大剣と薔薇 ~女性で『不死身』のルーシーと奴隷の男の子ローズの物語~

アキナヌカ

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09キス

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「ローズたんはこれからどうしたい?」
「なんだよ、急に」

「もう追っ手もいなくなったから、私たちは自由だと思ったんだ」
「そうだな、もうちょっとあちこち巡ってみるのもいいかもな」

「それなら旅をしようか、この世界を知るのも面白いかもしれない」
「護衛依頼なんかをしながら、街を移動すればいいだろ」

 私はローズが自由になったのでしたいことを聞いてみた、するとあちこち見てみたいと言うので、私たちは旅をしていくことにした。荷馬車の護衛依頼なんかを受けて、街から街へと移動するのだ。このブータンの街のお米が食べられなくなるのは寂しかったが、また食べたくなったらローズの転移魔法でつれてきてもらえばいいのだ。それでさっそく荷馬車の護衛依頼を受けたのだが、依頼人が最悪の男だったのだ。

「ルーシーっていうのか、少し日に焼けているがなかなか美人だ。俺様の天幕に来るといい」
「断る、私はローズたんと一緒に寝ることにしているんだ」

「そんな小僧より俺の方がルーシーを満足させられる、腰を抜かしてやるぜ」
「腰がぬけたら護衛依頼ができん、全くいらないお節介だ」

「そうなったら荷馬車に乗せてやるさ、だから一晩お付き合いしよう」
「嫌だと言っている、私は自分より弱い男とは寝ない」

 私がそう言って断ったら、依頼主は私に剣の勝負を挑んできた。もちろん私は冷静に最小限の力で叩きのめした、そしてこの護衛依頼を断ることにした。依頼人がこんな破廉恥な奴だと信用できなかった、何か理由をつけて賃金を払わない可能性もあった。だからこの護衛依頼を断ったのだが、そうしたらこの街の冒険者ギルドが、他の護衛依頼をまわしてくれなくなった。

「仕方ない、ローズたん。隣の街まで二人だけで旅をしようか?」
「俺は構わないぜ、あのルーシーを口説く馬鹿とは一緒にいたくない」

「二人で旅をするとなるとちょっと荷物が増えるな」
「俺が持つよ、筋力トレーニングにもなる」

「よーし、それじゃ隣町まで十日くらいだ。二人で旅をしよう」
「ああ、その方が俺も気楽だ」

 私たちは隣町まで旅を始めた、二人で旅をするために少し調理道具などを買った。そんな荷物はローズが持ってくれた、本当に筋力トレーニングをするようだ。私は干し肉などでできるだけ美味しいスープを作った、後は固いパンをスープに浸して二人で食べた。夜の間の見張り番も交代でして、特に二人旅に問題はなかった。だが運が悪く盗賊にでくわしてしまった、数は十数人と少なかったがこっちは二人しかいなかった。

「ルーシー数が不利だ『魔法』を使う、『強電撃ライトニングストライク』!!」
「うわっ、凄い雷だ。『魔法』を使った以上、ローズたん。全員を仕留めるぞ!!」

「ああ、分かってる。つってももうあと二、三人だけどな」
「ほとんどが感電死しているな、残りは任せろ。うりゃあああぁぁぁ!!」

「俺だって負けられねぇ!!」
「一人も逃がさない!!」

 私はローズに他に敵がいないか確かめて貰った、ローズは索敵の『魔法』を使ってあたりに他に敵がいないことを確かめた。こんなアクシデントが少々あったが、私たちは無事に隣町のノクスまで辿り着いた。さすがに二人旅はきつかった、見張りも交代でやったから私たちは疲れていた。それで宿屋で二人部屋をとるとすぐに眠ってしまった、ベッドは二つあったのにいつの間にか私のベッドにローズが入りこんでいた、でも私にとっては嬉しいくらいでローズを抱きしめてよく眠った。

「えへへ、ローズたんを抱きしめて眠るとよく眠れるなぁ」
「あ、あれはちょっとベッドを間違っただけだからな!!」

「また間違えてくれていいぞ、私がよく眠れるからなぁ」
「うっかりしただけだからな!! ……またあるかもしれないけど」

「私はローズたんならいつでも大歓迎だ」
「そう言って他の男を引っ張り込むなよ!!」

 奴隷でなくなってからローズはよく他の人と話すようになった、今日もこの宿屋の奴隷の男の子と話していた。ローズたんと髪や瞳の色が似ていて、私は微笑ましくそれを見ていた。そうして冒険者ギルドで良い依頼がないことを確認して、鍛練を終えて宿屋に帰ってきた時のことだった。宿屋のおかみさんと奴隷の男の子が言い争いをしていた、どうやら奴隷の魔法契約を解いてくれという話だった。

「今までどおり働きますから、奴隷から解放してください」
「そんなことを言って、奴隷の言うことは信用できないね」

「どうかお願いです、僕を奴隷から解放してください」
「煩いよ、命令する。いつもどおりにさっさと働きな!!」

「うぅ」
「全くそんなに簡単に奴隷を解放するわけないだろ」

 私もまぁ普通の人間なら奴隷をそう簡単に解放しないだろうと思った、奴隷を買うためには少なからずの金額を払っているのだからだ。ローズは気まずそうにしていた、多分自分が主人から解放されたと言ったのだ。でもここの奴隷の男の子が解放されないのはローズのせいじゃなかった、私はローズの肩を叩いて気にするなと伝えた。その日の夜のことだった、私のベッドにその奴隷の男の子が入ってきたのだ。

「貴女なら僕を解放してくれますよね」
「その前にどけ!! 私はローズたん以外と一緒に寝る趣味はない」
「この野郎!! ルーシーに何してやがる!!」

「僕は奴隷から解放されたいんです!!」
「それで私にどうしろと、私はお前の主人じゃない」
「ルーシー、こいつ一発なぐっていいか?」

「ひぃ!?」
「ローズたん、それは宿屋のおかみさんがやるだろう。彼女をつれてきてくれ」
「分かった!! すぐに呼んできてやる!!」

 こうして宿屋の奴隷の男の子は捕まった、そうして宿屋のおかみさんから鞭で叩かれていた。こちらには迷惑をかけた代わりに宿代はいらないと言われた、私もローズも不満だったがまぁ我慢することにした。そして私はローズのベッドにもぐりこんで一緒に寝た、ローズ以外が入ってきた私のベッドには戻りたくなかった。ローズも私を抱きしめて寝てくれた、そして初めてローズから私の頬にキスしてくれた。私はそれに喜んで不快だったことを忘れた、私たちは抱き合ってよく眠った。

「ローズたん、昨日はキスしてくれて嬉しかったぞ」
「あれはルーシーは俺のものだってことだ」

「うんうん、私はローズたんのものだ。ローズたんも私のものだ」
「分かってりゃいい、もう他の男をベッドにいれるなよ」

「うん、私にキスしてくれるローズたんだけ入れる」
「そ、そんなにしょっちゅうキスしてやらないからな!!」

 でもそれから時々ローズは私にキスしてくれるようになった、私も嬉しかったから時々ローズにキスをした。二人の関係が一歩進んだようで私は本当に嬉しかった、これからも隙があったらローズにキスしてやろうと思った。宿屋の男の子はかなりおかみさんから折檻されたようだった、よろめきながら宿屋の仕事をこなしていた。だが同情はしなかった、私のベッドにもぐりこんできた罰だと思った。
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