異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

文字の大きさ
237 / 305
混血系大公編:第二部

37


「持ってきたぞ。…ん、どうした?」
 ビョルンが戻ってくるなり、イスは彼に冷ややかな視線を向けた。
「ビョルン、お前はシャハラを甘やかし過ぎだ」
「あー…何の話だ?」
 ビョルンが首を傾げつつ、例の契約書を私に渡してくれる。
 なんか知らんけどイスの怒りの矛先がビョルンに移ったようなので、私は知らんぷりして契約書を持ってヴァレさんの近くへお尻をずらした。
「はい、持ってきましたよ」
「ああ…ね、シャトラ。契約書を交わす時、日数の所はよく確認したかい?」
「日数?」
 私は契約書の控えを両手に持ち、その文面に目を走らせる。ヴァレさんも身を寄せてきて、一緒に契約書を覗き込む。
 え、日数も何も、今日1日の契約よね?1日分の金額しか書いてなかったし。
「そう。1日分の契約金の記載だよね。今日1日だけの契約とは、書いてないはずだよ」
「…!」
 待って、そう言われてみれば。ヴァレさんの長い指が、契約書の文面をするりとなぞる。私は英語の文章を頭の中で変換しながら、その部分をじっくり読み返す。
「この護衛契約の期間は、開始は書いてあるけど終了は書いていない。…つまり、無期限ということだよ」
 やられた…!
 私はガックリと首を垂れる。
 思い返せば、誤認しやすい環境が作られていた。普段傭兵団で交わす契約書なら、私は文章が苦手だから必ず自分以外の人に目を通してもらう。でも今回は、ビョルンは近衛騎士、イスはヴァレさんにそれぞれ捕まっていて、すぐに聞けるような雰囲気じゃなかった。
 その上で、文末に書かれた意味不明な言葉の羅列。その意味を解読するのに気を取られて、他の部分の確認が疎かになっていた。加えて、ジョバンニさんからのプレッシャー。早く書けって圧力をかけられたあとの、安心させるように掛けられた「大丈夫」というヴァレさんの言葉。
 全部全部、私に契約を誤認させるために仕組んだものだったんだ…!
「ひどいです、ヴァレさん!」
「あっはっはっは、ごめんねぇ。どうしても君を、無期限で縛り付ける契約が欲しくて」
 縛り付けるってなに?!怖いんだけど!
「絶対悪いと思ってないでしょ!」
「ふふふ、思ってないよ」
「うわぁぁちくしょう!」
 ビョルンとかロルフ相手だと、ここで怒りに任せて叩いてやるところだけど。さすがに皇帝陛下相手にそれはできない!怒りのぶつけどころがなくて、ボスボスとソファに拳を叩きつける。
 そんな私たちの様子を見て、なんだなんだとやってきたビョルンとイスに事情を話して…。
「…だから、甘やかしすぎるなと言ったんだ…」
「あー…、すまん」
 私の大ポカにでっかいため息をつく夫たち。彼らに申し訳なさ過ぎて、私は自分で墓穴を掘って埋まりたい気分になった。



 ともあれ。こうして書面で交わしてしまった以上、契約を遂行するしかないのも事実だ。 …腹を括るか。
 約定を違わないのが私の信条だ。それにお世話になったヴァレさんにここまでさせて、応えないわけにもいかないだろう。
 それに私を騙すためなんだろうけど、期日は曖昧に記載されている。そこに交渉の余地はあるはずだ。
「…わかりました。ヴァレさんを守るために力を尽くします」
「ありがとう、嬉しいよ」
「さっきヴァレさんが言ってたプライベートスペースの防犯システムについては、責任持って引き受けます。もちろん泊まり込みで。でも、そこでいったん終了です。傭兵団もずっと不在にはできないし、家庭もありますんでね。そういうことができるように、日割り計算にしてあるんですよね?」
「まぁ、そうだね」
 ヴァレさんからしてみても、今後ずっと私が皇城にいる必要はないだろう。防犯システムの構築が済んだ後は、いてもやることないし。近衛騎士さんたちみたいに、体を張って守るのは無理だしね。今回だけでなく今後も都合よく私の附術を使いたいから、無期限契約になんてものに持ち込んだのだと思う。
「私は今の日常を崩せません。だから皇城に常駐することはできません。無期限の契約でもいいですけど、必要に応じてにさせてください」
「ああ、わかっているよ。だが防犯システム構築後も、定期的に来てくれるだろう?メンテナンスが必要だろうし」
「そうですね、実際に現場を見てみないとわからないですけど…範囲が広ければそれだけ規模も大きくなっちゃうので、メンテは必要ですね」
「今は私しかいないけれど、皇族のプライベートスペースだからね。けっこう広いよ」
 うわぁ。これは大仕事になりそうだ。安定したら皇城の専属附術師さんに日常的なメンテは任せてもいいと思うけど、確かに私も定期的に行った方がいいだろうな。
「じゃあ、定期メンテに伺います。頻度についてはシステム構築後に、また話し合いましょう。それでいいですか?」
「そうだね…。ずっと私に会いに来てくれなかった君が、これからは定期的に来てくれるのだものね。ひとまずはそれでよしとしよう」
「もう、何を言ってるんですか」
 にっこり笑ってそんなことを言うヴァレさんに、私は苦笑する。
 確かに、ボナ・ノクテム以降ヴァレさんとはご無沙汰していた。一度とんでも要求をしてくる貴族と対抗するため力を借りたことはあったけど、それも通信具越しの間接的なやり取りだった。
 でも元々所属する傭兵団も違ったし、そんなに頻繁に会う仲じゃなかったんだから…冗談めかして、大げさに言っているのかな?
 それなら私もと、ちょっと冗談めかして言ってみる。
「ヴァレさんが(私の附術を)求めてくれていたら、いつだって差し出したのに」
「!」
 ま、あながち冗談でもないかな。ヴァレさんにはさんざんお世話になったし、この国の皇帝陛下だし。今回みたいに命に関わることだと躊躇っちゃうけど、他の附術に関することならいつだっていくらでも提供するつもりだ。   
 つもりなんだけど…。
「…ヴァレさん?」
 両膝に両肘をついて、額を押さえて、俯いてしまったヴァレさん。あれ、私ヘンなこと言っちゃったかな。なんか頬が赤くなってるような?
「…シャーラ」
「…シャハラ」
「え、え?なに?」
 なんか夫たちに呆れた視線を向けられてるぞ!
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。 そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!? 貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。