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12 チチキトク
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長かった冬が終わり、春が訪れつつあります。
中庭では色とりどりの花が咲き始め、きれいに彩られています。
私は朝食を食べ終えた後、中庭でお花たちを愛でているとギールさんが血相を変えて飛び込んできました。
ただえさえ、強面だと言うのにもっと顔が怖くなっています。今にも人を殺しそうな勢いです。
私は彼を落ち着かせるように
「ギールさん、慌ててどうなさったのですか?」
と優しく尋ねます。
ギールさんは一旦呼吸を整えるとゆっくりと言いました。
「ラミナ様のお父様が危篤だとの連絡が先ほど、早馬で入りました。」
「え…?」
私はギールさんの言葉に思わず、手に持っていた一輪の綺麗な黄色い花を落としてしまいました。
あのお父様が…危篤…?
「それは本当なのですか?」
「はい。おそらくそうであろうと思われます。早馬にはドレライト家公認の証拠である札が持たされていました。」
「そうですか…」
あの、お父様が本当に…?まだ40代と若く、1年前まではあんなに元気だったのに…?
私はギールさんの報告を信じられないでいました。
どうするか少し迷いましたが、信じられないなら直接確認するのが一番早い、と気持ちを固めます。
「ギールさん、私すぐにドレイライトに行きます。」
「わかりました。馬車をすぐ用意しておきます。アノン陛下にも私から伝えておきます。」
「はい。よろしくお願いします。」
私はそうギールさんに一礼すると、今すぐ出立するために急いで準備に取り掛かるのでした。
その日の昼過ぎには出立する準備が出来ました。
ドレライトとスメクタイトは隣国でなんだかんだ言って近いです。最小限の荷物だけまとめて馬車に乗り込みました。
(あ…急ぎすぎてアノンさんに挨拶するの忘れてた…)
いつもは日中、アノンさんの邪魔をしてはいけないとお会いすることを遠慮していたので、その習慣で会わずに馬車に飛び乗ってしまいました。妻として失格です。帰ったらアノンさんに勝手に行くなと叱られてしまうでしょう。
流石に今からでも会いに行こうかしら、でもここまで準備しちゃったし、一刻でもはやくドレライトには行きたい…。
そう逡巡していると
「待って!!」
と声が聞こえてきたのでした。
その慣れ親しんだ声に驚いて、馬車から降りると、走ってきたのかゼエゼエと肩で息をするアノンさんがいました。
「アノンさん、どうして…?」
「どうしても何も、勝手に僕のもとから離れるなよ!」
「でも公務は…?」
「全部ギールに押し付けてきた。あいつなら僕ほどではないが、無難にこなしてくれるはずだ。」
「それにラミナのためだけではない。ドレライト国王には世話になった。僕自身としても彼には会いたいからね」
最後は半分照れ隠しのように言うアノンさんでしたが、私は彼を抱きしめ、
「アノンさん、愛しています。そしてごめんなさい。」
と素直に彼に謝ります。
「わかってくれればいいんだよ。さあ行こう!」
私たち二人は馬車にのり、一路ドレライト王国へと出発するのでした。
中庭では色とりどりの花が咲き始め、きれいに彩られています。
私は朝食を食べ終えた後、中庭でお花たちを愛でているとギールさんが血相を変えて飛び込んできました。
ただえさえ、強面だと言うのにもっと顔が怖くなっています。今にも人を殺しそうな勢いです。
私は彼を落ち着かせるように
「ギールさん、慌ててどうなさったのですか?」
と優しく尋ねます。
ギールさんは一旦呼吸を整えるとゆっくりと言いました。
「ラミナ様のお父様が危篤だとの連絡が先ほど、早馬で入りました。」
「え…?」
私はギールさんの言葉に思わず、手に持っていた一輪の綺麗な黄色い花を落としてしまいました。
あのお父様が…危篤…?
「それは本当なのですか?」
「はい。おそらくそうであろうと思われます。早馬にはドレライト家公認の証拠である札が持たされていました。」
「そうですか…」
あの、お父様が本当に…?まだ40代と若く、1年前まではあんなに元気だったのに…?
私はギールさんの報告を信じられないでいました。
どうするか少し迷いましたが、信じられないなら直接確認するのが一番早い、と気持ちを固めます。
「ギールさん、私すぐにドレイライトに行きます。」
「わかりました。馬車をすぐ用意しておきます。アノン陛下にも私から伝えておきます。」
「はい。よろしくお願いします。」
私はそうギールさんに一礼すると、今すぐ出立するために急いで準備に取り掛かるのでした。
その日の昼過ぎには出立する準備が出来ました。
ドレライトとスメクタイトは隣国でなんだかんだ言って近いです。最小限の荷物だけまとめて馬車に乗り込みました。
(あ…急ぎすぎてアノンさんに挨拶するの忘れてた…)
いつもは日中、アノンさんの邪魔をしてはいけないとお会いすることを遠慮していたので、その習慣で会わずに馬車に飛び乗ってしまいました。妻として失格です。帰ったらアノンさんに勝手に行くなと叱られてしまうでしょう。
流石に今からでも会いに行こうかしら、でもここまで準備しちゃったし、一刻でもはやくドレライトには行きたい…。
そう逡巡していると
「待って!!」
と声が聞こえてきたのでした。
その慣れ親しんだ声に驚いて、馬車から降りると、走ってきたのかゼエゼエと肩で息をするアノンさんがいました。
「アノンさん、どうして…?」
「どうしても何も、勝手に僕のもとから離れるなよ!」
「でも公務は…?」
「全部ギールに押し付けてきた。あいつなら僕ほどではないが、無難にこなしてくれるはずだ。」
「それにラミナのためだけではない。ドレライト国王には世話になった。僕自身としても彼には会いたいからね」
最後は半分照れ隠しのように言うアノンさんでしたが、私は彼を抱きしめ、
「アノンさん、愛しています。そしてごめんなさい。」
と素直に彼に謝ります。
「わかってくれればいいんだよ。さあ行こう!」
私たち二人は馬車にのり、一路ドレライト王国へと出発するのでした。
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