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04護衛任務
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「ローズ、護衛依頼を受けることになったよー」
「なんだそれ、いつ決まったんだ」
「十年前くらいかな」
「はぁ!? 十年!?」
「私がこのクレセントの街に来てから、カーポ商会に雇って貰ったんだ、今もその時の恩返しに定期的に護衛任務を引き受けてるんだよ」
「なるほど、それで十年前か」
私が家から持ち出せたものは自分で働いて稼いだ僅かな金銭だけだった、着の身着のままでクレセントの街に入って、とりあえず店員を募集していたカーポ商会に雇って貰った。三年ほど働いてお金を貯めたら冒険者になって、それからずっと定期的な荷物の護衛任務を受けていた。跡取り娘のスレイヤともその時に仲良くなって、日本の物からいろいろなアイディアを提供したものだ。
「というわけでローズの剣を買いにいくぞ」
「俺の剣?」
「剣の一つももってないと他の護衛になめられるからな」
「ふん、分かった」
「最近は稼ぎも良かったし、まぁまぁの剣が買えるぞ」
「…………安い剣でいい」
そのままローズを街の鍛冶屋に連れていって、ローズが扱いやすいショートソードと防具を買った。ローズは安い剣でいいと言っていたが、私はまぁまぁお値段がするしっかりとした剣を買った。なにせ命を預ける物だ、安物より良い剣の方が良いに決まっているのだ。ローズもぶつくさ文句を言っていたが、剣を身に着けて嬉しそうにしていた。
「それじゃ、宿屋に戻って寝るか」
「あのよ、宿なんだけどさ」
「うん、宿屋がどうした?」
「俺なんでも働くから別の部屋にして欲しい」
「ああ、そうか。ローズも男の子だもんなぁ」
「なんか、勘違いしてねぇか?」
私はてっきりローズがオナニーをしたくて部屋を分けて欲しい、そう言っていると思っていたがそうではないようだった。ローズは真っ赤な顔になってなかなか理由を言わなかったが、えへんと咳ばらいをして部屋を分けたいという理由を話し出した。それは私にとっては嬉しいことだった、ローズが私を女として見だしたということだった。
「だからうっかり俺があんたに手を出さないようにだ」
「おお、私もローズに襲われるくらいの魅力がついたか?」
「一応はルーシーは女だろ、一緒に寝てるといろいろと不都合なんだよ!!」
「まぁ、最近は稼ぎも良かった。剣も手頃な値段だったから部屋は分けてやろう」
「そ、そうか。それじゃ、俺は働くからなんでも言ってくれ」
「そうだなぁ、マッサージでもして貰おうかなぁ」
私は部屋を別にする代わりにマッサージをローズにしてもらった、ローズはマッサージのやり方なんて知らなかったから私が最初はローズにしてやった。体の筋肉をほぐして揉んでやるのだ、ローズは気持良さそうにしていた。私もローズにして貰ったが気持ち良かった、マッサージをしている間にローズが赤い顔をしているのも面白かった。翌日、私たちは護衛依頼に行くことになった。
「さてそれじゃ、行くか。ローズ」
「お、おう!!」
「他の護衛にからかわれても黙ってろ、何か言われたら私に文句を言えと答えろ」
「それじゃ、あんたが大変じゃないのか?」
「私も人付き合いは苦手なほうだからいいのさ」
「…………無理はすんなよ」
なかなか懐かなかった猫が懐いた瞬間というのはこういう時だろうか、ローズは普段は突き放すような喋り方をするくせに私の心配もしてくれた、こういうローズが私は可愛くて仕方がなかった。私が人付き合いが悪いと言っても何回も旅をしている護衛の冒険者たちだ、ローズが私の奴隷だと紹介してもそうかの一言で済んだ。ローズにもわりと好意的に話しかけてくれたが、ツンデレぎみのローズは全身の毛を逆立てた猫みたいだった。
「男は娼館に行って一人前だとか、酒を飲めて一人前だとか、いろいろとうるさい」
「まぁ、そうですかと聞いておけ。どちらも私は間違っていると思うが」
「じゃあ、ルーシーは何ができたら一人前なんだ?」
