大剣と薔薇 ~女性で『不死身』のルーシーと奴隷の男の子ローズの物語~

アキナヌカ

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01奴隷

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「女だってたまるもんはたまるんだよなー、どうしたもんかな」

 私はルーシー、ランク銀の冒険者だ。そして私の前世は日本人だった、それがこんな異世界ファンタジーな世界に転生するとは思っていなかった。今の私は淡い金髪に金色の瞳をしている、髪は肩までて切っていて、大剣をふるう邪魔にならないようにしていた。そして私は色欲を持て余していた、女相手の娼館などあるはずもなかった。

「私の主義には反するけど、男奴隷でも買うかなー」

 私は奴隷制度が良くない制度だと分かっている、人権を金でどうこうなどあるまじき行為だ。でも今の私には性欲発散のために、男の奴隷が必要だった。できれば誰も手を付けていない奴隷が良かった、誰かが手をつけていると病気や妊娠の心配があるからだ。私はふらりとカーポ商会に立ち寄ることにした、以前から開発を頼んでいた物を受け取りたかった。

「やっほー、スレイヤはいる?」
「あっ、ルーシーさん。例の物できてますよ!!」

「おお、ゴムの配分が上手くいったのか!?」
「そうです、私スレイヤの手でうまくいきました」

「これが異世界のコンドームか」
「はい、これで避妊ができるなんて、娼館にじゃかじゃか売れますよ!!」

 スレイヤは真っ赤な髪に同じ色の瞳を持つ二十代くらいの女性だ、私が避妊具の開発を依頼したらゴムの樹液でどうにかそれらしいものを完成させてくれた。確かに娼館などではこれは売れるだろう、娼婦がいちいち妊娠などしていられないからだ。私も手に取って見たが日本にあったコンドームと、全く同じような物ができあがっていた。

「さすがスレイヤ、私にも一箱くれ」
「はい、もちろん。ルーシーさんのおかげで出来上がったのです、何箱でもお譲りしますよ」

「おお、いいのか」
「私じゃゴムの樹液から避妊具を作るなんて思いつきませんでした」

「それじゃ、とりあえず一箱だけ貰っていくよ」
「使った感想も是非お待ちしています!!」

 私はあははっと笑って誤魔化しながらカーポ商会を出た、さてコンドームも手に入れたことだ。これなら男の奴隷を買って試してみるのもいいかもしれない、そうして私は奴隷を取り扱う奴隷商会へと向かった。そこにはいろんな奴隷がいた、エルフの美女から幼い子どもまでいろんな者がいた。その中で私の目にとまったのはとある男奴隷だった、ガリガリに痩せてはいたが彼は私には懐かしい黒い髪と茶色い瞳を持っていた。

「おいっ、奴隷商人。この男奴隷をくれ」
「そいつはガリガリで死にかけですよ、もっと美しい男奴隷がおりますが」

「いや、私はこいつがいい、ただしちょっと綺麗に洗ってくれ」
「この死にかけなら、銀貨五枚でお譲りいたします。もちろん綺麗に洗わせましょう」

「よっし、買った。さっそく魔法契約をしてくれ」
「かしこまりました、それでは奴隷の魔法契約を致します」

 こうして私は男の奴隷を買った、どこか日本人を思わせるでもよく見たら綺麗な顔をした男の子だった。綺麗に体を洗われて彼を引き渡されたが、彼はろくに歩けもしなかった。だから私は彼をお姫様だっこで運んでいった、その間彼はずっと黙ったままで口をきいてくれなかった。死にかけだというのも頷けるほど彼はガリガリに痩せていた。そして飯屋に入って彼には柔らかいパン粥を注文した、彼はその食べ物をらんらんとした目で見ていた。

「ほらっ、食べろ。貧しいメニューだが弱っている胃には柔らかい物がいい」
「…………俺なんか、すぐに死ぬぞ」

「かもしれんな、だから死なないようにそれを食え」
「…………本当に食っていいのか?」

「当たり前だ、さっさと食え」
「…………くっ!! はぐっ!!」

 幸いパン粥は冷めていたので彼は火傷をせずにすんだ、私はまず彼を健康な体にすることにした。いくら男が欲しくても今のガリガリの状態では、私を抱いたら本当に彼は死にそうだった。それにしても銀貨五枚、日本円なら大体五万円くらいで人間が買えるのだ。つくづくファンタジー世界だと思った、そうじゃなかったらこんな値段で人は変えないはずだ。

「そういえば、お前名前は何て言うんだ?」
「…………ズ」

「えっ、なんだって?」
「ローズだよ!! 女みたいだろ、くそったれな名前だ!!」

「そうか薔薇か、良い名前じゃないか美しい花の名だ」
「そうか? 女みたいで嫌な名前だ」

 とりあえずローズはパン粥を残さず食べた、食欲があるのなら生きる意志があるということだ。私はローズの名前が気に入った、私の名前だって親から貰った名は捨てて、好きな映画からつけた名だ。私にできることは大剣を振るうことくらい、さてローズには何ができるだろうか、まぁいずれは私を抱いて貰いたかった。

「ローズ、お前が元気になったら私を抱いてくれ」
「ぶっ!? はぁ、正気か!! 奴隷に抱かれたがる奴がどこにいる!!」

「ここにいるぞ、そもそもそれが目的でお前を買ったしな」
「俺が使い物にならなかったらどうするんだよ!?」

「どうもしない、私が抱けるほど健康になるまで面倒をみてやるだけだ」
「あんた、物好きだな」

 そういえば私は自己紹介もしていないことに気が付いた、そんな暇もなくローズを買ったからだった。ローズはパン粥を食べたら眠そうにしていた、体力がほとんど残っていないのだ。私はまたお姫様だっこで彼を借りた部屋まで運んだ、パン粥を食べて元気が出たのか少し抵抗されたが、無事にローズをベッドに下ろすことができた。

「それじゃ、一緒に寝ような。ローズ」
「俺は床でいい!!」

「何をいっている、そうだ私はルーシーだ。お前のご主人様の名前だから忘れるな」
「だから俺は床で良いって言ってるだろ、ベッドに引きずりこむな!!」

「柔らかいベッドより床がいいとは変わった奴だ、でも私はお前を抱き枕にして寝るからな」
「放せって、くそっ、この馬鹿力!!」

 私はローズを抱きしめて眠りについた、私の指にさわるやせ細った体が痛々しかった。もっといっぱい飯をくわせて肉付きを良くしてやろう、そう私は決心をしてローズを太らせることにした。ローズはじたばたと抵抗していたが、食後の眠気には勝てずにやがて眠ってしまった。こうして私とローズとの生活ははじまった、それは思ったよりも私には楽しいものだった。

「俺なんか買ってもいいことねぇぞ、あんたなんか抱かねぇぞ」
「ふむっ、そうだな。私は胸も小さいし女の魅力に欠けるか」

「だからさっさと俺を捨ててくれ、もう生きているのも嫌だ」
「そういえばお前が奴隷になった原因は何だ?」

「俺の話を聞いてるのかよ!! 親から売られただけだよ!!」
「へぇ、そうか。私に買われるとは運が良かったな、悪いようにはしないぞ」

 こんな調子でローズと私はしょっちゅう言い争っていたが、ローズにはどんどん体に肉がついていった。やがてパン粥ではなく普通の食事もとれるようになった、体が健康になっていくにしたがってローズの美貌がよく分かるようになった。私もいつまでもローズと遊んでばかりはいれなかった、私は銀の冒険者だからそれなりに依頼をこなさないといけなかった。
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