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25喪失
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「ローズたん、冒険者ギルドから指名依頼がきているぞ」
「なんて書いてあるんだ、ルーシー」
「うむ、なんでも貴族のお嬢様の病気を治したら金貨五百枚くれるそうだ」
「金貨五百枚!?」
「『魔法』のギフト持ちなら可能だと書いてある」
「おいしい話だな、行ってみるか」
久しぶりにおいしい依頼に誘われて、私とローズは貴族の屋敷を訪れた。たしかに可愛い顔をした女の子がそこでは病気で死にかけていた、だがローズが『完全なる癒しの光』という『魔法』を使うと彼女はすぐに良くなって家族に抱きついていた。もちろんその貴族から金貨五百枚も滞りなく払われ、ローズはその金をこっそり『魔法の箱』に入れていた。なんといっても金貨五百枚は大金だから、そうして保管してもらえると有難かった。次の日、私たちの泊まっている宿屋には病人の列ができていた。
「どうか、俺の腕を治してくれ」
「私の娘を助けてください」
「いや俺の息子が先だ」
「もう一度両足で歩きたい」
「お願いです、妻を助けてください」
そんな病人をかかえた家族の長い列ができていたが、騒ぐ群衆相手にローズはただ一言こう聞いた。
「それじゃ、お前らは治療代の金貨五百枚を払えるのか?」
そう言われるとほとんどの者は黙った、そして病気の家族をかかえて帰っていった。金持ちしか治療しないのかとローズに言うものもいたが、ローズはそのとおりだと答えて相手を黙らせた。中には貴族の使いの者も来ていて、ローズはその貴族のところに行きまた金貨五百枚でその病気の息子を治してやった。貧しい者からは恨まれたが仕方がないことだった、代価を貰わずにローズが治療してやったら、一体何十人の病人を癒すことになっただろう、そんなことをしたらローズが魔力枯渇を起こして倒れてしまうのだ。
「ルーシー、俺を守銭奴だって思うか?」
「私は思わない、ローズたんは必要な対価を受け取っただけだ」
「だよなぁ、あれだけの病人を全部治していたら俺が倒れちまう」
「まぁ、この街の住人の恨みをかったから、他の街へ行こう。ローズたん」
「そうだな、街中の恨みは怖いしな。他の街へ行こう、ルーシー」
「そうと決まれば護衛依頼を引き受けてくるぞ、ローズたん」
こうして私たちは他の街に行くことになった、商隊の荷馬車の護衛依頼を引き受けて、さっさとリーリオの街から出て行くことにした、街の住人はローズに石を投げる者もいたが、ローズが『聖なる守り』という結界をはっていたので誰も傷つかなかった。そうして私たちはリーリオの街を出て行った、その後に旅をしてついたのはブリズという街だった、ローズはまた私を抱くための屋敷探しをしていたが空振りに終わった。そうそう都合のいい屋敷は見つからないものだ、私たちは宿屋でのんびりと過ごした。
「このブリズという街も野菜が美味いな、ローズたん」
「エールデ国は農産物が豊富だからな」
「ローズたん、お米があるのが嬉しいぞ」
「ルーシーは本当に米が好きだよな」
「ほかほかご飯にぴり辛にした野菜のおかず、箸が止まらない」
「確かに美味いな、ルーシーの気持ちが分かる」
そうやって楽しくご飯を食べていたら、別のテーブルで喧嘩が始まった。私たちには関係ないとして無視していたら、酔っぱらった客にローズが殴られた。そうなると私も黙っていられなくて、『怪力』で酔っ払いを一人ずつ押さえていった、ローズは頭を押さえてはいたが気絶はしていなかった。私たちは騒ぎを押さえたら宿屋にかえったのだが、ローズが真っ青な顔をしていることに気づいた。
ローズは頭が痛いといって気絶した、私は慌てて街の医者に診てもらいにいった。街の医者もこぶができてますが大したことはないと言った、だから宿屋にローズを連れ帰ったのだが大変なことが起きていた。
「ルーシー!! 俺、『魔法』が使えない!?」
「ええ、ローズたんの『魔法』のギフトが消えてしまったのか!!」
「ははっ、貧乏人を治してやらなかった罰かな。ルーシー」
「いや多分だが頭を打ったことが原因だ、ローズたん」
「ルーシー、しばらく『雷撃』のローズはお休みだな」
「神のギフトは消えることはない、ちょっと休めば治るさ。ローズたん」
