俺は死んでるんです

アキナヌカ

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011掃除

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「それはつまり私のことが抱きたいから、家が欲しいということ。ラウル?」

「もちろんそういうこと、やっぱりローラを抱きたいんだ」
「仕方がないわね、今日は二人で街に出かけましょう」

 ローラがそう言うので俺は彼女と一緒に街に出た、綺麗に並んだ大通りは良かったが、裏通りなどは危険そうだった。だがそのくらいどこの街でも一緒だ、ローラと一緒に市場に行って物が少し高いなとは思った。だから食べ物を出すお店に入って、飲み物を注文してローラと話した。

「やけに市場の物が高かったね」
「そうなのよ、他の街より高いの」

「それって誰かがお金をわざと高くしてるの」
「市場の場所代を意図的に高くしてるのよ」

「それじゃ、住みやすい街とはいえないな」
「それに治安もよくないのよ、こっそりと後ろを見て」

 俺がこっそりと後ろを見ると、店主からガラの悪そうな人たちがお金をとっていた。俺はああ、そういうことか、みかじめ料をとっている組織があるんだなと思った。それもおそらくは一つじゃない、最低でも二つはあるはずだ。

「分かった、ローラ。家の件はもう少し考えてみるよ」
「そうね、他に良い街があったらそこへ行きましょう」

 ここで俺とローラの考え方が全然違っていた、俺はこの辺りになる悪い組織を根こそぎ潰すつもりだった、ローラはもっと安全で落ち着いた街に移住するつもりだった。この二人の考え方の違いで、後で俺はローラに怒られることになった。

「……行くか」

 俺は宿屋でローラが寝てしまったら、黒いローブに目元を隠す仮面をして、夜の街へと飛び出していった。そうして裏の通りを歩いていると何人かの男から声をかけられた。

「カリアのもんかい、てめぇ。ラボールに喧嘩売りに来たのか!?」
「うーん、とりあえずラボールって人の方から教えて貰いたいな、彼の手下なんだろ」

「死にたいのか、てめぇ」
「逆だ」

「あ?」
「死ぬのはあんた達だ」

 そこで俺はラボールの手下と思われる人間を殺していった、光の結界を大きく張っておけば逃げられないし、風の精霊が不要な音は消し去ってくれた。俺はたった一人だけ残った男に聞いた。

「ラボールはどこ?」
「なっ、なにもんだ。てめぇ」

 とりあえず俺はその残った一人をしめあげて、彼が完全に死ぬまでにラボールの居場所を聞き出した。そして正面玄関から堂々と中に入っていった、中には魔法を使うものもいたが俺の光の結界には敵わなかった。俺はラボールの屋敷にいる者は使用人を覗いて悪人、そうみなして殺しながらラボールの部屋に入った。黒髪で灰色の瞳の男、それがラボールだった。

「……お前は一体誰だ?」
「ラボールってあんたか、俺は平和に過ごしたい一市民」

「俺は五種の魔法使いだぞ」
「へぇ、面白そう。それはいいな、思いっきり戦おう」

 ラボールは五種の魔法使いだった、だから炎や氷の槍を飛ばしてきたり、こっちからの攻撃を土の結界で防がれたりした。いろいろと魔法が見れて面白かったが、この後まだまだやる事があるのを思い出してラボールを捕まえて聞いた。

「それじゃ、カリアって奴のところに案内しろ」
「てめぇ、カリアの野郎の刺客じゃねぇのかよ!! 本当に何者だ!?」

 俺はラボールを半殺しにしてカリアのところまで案内させた、もちろん沢山のカリアの手下が出てきたが、全員そろって一人残さず殺していった。カリアの家にも正面玄関から堂々と入っていって、使用人以外は皆殺しにした。そして、とうとうカリアという男と会った。金髪で緑の瞳した男がカリアだった、彼は今まで下からの悲鳴が聞こえてきただろうに、落ち着いて堂々と椅子に座っていた。

「やぁ、カリア。それからラボール。今から君たちを殺すけど、他に似たような組織は無いかな?」

「そうかよ、一服させろ。組織じゃねぇが、役所のファルマって奴は俺達と変わらねぇ悪党さ」
「俺も一服させてくれ。そうだな、俺はアントレには随分世話になった、市場のピンハネをやってるのはこいつだ」

「住所も教えてくれる?」
「ああ、地図持ってるか、ファルマはこの家だ。灰色の髪に黒い瞳の男だ」
「アントレって奴はここだ、茶色い髪に赤い瞳の男だ」

「教えてくれてどうもありがとう、それじゃ。さようなら、ラボール、カリア」
「ケッ、お前と最期を迎えることになるとはな。カリア」
「こっちだって何が何だかわからねぇぜ、ラボール」

 そうして二人の悪党は静かに死んでいった、その次の俺は教えてもらった住所を訪ねてみた。灰色の髪に黒い瞳のファルマという男に、ラボールからの使いだというと目を輝かせて言った。

「今月の上納金はどのくらいだ」
「さようなら、ファルマ」

 ファルマを始末して上納金の帳簿を遺体の傍にバラまいておいた、次にカリアから教えてもらった家にいた茶色い髪に赤い瞳のアントレを捕まえてみた。

「あっ、あっ、それは見られてはならぬ!!」
「さようなら、アントレ」

 その机の隠し場所には市場からいくらピンハネしてるか詳しく書いてあった、俺はアントレを殺してそれを遺体の周りにバラまいておいた。

「ふあ~あ、もう夜明けが近い。ローラのところに帰らなきゃ」

 俺は血がついた黒いローブなどは焼き捨て、風の精霊に血の匂いを誤魔化してもらって、一度魔法で体を洗ってからローラのところに戻った。ぐっすりとローラは眠っていて、彼女を抱きしめて俺も短い睡眠をとった。そうして翌日のことだった、街はひっくり返るような大騒ぎになった。なんといっても二つのマフィアが潰れてしまっていた、それにマフィアと繋がっていた街の長が癒着の証拠を残して死んでいた。他にも市場を牛耳っていた街役人も死んでいた、そしてどの死体にもこう書かれたメモがあった。

「続きをしたければどうぞ、でもあんたも長生きできないぜ」

 街がひっくり返るような大騒ぎの中で、俺が平然とローラと朝食を食べていたら、ローラから少し怒っている様子でこう言われた。

「これをやったの、貴方でしょ? ラウル?」
「うん、これで街が少し綺麗になった」

「大丈夫!? 怪我はしなかったの!?」
「あっ、大丈夫。五種の魔法使いと戦った時は楽しかったな、それくらいで怪我なんてしてないよ」

「街の悪党の退治なんて、街の警備隊のお仕事です!!」
「今回は街の警備隊とも悪党が繋がっていたけど」

 そういう問題じゃないのと俺はローラにちょっと怒られることになった、襲ってくる悪党を始末するのは仕方がないし良いことだ。でも関係のない悪党を探し出してまで戦うことはない、それはやはり公的な機関のやるべきことだ、とローラは俺を諭したし次があったらこうしてと言った。

「まず、私に相談して頂戴!!」
「うん、分かった。ローラに相談する」

「七種の魔法使いだからって、不死身じゃないんだからね」
「うん、怪我をしないように気をつける」

「…………ふう~、それじゃ何日か経って落ち着いたら家を探しましょう」
「いいの? ローラ?」

 ローラは俺の右手にキスをして、この手が街を綺麗にしてくれたんでしょう、だったらその街に住んでも大丈夫だと言っていた。

「ローラ、大好き。愛してる」
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