「決まっている仕事ができたら一人前だ、自分の身をまもりながら荷物も守る、簡単なようで結構難しいことだ」
「そうか、なるほど」
「お前にとっては最初の仕事だ、まずは自分の身だけ守ってくれ」
ローズは俺は荷物も守れると言っていたが、私はローズ自身だけを守るように言い含めた。新人は何でもできると思いがちだ、実際は自分にできることなんてほんの小さなことだ。そして今回は運が悪いことに盗賊に出くわした、両側が山になっている狭い道で奴らは待ち伏せしていた。弓矢を使う盗賊もいて最初は矢の雨が降ってきた、私は真っ先にローズを荷馬車の下に放り込んだ、そして大剣で矢を打ち払い近くにいる盗賊から始末していった。
「この『怪力』のルーシーに立ち向かうとは、随分と勇気がある盗賊だな」
「ひっ!? 『怪力』のルーシーか!?」
「別名は『敏捷』のルーシーだ、ほらっもうお前の首が飛んだ」
「くそっ、本物のルーシーだ!! 相手が悪い逃げろ!!」
「逃がすわけないだろ、夜襲でもかけられたら面倒だ」
「ぎゃあぁぁぁ!!」
私は仲間である冒険者たちと一人残らず盗賊を退治した、一人でも残すとまた襲ってくる可能性が高いからだ。ローズは荷馬車の下で無事だった、でも初めての戦場で体が動かなかったことを恥じているようだった。私はぽんぽんとローズの肩を叩いた、ローズはちゃんと自分の身を守った。足手まといになるようなこともなかった、今はそれで充分でこれから腕を磨いていけば良かった。
「ちゃんと自分の身を守ったな、偉いぞ」
「……怖くて動けなかっただけだ、情けない!!」
「最初は誰でもそんなもんだ、私だって最初は命を守るだけで精一杯だった」
「本当かよ」
「本当だ、そこから強くなれるかが問題なんだ」
「俺は強くなる、強くなってみせる」
私はローズにそんなに焦らないように伝えた、何故なら焦りは失敗を招くからだ。ローズは私の体験した出来事の話を真剣に聞いていた、そしてまずは自分の身を守れるように剣の鍛練を丁寧にやるようになった。幸い盗賊の襲撃は一回だけでそれからは何事もなく荷馬車は進めた、そしてやがて目的の街が見えてきた、水の街と言われるヴィーレの街だった。
「なんだそれ、いつ決まったんだ」
「十年前くらいかな」
「はぁ!? 十年!?」
「私がこのクレセントの街に来てから、カーポ商会に雇って貰ったんだ、今もその時の恩返しに定期的に護衛任務を引き受けてるんだよ」
「なるほど、それで十年前か」
私が家から持ち出せたものは自分で働いて稼いだ僅かな金銭だけだった、着の身着のままでクレセントの街に入って、とりあえず店員を募集していたカーポ商会に雇って貰った。三年ほど働いてお金を貯めたら冒険者になって、それからずっと定期的な荷物の護衛任務を受けていた。跡取り娘のスレイヤともその時に仲良くなって、日本の物からいろいろなアイディアを提供したものだ。
「というわけでローズの剣を買いにいくぞ」
「俺の剣?」
「剣の一つももってないと他の護衛になめられるからな」
「ふん、分かった」
「最近は稼ぎも良かったし、まぁまぁの剣が買えるぞ」
「…………安い剣でいい」
そのままローズを街の鍛冶屋に連れていって、ローズが扱いやすいショートソードと防具を買った。ローズは安い剣でいいと言っていたが、私はまぁまぁお値段がするしっかりとした剣を買った。なにせ命を預ける物だ、安物より良い剣の方が良いに決まっているのだ。ローズもぶつくさ文句を言っていたが、剣を身に着けて嬉しそうにしていた。
「それじゃ、宿屋に戻って寝るか」
「あのよ、宿なんだけどさ」
「うん、宿屋がどうした?」
「俺なんでも働くから別の部屋にして欲しい」
「ああ、そうか。ローズも男の子だもんなぁ」
「なんか、勘違いしてねぇか?」
私はてっきりローズがオナニーをしたくて部屋を分けて欲しい、そう言っていると思っていたがそうではないようだった。ローズは真っ赤な顔になってなかなか理由を言わなかったが、えへんと咳ばらいをして部屋を分けたいという理由を話し出した。それは私にとっては嬉しいことだった、ローズが私を女として見だしたということだった。