神から与えられたギフトは消えることはない、だがこんなふうに使えなくなることはあるらしい、私はそれをブリズという街の図書館で知った。私の『怪力』や『再生』も使えなくなることがあるのだろうか、そう思ったらゾッとして私はローズのところへ戻った。ローズは『魔法』が使えないか試していたが、まだ『魔法』は使えず治りそうになかった。私たちは焦らずお休みした、ローズと一緒にベッドに寝てごろごろしていた、しかしローズが『魔法』で病人を治したという話が伝わっていた。
「冒険者ギルドから指名依頼がまたきている、ロースたん断っておくぞ」
「そうしてくれルーシー、まだ『魔法』が使えない」
「早く治るといいな、ロースたん」
「なぁ、ルーシー。『魔法』が使えない俺は役立たずか?」
「そんなことはない、ローズたんは剣だって使える、役立たずじゃないさ」
「ルーシー、俺を抱きしめていてくれ」
『魔法』が使えなくなって弱気になっているローズを私は抱きしめた、そうして頬にキスをしてローズへの愛情を示した。すぐにローズからもキスをされた、私のことを愛しているのだと分かるキスだった。ローズはただのローズとして復帰した、『雷撃』のローズかと聞かれたら別人だと答えた。私もただのルーシーになることにした、『不死身』のルーシーが傍にいては『雷撃』のローズだとバレてしまうからだ。そうやって私たちはしばらく鍛練に没頭した、ローズは『魔法』が使えないか時々確かめていた。
「まずいぞ、ローズたん!!」
「どうしたんだ、ルーシー」
「このエールデ国のお姫様が病気で、『雷撃』のローズを探している」
「そんなことどこで聞いたんだ?」
「吟遊詩人が歌っていた、身を隠そう。ローズたん」
「分かった、だが大丈夫かな。ルーシー」
私たちは街を離れることにした、近頃使っていない山小屋があると聞きそこに身を隠した。買い物に行く時もけっして冒険者ギルドの近くは通らなかった、そうして二人で身を隠していた。だが王族の情報網は侮れなかった、すぐに『雷撃』のローズがブリズの街まで来ていたことがバレていた。この山小屋が見つかるのも時間の問題だった、私たちは二人旅をして次の街へ行こうとした。そうしたら王族の軍隊に取り囲まれていた、私たちは逃げきれずに王の軍隊に捕まった。
「なんて書いてあるんだ、ルーシー」
「うむ、なんでも貴族のお嬢様の病気を治したら金貨五百枚くれるそうだ」
「金貨五百枚!?」
「『魔法』のギフト持ちなら可能だと書いてある」
「おいしい話だな、行ってみるか」
久しぶりにおいしい依頼に誘われて、私とローズは貴族の屋敷を訪れた。たしかに可愛い顔をした女の子がそこでは病気で死にかけていた、だがローズが『完全なる癒しの光』という『魔法』を使うと彼女はすぐに良くなって家族に抱きついていた。もちろんその貴族から金貨五百枚も滞りなく払われ、ローズはその金をこっそり『魔法の箱』に入れていた。なんといっても金貨五百枚は大金だから、そうして保管してもらえると有難かった。次の日、私たちの泊まっている宿屋には病人の列ができていた。
「どうか、俺の腕を治してくれ」
「私の娘を助けてください」
「いや俺の息子が先だ」
「もう一度両足で歩きたい」
「お願いです、妻を助けてください」
そんな病人をかかえた家族の長い列ができていたが、騒ぐ群衆相手にローズはただ一言こう聞いた。
「それじゃ、お前らは治療代の金貨五百枚を払えるのか?」
そう言われるとほとんどの者は黙った、そして病気の家族をかかえて帰っていった。金持ちしか治療しないのかとローズに言うものもいたが、ローズはそのとおりだと答えて相手を黙らせた。中には貴族の使いの者も来ていて、ローズはその貴族のところに行きまた金貨五百枚でその病気の息子を治してやった。貧しい者からは恨まれたが仕方がないことだった、代価を貰わずにローズが治療してやったら、一体何十人の病人を癒すことになっただろう、そんなことをしたらローズが魔力枯渇を起こして倒れてしまうのだ。
「ルーシー、俺を守銭奴だって思うか?」
「私は思わない、ローズたんは必要な対価を受け取っただけだ」
「だよなぁ、あれだけの病人を全部治していたら俺が倒れちまう」
「まぁ、この街の住人の恨みをかったから、他の街へ行こう。ローズたん」
「そうだな、街中の恨みは怖いしな。他の街へ行こう、ルーシー」
