第二王女と年下国王

miki

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私たちは翌日、スメクタイト国王と顔を合わせることとなりました。
私は初めて見る景色、初めて見る物、初めて見る他国の王宮に興味津々でしたが、長旅で私もお姉様も疲れ切っていて、その日は用意された豪華な部屋ですぐに横になってしまいました。
ただお父様だけは国王と夕食を共にされたそうです。


翌日の昼時。
私たちは応接間で国王を待っていました。
本来、国王とは謁見の間でまみえるのですが、同盟国同士かつ、いわばお見合いということですので、少しカジュアルにやろうとスメクタイト国王が提案してくださったのでした。

着飾ったお姉様は大変綺麗で、同じような服を着ているはずなのに自分がみすぼらしく見えてきます。お父様はスメクタイト国王とは仲が良いらしくいつも通りで緊張している様子はありませんでいたが、お姉様は期待半分緊張半分といったところでしょうか。カチコチになっています。

ガチャリとドアが開きます。
私とお姉様はすぐさまそちらに目をやると、
なんか、背が低い…?????
なんと入ってきたのは子供でした!!
私もお姉様もえ!?と思わず呟いてしまいました。唯一お父様だけは平然としています。
ということは…

「エリナ様、ラミナ様、はじめまして。よく、スメクタイトまでお越しくださいました。国王アノンと申します。」

彼はそう言うと子供とは思えない華麗な動作で右手を胸の方にあて、お辞儀をしました。

私は戸惑いながらも、国王がいらっしゃたというのに座ったままだということに気づき、慌てて立ち上がり、挨拶をしようとしました。
しかし、私が挨拶するより先にバンっとテーブルを叩きながら隣にいたお姉様が立ち上がり、お父様の方に向かって
「たしかに顔はいいかもしれないけど、こんなガキなんて聞いていないわ!!」
と怒鳴ってしまいました。

「エリナ、なんてこと言うんだ!!」
お父様は慌ててお姉様の無礼を叱ります。しかし、アノン陛下はまるで気にする様子はなく
「あなたのような美しい方に容姿を褒めていただけるとは嬉しい限りですが、たしかに私は今年で11歳になったばかりの子供ですね。ドレライト国王はエリナ様に私の年齢について教えなかったのですか?」
と優しくお父様に問いかけます。
「ああ…年齢について言うとエリナは絶対にこないと思ってな…」
今度はお父さんがしどろもどろになっています。
「ならば、この話はなしにしましょう。エリナ様が納得なさらなければお互いのためにはなりません。」
「いいのか…?」
「構いませんよ。ただ、せっかくスメクタイトまで来たのですから、ゆっくりなさってください。」

私がこれ以上いても仕方ありませんね、それでは、と彼は応接間から出ていこうとしますが、ふと振り返り、私とお父様を交互に見ると
「ラミナ様は僕なんかどうですか?」
といたずらっぽく笑いながら言いました。

(え??????????)

私はお父様はその言葉に顔を見合わせます。なぜかお父さんはそれほど驚いた顔をしていませんでした。
私はアノン陛下に向き直ると思わず
「わたしなんかでいいのですか?」
と聞いてしまいました。
「あなたはとても魅力的ですよ。あなたの話もよくドレライト国王からよく聞いています。それになぜ自分を卑下するのですか?」
彼はその整った幼い顔を、その加減がわかっていいるかのように微笑させました。


私を、私だけを見て褒めてくれたのは彼が初めてでした。
王宮の人たちも私を褒めてくれることはあるのですが、そこには常にお姉様と比べたらそうでもないけど、という言外の意味も含まれているように聞こえるのでした。

たったの一言ですが、私は、私を一人の私として見てくれた彼と一緒になってもいいと思いました。
このまま過ごしても、どうせ政治のコマとして利用されるだけです。家のためとは理解していますが、やはり自分の意思で生涯の伴侶を決められないというのは気分として良いものではありません。それならいっそのことこの方に自分の人生を賭けてもいいのでは、と思ってしまいました。

私はアノン陛下に改めてお辞儀をします。
「アノン陛下、それでは私と結婚していただけないでしょうか?」

(言ってしまったあああああ…)

半分勢いで言ってしまったことに後悔の念がよぎります。私、もっと慎重な性格じゃなかったっけ???
でも、お父様がお姉様にって認めた方だもんね、大丈夫よね、と不安を振り払うように自分に言い聞かせます。

少し冷や汗をかきながら頭を上げると

「はい。こちらこそよろしくお願いします。ラミナ様」

彼は私に手を差し伸べて言いました。
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