「だからうっかり俺があんたに手を出さないようにだ」
「おお、私もローズに襲われるくらいの魅力がついたか?」
「一応はルーシーは女だろ、一緒に寝てるといろいろと不都合なんだよ!!」
「まぁ、最近は稼ぎも良かった。剣も手頃な値段だったから部屋は分けてやろう」
「そ、そうか。それじゃ、俺は働くからなんでも言ってくれ」
「そうだなぁ、マッサージでもして貰おうかなぁ」
私は部屋を別にする代わりにマッサージをローズにしてもらった、ローズはマッサージのやり方なんて知らなかったから私が最初はローズにしてやった。体の筋肉をほぐして揉んでやるのだ、ローズは気持良さそうにしていた。私もローズにして貰ったが気持ち良かった、マッサージをしている間にローズが赤い顔をしているのも面白かった。翌日、私たちは護衛依頼に行くことになった。
「さてそれじゃ、行くか。ローズ」
「お、おう!!」
「他の護衛にからかわれても黙ってろ、何か言われたら私に文句を言えと答えろ」
「それじゃ、あんたが大変じゃないのか?」
「私も人付き合いは苦手なほうだからいいのさ」
「…………無理はすんなよ」
なかなか懐かなかった猫が懐いた瞬間というのはこういう時だろうか、ローズは普段は突き放すような喋り方をするくせに私の心配もしてくれた、こういうローズが私は可愛くて仕方がなかった。私が人付き合いが悪いと言っても何回も旅をしている護衛の冒険者たちだ、ローズが私の奴隷だと紹介してもそうかの一言で済んだ。ローズにもわりと好意的に話しかけてくれたが、ツンデレぎみのローズは全身の毛を逆立てた猫みたいだった。
「男は娼館に行って一人前だとか、酒を飲めて一人前だとか、いろいろとうるさい」
「まぁ、そうですかと聞いておけ。どちらも私は間違っていると思うが」
「じゃあ、ルーシーは何ができたら一人前なんだ?」
「決まっている仕事ができたら一人前だ、自分の身をまもりながら荷物も守る、簡単なようで結構難しいことだ」
「そうか、なるほど」
「お前にとっては最初の仕事だ、まずは自分の身だけ守ってくれ」
ローズは俺は荷物も守れると言っていたが、私はローズ自身だけを守るように言い含めた。新人は何でもできると思いがちだ、実際は自分にできることなんてほんの小さなことだ。そして今回は運が悪いことに盗賊に出くわした、両側が山になっている狭い道で奴らは待ち伏せしていた。弓矢を使う盗賊もいて最初は矢の雨が降ってきた、私は真っ先にローズを荷馬車の下に放り込んだ、そして大剣で矢を打ち払い近くにいる盗賊から始末していった。
「この『怪力』のルーシーに立ち向かうとは、随分と勇気がある盗賊だな」
「ひっ!? 『怪力』のルーシーか!?」
「別名は『敏捷』のルーシーだ、ほらっもうお前の首が飛んだ」
「くそっ、本物のルーシーだ!! 相手が悪い逃げろ!!」
「逃がすわけないだろ、夜襲でもかけられたら面倒だ」
「ぎゃあぁぁぁ!!」
私は仲間である冒険者たちと一人残らず盗賊を退治した、一人でも残すとまた襲ってくる可能性が高いからだ。ローズは荷馬車の下で無事だった、でも初めての戦場で体が動かなかったことを恥じているようだった。私はぽんぽんとローズの肩を叩いた、ローズはちゃんと自分の身を守った。足手まといになるようなこともなかった、今はそれで充分でこれから腕を磨いていけば良かった。
「ちゃんと自分の身を守ったな、偉いぞ」
「……怖くて動けなかっただけだ、情けない!!」
「最初は誰でもそんなもんだ、私だって最初は命を守るだけで精一杯だった」
「本当かよ」
「本当だ、そこから強くなれるかが問題なんだ」
「俺は強くなる、強くなってみせる」
私はローズにそんなに焦らないように伝えた、何故なら焦りは失敗を招くからだ。ローズは私の体験した出来事の話を真剣に聞いていた、そしてまずは自分の身を守れるように剣の鍛練を丁寧にやるようになった。幸い盗賊の襲撃は一回だけでそれからは何事もなく荷馬車は進めた、そしてやがて目的の街が見えてきた、水の街と言われるヴィーレの街だった。
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