「そうと決まれば護衛依頼を引き受けてくるぞ、ローズたん」
こうして私たちは他の街に行くことになった、商隊の荷馬車の護衛依頼を引き受けて、さっさとリーリオの街から出て行くことにした、街の住人はローズに石を投げる者もいたが、ローズが『聖なる守り』という結界をはっていたので誰も傷つかなかった。そうして私たちはリーリオの街を出て行った、その後に旅をしてついたのはブリズという街だった、ローズはまた私を抱くための屋敷探しをしていたが空振りに終わった。そうそう都合のいい屋敷は見つからないものだ、私たちは宿屋でのんびりと過ごした。
「このブリズという街も野菜が美味いな、ローズたん」
「エールデ国は農産物が豊富だからな」
「ローズたん、お米があるのが嬉しいぞ」
「ルーシーは本当に米が好きだよな」
「ほかほかご飯にぴり辛にした野菜のおかず、箸が止まらない」
「確かに美味いな、ルーシーの気持ちが分かる」
そうやって楽しくご飯を食べていたら、別のテーブルで喧嘩が始まった。私たちには関係ないとして無視していたら、酔っぱらった客にローズが殴られた。そうなると私も黙っていられなくて、『怪力』で酔っ払いを一人ずつ押さえていった、ローズは頭を押さえてはいたが気絶はしていなかった。私たちは騒ぎを押さえたら宿屋にかえったのだが、ローズが真っ青な顔をしていることに気づいた。
ローズは頭が痛いといって気絶した、私は慌てて街の医者に診てもらいにいった。街の医者もこぶができてますが大したことはないと言った、だから宿屋にローズを連れ帰ったのだが大変なことが起きていた。
「ルーシー!! 俺、『魔法』が使えない!?」
「ええ、ローズたんの『魔法』のギフトが消えてしまったのか!!」
「ははっ、貧乏人を治してやらなかった罰かな。ルーシー」
「いや多分だが頭を打ったことが原因だ、ローズたん」
「ルーシー、しばらく『雷撃』のローズはお休みだな」
「神のギフトは消えることはない、ちょっと休めば治るさ。ローズたん」
神から与えられたギフトは消えることはない、だがこんなふうに使えなくなることはあるらしい、私はそれをブリズという街の図書館で知った。私の『怪力』や『再生』も使えなくなることがあるのだろうか、そう思ったらゾッとして私はローズのところへ戻った。ローズは『魔法』が使えないか試していたが、まだ『魔法』は使えず治りそうになかった。私たちは焦らずお休みした、ローズと一緒にベッドに寝てごろごろしていた、しかしローズが『魔法』で病人を治したという話が伝わっていた。
「冒険者ギルドから指名依頼がまたきている、ロースたん断っておくぞ」
「そうしてくれルーシー、まだ『魔法』が使えない」
「早く治るといいな、ロースたん」
「なぁ、ルーシー。『魔法』が使えない俺は役立たずか?」
「そんなことはない、ローズたんは剣だって使える、役立たずじゃないさ」
「ルーシー、俺を抱きしめていてくれ」
『魔法』が使えなくなって弱気になっているローズを私は抱きしめた、そうして頬にキスをしてローズへの愛情を示した。すぐにローズからもキスをされた、私のことを愛しているのだと分かるキスだった。ローズはただのローズとして復帰した、『雷撃』のローズかと聞かれたら別人だと答えた。私もただのルーシーになることにした、『不死身』のルーシーが傍にいては『雷撃』のローズだとバレてしまうからだ。そうやって私たちはしばらく鍛練に没頭した、ローズは『魔法』が使えないか時々確かめていた。
「まずいぞ、ローズたん!!」
「どうしたんだ、ルーシー」
「このエールデ国のお姫様が病気で、『雷撃』のローズを探している」
「そんなことどこで聞いたんだ?」
「吟遊詩人が歌っていた、身を隠そう。ローズたん」
「分かった、だが大丈夫かな。ルーシー」
私たちは街を離れることにした、近頃使っていない山小屋があると聞きそこに身を隠した。買い物に行く時もけっして冒険者ギルドの近くは通らなかった、そうして二人で身を隠していた。だが王族の情報網は侮れなかった、すぐに『雷撃』のローズがブリズの街まで来ていたことがバレていた。この山小屋が見つかるのも時間の問題だった、私たちは二人旅をして次の街へ行こうとした。そうしたら王族の軍隊に取り囲まれていた、私たちは逃げきれずに王の軍隊に捕まった。
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