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僕のお姫様
しおりを挟むスースー
僕の腕の中に居るお嬢様から、規則正しい寝息が聴こえる。
「僕の可愛いお姫様ごめんね、もう何処にも置いて行かないよ…ずっと一緒に居ようね」
お嬢様のおでこにキスをしてから、僕はお嬢様をベットの上に寝かせた。
「……ウィ…ル……」
お嬢様が寝ながら泣いている。
「お嬢様、僕ココに居るよ。もう置いて行かないよ。本当にごめんね……」
「本当だよ、このバカ息子!」
お嬢様の手を握ってそう言った僕の後ろから、控えめだけどかなり怒っている声がした。
「母さん……」
「好いてくれている女の子ほっぽいて何してるんだ……しかも、こんなに泣かせて……」
母さんは怒りながら、手に持っていた桶にタオルを入れそれをお嬢様の目元に当てた。
「で、覚悟はもう決まったのかい?」
「うん、僕はもうお嬢様から離れない。お嬢様が望んでいてくれる限りずっと側に居る。」
「そうか、じゃあ根性見せるんだよバカ息子」
そう言った後母さんは部屋から出て行った。そして僕は窓を開け庭の茂みに向かいナイフを投げた。
ウガー、パタン
という音がナイフが飛んで行った辺りから聞こえた。後始末は母さんがやってくれるだろう。
お嬢様はこの国唯一の公爵家の娘。公爵家と王家は先祖代々仲が良い。公爵家の娘が王家に嫁いだり、王家の娘が公爵家に嫁いだりという事も歴史を見てみると頻繁にしている。現にお嬢様のお兄様であるシュー様も王家のスウィズ様と婚約しており、スウィズ様の学園卒業後結婚する事が決まっている。
そのせいか、王家に嫁がせる事で自分の家に繁栄をもたらそうとしている貴族達からは恨まれており、暗殺や誘拐を企てる奴らがうじゃうじゃ居る。
そして、お嬢様は一応王家の第一王子のノマイ様の婚約候補になって居る。まぁ、一応『婚約候補』だから、他の候補者達もいるのだが1番有力なのはティアお嬢様だ。
だからか、お嬢様はただでさえ狙われやすい公爵家の中でも1番命が狙われている。
だけど、お嬢様はそんな事知らない。知らない方が良いし、知って欲しくもない。
いつだって天真爛漫で優しくて、泣き虫で甘えん坊なお嬢様を守る為ならこんな汚い世界のことなんて隠し切るし、1年間の修行だって乗り切れた。
ウー、ガサガサ、パンッ
また外から音が聞こえた。多分この銃の音は父さんだろう。もしかすると、お嬢様にヘアアクセを送った熟練スナイパーのメイドかも知れないけど……
お嬢様は何にも知らない。この屋敷には普通のメイドや執事は1人もいない事、それ以外の料理人や庭師など全てに置いて、普通の使用人は1人もいない事を。
そしてそれは、お菓子係の僕も例外じゃない事もきっと、知らない。知られたく無い……
僕のお姫様。君に初めて会った時から絶対守るって決めた可愛いお姫様。取り敢えず今は安心して眠ってね。
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