大剣と薔薇 ~女性で『不死身』のルーシーと奴隷の男の子ローズの物語~

アキナヌカ

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15貞操

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「今日も良い天気なのにまた盗賊か」
「いい加減にして欲しいよなぁ」

「まぁ、盗賊がいるから護衛依頼もあるんだが」
「でもな、俺はいい加減に飽きた」

「仕方がない、仕事だからな」
「護衛依頼だからな」

 ウィズダムの街を出て護衛依頼を受けてみたらまた盗賊が出た、しかも今度の盗賊はたちが悪いことに人質を使ってきた。人質が目の前にいるならその盗賊に大剣を投げつけてやれば終わりだった、だが目の前の盗賊は人質は他にもいて俺を殺すと人質が殺されると言った。さすがに人質が知りもしない人間だから死んでもいいとは言えなかった、だから商隊ごと私たちは盗賊に捕まった。私を見て舌なめずりしている盗賊が気持ち悪かった、ローズも狙われていて今度はそれが分かったのか吐き気をこらえていた。

「俺はいざとなったら誰か死んでもルーシーを助け出すぜ」
「私も同じだ、ローズたんのことが最優先だ」

「しばらくは様子を見るか」
「できるだけ多くの人を助けよう」

「ルーシーは優しいなぁ」
「そんなことはないぞ、ローズたん」

 私はいざとなったらローズ以外の全員を殺す、それが必要ならそうするしかなかった。私にとって一番大切な者はローズだったから、私は本気でローズ以外は殺そうかと思った。縄で縛られてはいたが『怪力』を持つ私にとっては何の障害にもならなかった、私はしばらくして盗賊の頭目のところにつれていかれた。ベッドに無理やり押し倒されて服を破られそうになった時、私は縄を引き千切り頭目の頭を握ってにっこり笑った、そして向こうが何が起きているか理解できないうちに首をねじって殺した。それからそっと盗賊のアジトを歩きまわって大剣などを取り戻した、でも大剣は使わずにナイフで一人ずつ盗賊を始末していった。

「悪いが私にとってローズたん以外はそれほど大事じゃないんだ」

 盗賊は二十数人いたがある時はナイフで静かに始末し、ある時は大剣を振り回して三人ぐらいいっぺんに殺した。そうして盗賊を半分くらい始末した時、頭目の死体が見つかったのだろう、ガランガランと非常時に鳴らす仕掛けの音が鳴り響いた。私はその時には牢に辿り着いたところだった、次々に牢の鍵を開けて人を解放していった、でもローズがいなかったから私は素早く探しにいった。そしてとうとうローズを見つけたら、盗賊の男に服を脱がされて襲われていた、私は素早くその男を斬り殺した。

「男なのに男を襲うなんて……、くそっ!! ルーシー、ありがとよ!!」
「ほらっ、ローズたんの剣だ。まだ盗賊が残っているから、私と一緒に来い!!」

「ズタズタに切り刻んでやる!!」
「その前にローズたんはちゃんと服を着た方がいいな」

「くそっ!! あいつもう少しでズボンも脱がせるところだった」
「ローズたんの貞操のピンチだったな、さぁ反撃だ!!」

 解放された人々は武器をみつければそれを使い、何もなければ逃げ出して隠れて身を守った。私とローズは背中合わせになって盗賊を次々と斬り殺していった、ほどなく二十数人いた盗賊は皆が死体となって転がっていた。だがその前に盗賊に殺された人もいた、仕方がない全員を助ける方法は無かったからだ。ローズも盗賊を二人ほど斬り殺していた、私は何人殺したか分からなかった。とにかく生き残った人たちは自分たちの荷物を取り戻し、商隊は少し数を減らしたがまた道を進み始めた。

「ローズたんの貞操が無事で良かった」
「男が男を襲うなんて意味が分からねぇ!!」

「そういう趣味の男もいるんだ、ローズたんは美人だから狙われたんだろう」
「俺もう仮面を被って過ごしたい」

「私の好きな顔を仮面なんかで隠さないでくれ、ローズたん」
「ルーシーが俺の顔を好きだっていうなら分かった、隠さない」

 私はローズに前髪を長くさせて顔を隠させているが、その顔は綺麗で実はかなり私は大好きだ。だから仮面などで隠して欲しくはなかった、だからローズが仮面をつけないと言った時はホッとした。面倒な盗賊団だったが私は人質がいると言われても今度は盗賊を殺そうと思った、ローズを貞操の危機に陥らせるくらいなら人質が死んだ方が良かった。それで非難されようとも私にとってはローズの貞操の方が大事だった、だからローズにもそう言っておいたが彼も同じことを考えていた。

「俺だってルーシーの方が人質より大事だ」
「意見が合うな、ローズたん」

「今度同じことがあったら迷わす盗賊を殺す」
「私もだ、いや私に任せておけ。『不死身』のルーシーは悪名には慣れている」

「ルーシーだけにさせるもんか、俺だって悪名が付いたって平気だ」
「私の彼氏は頼もしいな、ローズたん」

 私たちがそう話していたら周囲からは非難の視線がきたが、私はなんとも思わなくてむしろ心地よいくらいだと思っていた。私にとって最優先すべきものはローズの安全で、他の人間は誰が死のうとどうでもよかったからだ。ローズも私だけが大事なようで、盗賊の頭目に何かされなかったかと心配してくれた。周囲からはドン引きされた私たちだったが、それもどうでもいいことだった。とりあえずローズが無事ならいいのだ、人質になる人間には悪いが死んでもらうことにした。まぁあんな盗賊はそうそういないだろう、人質を利用して上手く人を操る盗賊団だった。

「ローズたん、金がかかるが街についたら風呂付の部屋を借りよう」
「ああ、いいけどどうしてだ?」

「あの盗賊に触られたところが気持ち悪いだろう」
「それは確かに気持ち悪い、川にでも飛び込みたい気分だった」

「だから風呂付の部屋を借りよう、風呂で気分をなおすといい」
「ルーシーはやっぱり優しいよなぁ」

 私はそんなに優しくない、優しくしたいのはローズ相手だけだ。だがまぁそんなことは言わなかった、言わなくても伝わっていると思っていた。そうして私たちは旅を続けてカレーラという街に着いた、護衛賃もしっかりと貰ってさっそく風呂付の宿屋をさがした。少々出費はしたが風呂付の宿屋に泊まることができた、さっそくローズは風呂に入っていた。私もローズの後に風呂に入らせて貰った、久しぶりに体を洗うことができて気持ちがよかった。ローズはその後私のベッドに潜り込んで、私の胸に頭をのっけて眠ってしまった。そんなローズが可愛かったので、私も彼を抱きしめて寝た。

「久しぶりの風呂、気持ち良かったな。ルーシー」
「ああ、ローズたん。体がさっぱりとした」

「どこでも風呂に入れると良いのになぁ」
「風呂付の宿は高いからな、毎日は無理そうだな」

「あの温泉の街は良かったよな」
「温泉が湧くところは少ないからな、またあったら入りに行こう」

 カレーラという街で私とローズはゆっくりと休んだ、風呂付の宿屋に泊まったのは最初だけだった。それからはいつもどおり二人部屋をとって、体が洗いたい時は宿屋の裏で水浴びをしていた。女が水浴びをしている時に覗く馬鹿者たちがいるが、そんな奴には使った水をぶっかけてやった。ローズも風呂の気持ち良さに目覚めたのか、頻繁に水浴びをするようになった。ローズの水浴びを覗く奴は滅多にいなかったが、ローズもそんな奴には使った水をぶっかけていた、そうして私たちがのんびりと過ごしていた時のことだった。
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