて」
「助かります」
「これからサークルの人たちに調査してもらって、正式な結果は報告するつもりですが…」
今回の件は、スライムの中に取り込まれていた『違法魔道具らしきもの』が、瓦礫とぶつかるなどして暴発した、ということで片づけるつもりだ。
言っちゃ悪いけど、5番街ではサークルの審査を通ってないような、エセ魔道具の取引なんて珍しくもない。安い紛いものを購入した人からサークルにクレームが入ることもあるらしく、イスが愚痴を言っていたのも聞いたことがあるしね。実際に、違法魔道具が暴発して5番街で被害が出たこともあったみたいだし…。この説明なら、聞いた人も納得してくれるだろう。
…恐らく、爆発したのはスライムの魔核に似た『何か』だ。魔道具か、もっとシンプルな附術か。どちらにせよ、似たようなものには違いない。
「承知しました。皆にもそのように通達しておきます」
「よろしくお願いします」
モーガンさんが隊長格の人を集めて通達し、その人たちが衛兵さんたちに話をしてくれる。だいたい衛兵さんたちに話が伝わったかなーというタイミングで、私は拡声器を取り出して口元に当てた。
「ご来場の皆様、先ほどはお騒がせいたしました!衛兵隊の方々には先ほど報告いたしましたが、どうもスライムに取り込まれていた認可外の魔道具が暴発したようです!幸いスライム自体が緩衝材になってくれたようで、爆発は小規模でした!これ以上危険なものがないか、ただいまサークルの魔術師さんが確認してくれてますが…」
チラっとそちらを見ると、魔術師さん達が「もうありません!!」「大丈夫です附術師様!!」と返事をしてくれた。なんかすごいキラキラした目で興奮気味に返事されたけど…ブルータスお前もか。まぁよいけど。
「ご安心ください!もう危険なものはないそうです!スライム拾いを再開していただいて大丈夫です!ただしばらく調査がありますので、引き続きこちらには近づかないようにお願いします!」
参加者の中には不安そうな顔をしている人もいたけど、気にせず拾い続けている人が大半だった。ちょっとの危険より目先のお金の方が大事なんだろう。逞しいね。
衛兵さんたちも上手くなだめてくれてるみたいだし、問題なさそうだな。
「イス、ヴァレさんの怪我は?」
様子を見に行くと、ヴァレさんの顔色が少し悪い。えッ、思ったより重症だった?!
「ヴァレさん、大丈夫です?!」
「問題ない。診察の為に魔力を通しただけだ」
あっ。(察した)
「ああ…、単なる打撲だそうだ…。…ふぅ」
ヴァレさんも、やっぱりイスと魔力の相性は悪いらしい。吐き気を逃がすためかやたらと深く息を吐くヴァレさんに、受傷部位には触らないようそっと背中を撫でた。
「でも、痣にはなるでしょ?」
「ああ。この様子だと、内出血でさらに痣が広がるだろうな」
「そう…。本当にすみません。私がもっと警戒するべきでした」
自分の失態を落ち込みつつ謝罪すると、ヴァレさんは苦笑しながら首を振る。
「あれは誰にも予測できなかったさ。でも、そうだな…」
逆に私を慰めようとしてくれたけど、ふと何かを思いついたようにいたずらっぽく笑った。
「私に傷跡が残ったら、君が責任を取ってくれるかい?」
「いや、傷跡はのこらな…」
「…!もちろん!私個人の契約なんで、私が個人的に責任を取ります!」
契約違反で賠償金を払えってことかな?!皇族の玉体に傷をつけちゃった際の賠償金額なんて想像もつかないけど、個人資産を投げ打てばなんとか…いやさすがに無理か?無理だったらなんとか分割払いにしてもらおう!
「そうか。期待しているよ」
「はい!がんばります!」
「…傷跡は残らないぞ」
イスが何か言ってた気がするけれど。ヴァレさんとの間にあった気まずさがなくなって、今まで通り話せたことが嬉しい私の耳には、届いていなかった。
爆発したスライムについては、ある程度調べたあとで魔術師さんたちが回収することになった。サークルに持ち帰って、さらに詳しく調べてくれるそうだ。
それから新規の参加者も来なくなり、スライムの残りも少なくなってきたところで、新規受付は終了させてもらった。残った分の片付けは、衛兵さんたちと魔術師さんが引き受けてくれるそうだ。ウチからもカッツェとミンミにお願いして、残ってもらうことにした。
今はもう昼下がりだ。私たちは夕方にプレゼンがあるので、そろそろ帰らなくちゃいけない。戦った後だから、みんなどこかしら汚れている。さすがにこんな格好で、皆さんの前に立つわけにはいけないものね。
「イス、プレゼン後の食事って多めに用意してある?」
「ああ。元々11区の住民以外でも、通りすがりの者をプレゼンに呼び込む予定だったから、かなり多めに見積もっているが。どうした?」
「いや、今日ここに来てくれた衛兵さんたちと魔術師さんたちも呼べたらいいなって思って。もちろん、カッツェたちも」
イスは目で衛兵さんの数を数えているのか、会場を見回してしばらく沈黙した後。
「よっぽどいけるだろう。業者とは、足りない場合は追加注文できるような契約にしてあるしな。念の為、帰りがけに魔道具屋に寄って人数が増える旨は伝えておこう」
「やった、ありがとう!」
イベントスタッフ側に回った私たちは、お昼も取れないままになってしまっていた。今さらお昼を手配しようにもこの人数じゃ難しいし、せめて晩御飯を用意してあげられたらなぁと思ったのだ。
私はカッツェとミンミにプレゼン会場の場所を伝えて、ここの片付けが終わったら衛兵さんたちと魔術師さんたちも誘って来るように伝えた。
「じゃあ、後はよろしくね!」
「はい!」
「団長、また後で!」
私たちは衛兵さんたちや魔術師さんたちにも挨拶して、スライム取り放題イベント会場を後にしたのだった。
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